高温用半導体圧力センサの製造技術(低圧用及び高圧用)


本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。

(背景)
120℃が使用限界であった半導体圧力センサ

 自動車などのエンジン圧力制御や半導体製造装置ガスライン圧力の測定などのため、 300℃程度の高温に耐える小型、軽量、高性能のセンサが望まれていた。
 現在、広い分野で使用されているのは半導体圧力センサであり、ダイヤフラム上に形成した歪ゲージの抵抗値が圧力による変形応力により変化する(ピエゾ抵抗効果) ことを利用して、圧力測定を行うものである。その構造はP型シリコン(歪ゲージ) とN型シリコンとの境界面であるPN分離層を絶縁層として使用している。このため、使用温度の上昇に伴って絶縁層の漏れ電流が急激に増加し、120 ℃以上の高温になると絶縁性が低下し抵抗値が不安定になり、特性が劣化する。
 これに対し、本新技術の研究者は、シリコン基板上にアルミナの絶縁層を形成し、その上にシリコンを積層するSOI構造にすると、アルミナは300 ℃の高温でも漏れ電流の発生を防止する絶縁層として働くとの研究成果を得、この構造による高温用圧力センサへの見通しをつけた。

(内容)
300℃の高温で安定した性能を発揮する小型・軽量の圧力センサを開発

T.低圧用の内容(樺キ野計器製作所)
 本新技術による低圧用の圧力センサは、シリコンウェハをシリカで接合し、片面に絶縁層であるアルミナ層、シリコン層を順次積層し、このシリコン層を加工して歪ゲージとするとともに、他方のウェハ面をシリカ層まで薬剤でエッチングして容易にダイヤフラムとすることにより製造する。
 その製造工程は、(1)下層SOI 形成工程:二枚のシリコン基板をシリカ層を介して直接接合したSOI基板に対し、ダイヤフラムとなる上側のシリコンを、低圧域の測定が可能となるように30μmまで薄く精密に研磨する、(2)絶縁層形成工程:トリメチルアルミニウムAl(CH3)3をアルミ源、亜酸化窒素N20を酸素源として気相成長法によりSOI 基板上に測定系の電流リークに耐える厚さのアルミナを積層する。(3)歪ゲージ作製工程:アルミナ層上にジシランSi2H6を用いてシリコンを積層して上層SOIを形成する、これにボロンを注入し、エッチングしてピエゾ抵抗型の歪ゲージを作製する、(4)ダイヤフラム作製工程:接合シリカ層をエッチングストッパーとしてシリコン基板をエッチングし、約1.7o角の極薄ダイヤフラム(厚さ30μm)とする、(5)組立工程:このセンサチップに高温用配線を施し、パッケージングする、の工程を経て低圧用圧力センサとする。(図1参照)
U.高圧用の内容(豊田工機梶j
 本新技術による高圧用の圧力センサは、シリコン基板上に絶縁層であるアルミナ層、シリコンを順次積層し、このシリコン層を加工して歪ゲージとするとともに、シリコン基板を精密にエッチングしてダイヤフラムとすることにより製造する。
 その製造工程は、低圧用センサと同様の工程であるが異なる点は、(1)超高真空CVD装置を使用して複数枚のシリコンウェハを一度に扱い、生産性を考慮するとともに、(2)工程を少なくするためシリコン基板上にアルミナ絶縁層を形成した一段型のSOI構造としたことからシリカ層によるエッチングストップが使えないため、ダイヤフラム(0.8mm角、厚さ47μm)は、エッチング時間などを精密に制御することにより形成することなどである。
 このセンサチップに高温用配線を施し、新たに開発した組み立て法で耐高圧パッケージに組み込み圧力センサとする。(図2及び写真1参照)

(効果)
低圧用は工業計測用、また、高圧用は自動車エンジンの燃焼圧等への利用

T.低圧用の効果
 低圧用の圧力センサは、上下二つの絶縁層を持つ二重SOI を用いることにより、(1)アルミナ層で漏れ電流が防止され、高温での使用に耐える。(2)精密研磨した極薄のシリコン層からなるSOIのエッチングが接合シリカ層によって停止され、平滑、均一な極薄大面積ダイヤフラムが容易に形成できる、などの特徴を有する。用途としては、化学プロセス、半導体製造装置等のプロセス圧測定の分野で、100kPa程度の低圧領域で広く利用が期待される。
U.高圧用の効果
 高圧用の圧力センサは、SOIを用いることにより(1)アルミナ層で漏れ電流が防止され、高温での使用に耐える。(2)組み立て法の工夫により、従来以上の高圧で使用でき、(3)量産性が高く安価である、などの特徴を有する。このため、自動車エンジン等の燃焼圧測定のほか、樹脂成形等の分野で、1MPa程度の高圧領域で広く利用が期待される。


This page updated on April 14, 1999

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