2色補正法によるレーザ測長計


本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。

(背景)
高精度の位置決めや採寸が必要とされる分野では、熟練者の経験に頼らない、簡便かつ高精度の測定装置が望まれている。

 精密加工分野における工作機械の位置決めや、地震予知などのための地殻変動の測定においては、測定の高精度化と測定範囲の長大化に対する要求が高まっている。このような分野では、直進性と干渉性に優れたレーザ光が、非接触で高精度の測定が可能なことから広く利用されている。レーザ光を利用した長さの測定は、レーザ光の波長を目盛りとしている。したがって、レーザ光の波長が常に一定であることが前提となる。しかしレーザ光の波長は、温度変化や風といった大気の状態の影響を受けるため、大気の状態が安定した時を見計らって測定を行うとともに、測定後に大気の状態の影響を補正する必要があった。この様な測定には、技術の熟練と経験が要求されるとともに、高精度で広範囲の測定を行うことは困難であった。そのため、熟練を要さず、簡便かつ高精度の測定が行える測定装置が望まれている。

(内容)
2色補正法によるレーザ測長の測定精度を向上するための補正技術、および波長の安定した2色のレーザ光を同一軸上に発生する機構。

 高精度の測定を実現するには、レーザ光の波長に及ぼす大気の状態の影響を補正する技術を確立するとともに、レーザ発振器から出力されるレーザ光の波長の安定性を高める必要があった。
 レーザ光の波長に与える大気の影響に関して、統計的処理を加えることによる精度の向上は、温度変化や風のような、空気のゆらぎによる大気の状態の変動が、非常に無秩序的であることから、困難であるとされてきた。このため、大気の影響がレーザ光の色(波長)により異なることから、2色のレーザ光によるそれぞれの測定値の差を用いて、大気の影響を補正する2色補正法が既に提唱されている。しかし実際には、それぞれの色における測定値の精度が低く、高精度の補正は困難であった。本新技術では、大気の状態が微小領域では均一と見なせることに着目し、微小領域で補正を行いながら測定することで、2色補正法の精度を向上する。
 さらに、よう素ガスによる光の吸収とLD励起YAGレーザおよび波長変換素子KTP(KTiOPO4)を組み合わせることにより、波長の安定性に優れた2色のレーザ光発生機構を実現する。新規な補正技術と2色レーザ光発生機構により、本新技術によるレーザ測長計は、測定精度と測定範囲の両方において、従来よりも非常に高性能なものとなる。さらに、大気の状態による影響を自動的に補正することができ、経験のない人でも容易に高精度の測定を行うことができる。

(効果)
レーザ測長計の使用環境を広げるとともに、高精度の測定を実時間で自動的に行うことを可能とする。

 本新技術によるレーザ測長計は

1. 微小領域における補正の積み重ねによるため、広範囲で高精度の測定が可能である。
2. 測定を行いながら自動的に補正を行うため、実時間で容易に高精度の測定が行える。
3. 大気の状態の変動に強いので、屋外や工場内など、使用環境が広がる。

などの特徴を持つため、

1. 精密加工における工作機械の高精度の位置決め。
2. 地震予知などのための地殻変動の超精密測定。
3. 造船分野におけるスクリューの製造のような高精度三次元計測。

などに広く利用されることが期待される。




This page updated on April 14, 1999

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