JST News Vol.6/No.11
Contents
科学技術振興機構の最近のニュースから……
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JSTの「地球環境」に関する取り組みについて
「環境」を抜きに未来の地球は語れない。
科学技術は環境問題の元凶ではなく、解決へと導く救世主にもなれる。
その道を切り拓くために、
日本の科学技術の総力を上げた取り組みが求められている。
Topics01
新型有機薄膜太陽電池の開発に成功
Topics02
海馬における生後の神経新生が
恐怖記憶の処理にかかわることを発見
西成活裕 東京大学 先端技術研究センター教授
理科の先生がオススメする 私のイチ押しデジタル教材
理事長茶話
―2009年12月30日に、総理官邸で第2回成長戦略策定会議が開かれ、「新成長戦略」が閣議決定されました。
「<グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略><ライフ・イノベーションによる健康大国戦略>などが、これからの成長分野として挙げられましたが、JSTはこれらを課題に据えて、研究プログラムをいっそう充実させていかなくてはと考えています。
 よく、研究者は自由に研究をしたほうが良い成果が上がる、などと言われますが、私は最近、決してその通りだとは思わなくなりました。なぜなら、いま、世界を驚愕させている日本の研究者は、山中伸弥先生も細野秀雄先生も審良静男先生も、みなさん課題解決型の研究で大きな成果を上げてきているからです。緊急シンポジウムが海外で開かれたり、各国のメディアが報道したりと、多くの日本人のさまざまな研究がこれだけ世界から注目されるという状況は、かつてなかったことです」
―元々、成果のある研究者を、課題解決型研究に選んだだけではないか? と、よく問われますが。
「そんなことはありません。みなさん、失礼ながら無名に近い研究者だった方たちが課題解決型に挑み、驚くべき成果を上げてきたといえます。JSTは、研究者の有名無名を問わず、たとえ突飛な発想であっても、これはすごい成果を生むだろうという研究の目利きをし、採択する。これが、戦略的創造研究推進事業です。
 研究者は、自分の研究に閉じこもらずに、『この研究をやり遂げなくては』という強い意志を持って、課題解決型の研究分野に自ら飛び込む必要があると思います。新成長戦略という目標に向かって、例えば低炭素社会の実現に大きなブレイクスルーをもたらす、そんな研究者が現れることをJSTは期待しています」

ノーベル賞化学者からのメッセージ vol.10白川英樹博士×実験工房

先端の「科学」と「技術」を体験し理解できる場所―日本科学未来館。

対話と実験を通じて先端科学技術への理解を深める「日本科学未来館 実験工房」。
子どもから大人まで、全員が考え・理解できる参加型のプログラムを紹介。

「グリーンケミストリーを体験しよう!」



 化学を用いたものづくりは、21世紀に入り、安く大量にという効率重視から、環境への影響も考慮したものへと変化してきた。今回の実験工房『環境 グリーンケミストリーコース』は、佐藤一彦先生のグループ(独立行政法人 産業技術総合研究所)で考案された、過酸化水素を用いた方法で酸化反応実験を行い、環境にやさしいものづくりの化学(グリーンケミストリー)を考えるプログラムだ。
 実験では、2種類の酸化反応を行った。酸化反応の仕組み、触媒のはたらきについて解説をした後、触媒の調製をし、酸化反応の実験を開始。過酸化水素と触媒と原料をナス型フラスコに入れ、加熱・かくはんしながら、反応させる。約2時間反応させた後、生成物を取り出し、目的通りメントンと安息香酸が出来ていることを参加者全員で確認することができた。
 酸化反応は、石油から化学製品を作る工程で不可欠なものだが、一般的に、環境に負荷をかけやすい。しかし、佐藤先生の開発した方法は、酸化反応で生じる廃棄物は水のみで、環境に負荷を与えるハロゲンや有機溶媒も不要である。すでに、大型ディスプレイから携帯電話まで、あらゆる電子部品に使われている絶縁保護膜用樹脂への利用も研究されている。今後、グリーンケミストリー研究のさらなる進展により、環境に十分配慮した地球にやさしい化学がますます発展することを期待したい。