神経遺伝子プロジェクトの概要

神経遺伝子プロジェクトの概要


 本共同研究は当事業団の「国際共同研究事業」として行うもので、研究実施場所は、オタワ大学など2カ所を予定している。研究期間は平成8年1月から5年間の予定で、神経細胞の死の解明について研究を進める。
 我々人間の神経細胞は、世代交代により維持される他の細胞と異なり、個体発生の初期までに増殖し分化を終えると個体が死ぬまで増殖することなく維持されている。このことが精神活動(思考、記憶、認知、感性など)という後天的な機能を支える裏付けとなっている。
 しかし、こうした神経系にも様々な病的変化が生じ、神経細胞が死にいたる場合がある。特に細胞死の原因が分からないものは「神経変性疾患」(筋緊張性ジストロフィー、ハンチントン病、脊髄性筋萎縮症など)と呼ばれている。最近、神経変性疾患の病因を遺伝子の機能異常として捉え、原因遺伝子の単離と同定が積極的に試みられているが、これらの病因候補遺伝子の機能、疾患との関わりなど、遺伝子の本態解析はほとんど手つかずの情況にある。
 本研究では神経細胞の特徴である恒常性の保証に関わっている遺伝子、蛋白質、酵素などを単離し、これらの機能を解析することにより、選択的な神経細胞死の本態の解明を目指す。この研究により、神経変性疾患に係わる遺伝的機構の解明ができれば、これら遺伝病の治療に役立つばかりでなく、老化やがん化、老年性痴呆のメカニズムなどの理解にも重要な示唆を与えることが期待される。


This page updated on May 14, 1999

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