熱可塑性ポリイミドの製造技術


本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。

(背景)
望まれていた成形性に優れたポリイミドの製造技術

 ポリイミドは、主鎖中に熱的・化学的に安定なイミド環(複素環)や芳香環等の分子構造を有する高分子であり、耐熱性や機械強度、電気絶縁性、耐薬品性に優れている。その為、成形用樹脂は、複写機の軸受けや自動車のタイヤホイール等の構造材として、又、フィルムは、OA機器やカメラ用のフレキシブルプリント配線基板、電線の絶縁被覆材等として広く利用されている。
 しかし、現在市販のポリイミドの多くは、加熱して溶融するという「熱可塑性」を持たないため、通常の高分子で用いられている射出成形や押出成形が難しく、粉末焼結で成形したパーツ単位でユーザーに提供されている。そのため、成型品の形態が限定されるとともに、非常に高価なものとなっている。
 また、ほとんどの溶剤に溶けないため、コーティング材料、フィルム等の用途に使用する場合、前駆体であるポリアミド酸を高温(300℃程度)下で処理する加工法を必要とし、応用分野が限定されている。
 そこで、高い耐熱性と機械強度を持つとともに、成形加工性に優れた安価なポリイミドの開発が望まれていた。

(内容)
溶媒溶解性を持つ熱可塑性ポリイミドの製造技術

  一般にポリイミドは芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミンを縮合重合することによって製造される。ジアミンは種々の原料モノマーが工業的に製造されており選択の余地が大きいのに対し、芳香族テトラカルボン酸二無水物で工業的に製造されている種類は少なく、ポリイミドの性質はこの芳香族テトラカルボン酸二無水物に依存すると言われている。
 本新技術は、スルホン基を有する新たなテトラカルボン酸二無水物であるジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)を合成し、これと芳香族ジアミンとの縮合重合により、優れた熱可塑性と溶媒溶解性とを併せ持つ新規なポリイミドを製造するものである。
 本新技術の熱可塑性ポリイミドの製造は、ナフサから精製して得られる有機材料の原料としてよく使われるo-キシレンと硫酸を出発原料とし、スルホン化、空気酸化、無水化を経て、中間材料であるDSDAを製造する。
 そのDSDAと芳香族ジアミンを開環付加重合によりポリマー化した後、脱水・イミド化して、ポリイミドを得る。

(効果)
成形加工性に優れたポリイミドを安価に製造

  本新技術によるポリイミドは、次の特徴を有する。

(1) 熱可塑性で、高温流動性に優れるため、成形加工性に優れる。
(2) フェノール系溶剤や極性溶剤に溶解する。
(3) 構造材、フィルム、繊維、ワニスの形態で提供することができる。
(4) 耐熱性、機械強度、耐薬品性、電気絶縁性に優れる。
(5) 安価な出発原料を用いるため、価格的に優位である。

従って、本ポリイミドは以下のような用途が期待される。

(1) 成形材料: 自動車・航空機エンジン廻り部品、電子電気部品など
(2) フィルム: フレキシブルプリント基板、電線被覆材等
(3) 繊 維  : 耐熱性繊維
(4) ワニス : 電線、積層板、塗料、電子材料(保護膜、絶縁膜、レジスト等)等


This page updated on April 14, 1999

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