接触圧制御型面作業ロボット


本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。

(背景)
望まれていた、FRP脱泡作業など面作業の自動化

 繊維強化プラスチック(FRP)は軽量で強度が高い材料であり、ビルの屋上に設置されている水タンクのパネル板をはじめ、浄化槽などの環境設備機器および住設機器の水回り製品などに広く用いられている。このFRP製品の主要な製造方法の一つとして、充填剤などを含んだ液状樹脂と所定の長さに切断したガラス繊維を同時に型枠に吹き付けた後、ローラーにより表面をならして内在する気泡を抜きつつ成形する脱泡作業を経て、乾燥・硬化させる方法がある。この製造方法において、多くの工程はロボットにより自動化されているが、脱泡作業は微妙な力の調節が必要であるため、未だ人の手作業に頼っている。しかしながら、スチレンなどの有機溶剤を使用したり、ガラス繊維が飛散する作業環境下であることなどから、人が作業するには負担が大きく、ロボットによる自動化への要請が強い。

(内容)
予測的な制御技術と高速作動アクチュエータで接触圧を制御し、FRP脱泡作業などの面作業を行うことのできるロボットを実現

 FRP脱泡作業は水タンクのパネルなどの形状に対応した凹凸のある面をならす必要がある。また、時間がたつにつれFRPが硬化して粘性などの表面状態が序々に変化していく。FRP脱泡作業のような面作業においてはムラや、ローラーなど作業具のめり込みなどが生じないようにすることが重要であり、そのためには常に適切な接触圧(押しつける力)で作業を行わなければならない。従来のロボット技術では接触圧を計測して、この情報をもとに最適な接触圧に修正する制御方法が用いられていた。この場合、接触圧の計測→最適接触圧を実現するためにロボットが発生すべき力を計算→ロボットに指令→ロボットが力を発生というプロセスを経るため、接触圧の計測してからロボットに指令するまでに時間の遅れを生じ、さらに、ロボットを駆動させるためのアクチュエータが高速でないため指令を与えられてから力を発生するまでにも時間の遅れがある。このため、ロボットが実際に接触圧を発生させた時点ではこのわずかな時間遅れの間に作業具の位置や作業面の状態が変化してしまい、接触圧計測処理時の'最適接触圧を実現するための力'はすでに'最適'ではなくなっている。そのため、従来の技術ではムラや作業具のめり込みが生じてしまう。
 本新技術は予測的な制御技術と高速作動空気圧アクチュエータにより、FRP脱泡作業などの面作業を行うロボットを実現しようとするものである。FRP脱泡作業の過程において、作業面に凹凸があったり表面状態が変化すると、これらに対応してロボットハンドに加速度が発生する。この加速度には直後の接触圧の変化に関する情報が含まれているため、この加速度をもとにしたロボットの予測的な制御が可能となる。本新技術ではロボットハンドに備えたセンサにより加速度を計測し、これをもとに直後の接触圧の変化と最適接触圧を実現するための力を予測してロボットに指令を与える。また、ロボットハンドは高速作動空気圧アクチュエータにより駆動し、時間的な遅れをほとんど生じさせないで指令に対応した力を発生させる。従来、空気圧アクチュエータはトルクが比較的大きく、防爆面において安全であるが、空気の圧縮により動作が遅いという欠点があった。狼教授、香川助教授は空気の圧縮に関する研究において空気圧アクチュエータの遅れについて解析し、この知見をもとに弁操作により遅れを補償することでこれまでにない高速で動作できるアクチュエータを実現した。本新技術により、凹凸があったり、表面状態が変化する面に対しても、常に最適な接触圧を保ち、ムラや作業具のめり込みなどのない面作業を行うことのできるロボットの実現が期待される。

(効果) FRP脱泡作業などの面作業の自動化に利用が期待される

本新技術は

1 常に均一の接触圧で作業を行い、人間の手作業に優る仕上がりを実現できる
2 寸法、形状、表面状態などが異なる多様な対象物に対応が可能である
3 敏捷性を備え、高速で作業ができる
4 人には負担の大きい作業の自動化が可能となる

などの特徴をもつためFRP脱泡作業の自動化、ペンキ塗装作業(ローラー、刷毛)の自動化、生コンクリート表面のならし作業の自動化などに広く利用が期待される。



This page updated on April 23, 1999

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