ラジカル制御によるプラズマエッチング装置


本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。

(背景)
さらなる微細化が望まれるエッチング技術

 現在、半導体産業においては、LSI等の高集積化、高性能化が行われている。例えば、メモリ素子(DRAM/22.4mm×9.5mm角) の場合、最小線幅0.35μm(毛髪の約1/300)で容量が64Mbit(文字数に換算して約400万文字分、新聞紙面換算で約 600頁に相当する)のものが実現されているが、更なるメモリ素子の大容量化などを目的として半導体素子の高集積化が求められている。
 半導体素子の高集積化のためには、微細加工技術、エピタキシャル成長技術、パッケージング技術などの向上が必要となるが、中でも微細加工技術の比重が高く、高アスペクト比(縦横比)や最小線幅の狭小化等の加工精度の向上が強く求められている。半導体の微細加工技術には、プラズマエッチング(電子サイクロトロン共鳴方式、高周波方式等)、スパッタエッチング、ケミカルドライエッチングなどがあるが、高効率で大面積の微細加工が可能な技術としてプラズマエッチングが期待されている。この方法は、プラズマ雰囲気中のラジカル、イオン等を用いてエッチングを行うものである。SiO2 の場合は、材料ガスにCF4 、C4F8等を用い分解されたCF、CF2 ラジカル等がエッチング深さ方向に対して側面に付着し保護膜の働きをする一方、バイアスで加速された異方性イオン照射のもとで底面のエッチングが進むと考えられている。アスペクト比等の加工精度を高めるためには、イオンに対してCF、CF2 ラジカルの密度を高い状態にすることが求められている。従来は、CF、CF2、CF3 ラジカルの密度を同時に計測する手段が無かっため高周波電力の連続通電の状態で入力電力やガス圧を調整してイオンやラジカルの量を経験的に制御し加工を行っていた。このため、エッチング因子の精密な制御が難しく微細加工精度の向上には限界があった。

(内容)
特定波長の赤外線レーザーを照射し吸収量を計測することで、ラジカルの密度を測定、制御が可能なプラズマエッチング装置

 本新技術は、プラズマ雰囲気中に特定波長の赤外線レーザを照射してレーザ光がラジカルに吸収され強度が変化することからラジカルの密度等を計測するとともに、プラズマ発生用高周波電力を一定の周期でパルス変調し、変調のオン・オフ比(デューティー比)を変化させることで反応性ガスを分解し生じるラジカルの密度、組成、イオン量を制御することで超微細加工を行うものである。
 研究者は、プラズマ雰囲気中へラジカルの吸収スペクトル線に対応する波長の赤外線レーザ光を照射するとレーザ光の一部が吸収され強度が変化することに着目し、ラジカルが無いときの標準ガスとプラズマ雰囲気中(ラジカルがある)のレーザ光の強度の比からラジカルの密度等を測定する赤外半導体レーザ吸収(IRLAS)法を確立した。IRLAS法においては、ノイズに埋もれた微弱な信号の変化を検出するために一つの状態に対して千回程度の計測を行い信号の蓄積、平均化を図り有効なデータを抽出している。また、各種ラジカルに対して波長を変化させて吸収状態を調べIRLAS法において最適なレーザの波長を定めた。その後、プラズマ発生のための高周波電力を一定の周期でパルス変調しながら、ラジカルの密度をIRLAS法を用いて測定したところパルスのデューティー比を変化させることでラジカルの密度等が制御できることを見出した。これによりラジカルの密度が高い状態でエッチングを行うことが可能となり、高アスペクト比、サブクォーターμm以下の線幅やシリコンと酸化シリコンの選択エッチングなどの実現性が高まってきた。本新技術によるプラズマエッチング装置は、パルス変調高周波電源、プラズマチャンバー、ラジカル計測部などから構成され(1)超精密加工が可能、(2)プラズマ中のラジカルの密度、組成の制御が可能 (3)アモルファスシリコンやダイヤモンド膜形成用プラズマCVDへの応用が期待されるなどの特徴を持つ。

(効果)
期待される半導体等超微細加技術

本新技術によるプラズマエッチング装置は次のような特徴を持つ。

(1) 超微細加工が可能となる。
(2) ラジカルの計測、制御が可能となり、エッチングの精密制御が可能となる。
(3) プラズマCVD装置への応用が期待される。

従って、

(1) プラズマエッチング装置
(2) プラズマCVD装置

としての利用が期待される。




This page updated on April 14, 1999

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