茶ポリフェノール含有有機質肥料の製造技術


本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。

(背景)
望まれていた茶殻や畜産排出物(鶏糞など)の新しい処理技術

 近年、食生活の変化に伴い、お茶が今迄とは異なる方法で飲まれるようになった。紅茶、ウーロン茶、緑茶などの茶類飲料が缶、びん、PETボトル入り飲料として生産され、その簡便性や味の向上により消費量も急激に増加した。これらの茶飲料は一括して工場で生産されており、最近では1年間に約2万トンものお茶が原料として使用され、その約7割が抽出残さの茶殻として排出されるようになってきた。
 茶殻は、有機質の供給源であるとともに、消臭、抗菌などの作用を示す茶ポリフェノールなどの有用な成分も含有していることから、農緑地への還元が望ましいと考えられるが、堆肥化が困難であることなど、有効利用法は見出されておらず、現在焼却処分が一般的である。
 一方、畜産排出物の一つである鶏糞は、有機質肥料として肥料効果が大きい反面、直接使用すると作物の根腐れなどの問題を生じる。このため、天日乾燥や火力乾燥による乾燥肥料化、堆積発酵による堆肥化などが行われていたが、堆肥化の処理工程において生ずる悪臭やハエの発生、施肥による悪臭の発生など、新たな環境問題となっていた。さらに、最近の養鶏業はより大規模化する傾向にあり、排出される多量の鶏糞は通常の堆積発酵による堆肥化では量が多すぎて処理量を越えているため、大量処理が可能で、悪臭などの発生が少ない堆肥化処理技術が望まれていた。

(内容)
茶殻の消臭成分を利用し、悪臭の発生が少ない有機質肥料の製造技術

 本技術は、茶殻に含まれている茶ポリフェノール成分が持つ消臭作用、抗菌作用などに着目し、有機質肥料として優れた成分をもちながら悪臭などの問題で十分に利用されなかった鶏糞と茶殻を混合して、悪臭の発生を抑えながら優れた天然有機質肥料を大量にかつ安定した品質で製造しようとするものである。
 茶殻に含まれている茶ポリフェノール成分は、アンモニアなどの悪臭成分に対して消臭作用を持つ。したがって、茶殻と鶏糞を混合して発酵させることで、最も問題となっている製造時の悪臭の発生を軽減し、悪臭の少ない有機肥料を大量に製造することができる。

 本技術による有機質肥料の製造工程は次の通りである。

(1) 茶殻調整工程抽出残さである茶殻は、輸送および製造のために茶殻の含水率を調整する。
(2) 混合工程鶏糞は気候あるいは季節によりその含水率が変動するため、茶殻の添加量を調整しながら均一に混合し、発酵槽に投入する。
(3) 発酵工程発酵槽では、水分量、通気量を制御して細菌、糸状菌、放線菌などの微生物による分解発酵を促進させ、3〜4週間の短期間で鶏糞と茶殻の混合物を発酵・熟成化させ堆肥化させる。
(4) 造粒工程完熟した堆肥は、混入している羽毛、茶木、小石などの異物を除去し、用途に応じてふるい分けにより粒径を揃える。

(効果)
悪臭の発生が少なく肥料効果の大きい有機質肥料を安定に短期間で製造

 本技術には、次のような特徴がある。

(1) 産業廃棄物である茶殻と畜産排出物である鶏糞を有効に利用することができる。
(2) 茶ポリフェノール成分の消臭作用により、肥料の製造工程や施用時における悪臭の発生が少ない。
(3) 本新技術による天然有機肥料は、有機肥料でしばしば問題となる施用時のハエの発生がない。
(4) 本技術による天然有機肥料の使用により、土壌の活性化、作物の病害虫被害の予防などのこうかが期待される。

 従って、本技術による有機質肥料は、果実、野菜、花などの路地栽培はもちろん、有機肥料施用時の悪臭の発生が問題となる施設園芸や緑化事業などへの使用に適しているとともに、悪臭やハエの発生などのため有機質肥料の使用が敬遠ぎみの家庭園芸においても簡単かつ安全に使用できる、など、広範な分野での利用が期待される。


This page updated on May 6, 1999

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