新技術事業団報 第662号

平成7年10月4日
埼玉県川口市本町4-1-8
新技術事業団
電話(048)226-5608(企画調査室)

「電子蓄積リング型X線発生装置」を委託開発課題に選定ならびに開発企業を公募

 新技術事業団(理事長 松平寛通)は、立命館大学理工学部教授・新技術事業団さきがけ研究21研究者 山田廣成氏の研究成果である「電子蓄積リング型X線発生装置」を委託開発課題として選定し、開発企業を公募する。
 X線は従来より物質の分析評価や医療診断に広く利用されているが、物質の状態・構造分析の多様化、心臓血管系の造影、X線露光を用いた微細加工など、利用分野の拡大や利用法の高度化に伴い、高い輝度のX線源の重要性が増している。従来、X線源としてX線管(注1)を用いたものとシンクロトン放射(注2)を行う放射光装置があるが、前者は、陽極の発熱などのため高輝度化が難しく、また後者は一般に大きな装置であり、小型化すると波長の短いX線(硬X線)の高輝度発生が困難であった。
 本新技術は電子ビームを高エネルギーに保ちながら貯蔵する電子蓄積リング(注3)において、電子ビーム軌道上に細線あるいは薄膜状の固体ターゲット(タングステンなどで構成)を挿入し、そのターゲットに電子ビームを繰り返し貫通させることにより、高輝度X線を得るものである(別添図)。本装置は、シンクロトロン放射ではなく電子ビームがターゲットと衝突して放出する制動X線を利用するため放射光装置に比べ低エネルギーの電子ビームで軟X線(比較的波長の長いX線)のみならず硬X線までを発生できるほか、X線管と異なり電子ビームが高速でターゲットが薄いために広がりの小さいX線放射が得られる(注4)。
 本装置は、比較的小型でありながら、軟X線から硬X線までの全X線領域にわたり高輝度光が得られるなどの特徴を有することから、生物、材料の分野における物質分析、循環器系疾患などの医療診断、微細加工のためのX線源としての利用が期待される。 

 本課題の開発委託については、これを受託する企業などを募集して選定します。なお、募集に係る説明会を下記により開催します。

1. 日時 平成7年10月16日(月) 14時00分−16時00分
2. 場所 新技術事業団大会議室(埼玉県川口市本町4-1-8川口センタービル15階)
3. 出席を希望される方は事前にご連絡ください。連絡先は、
新技術事業団プロジェクト部第二課 天野  
電話(048)226-5616(直)
ファクシミリ(048)226-5653   


 
(注1) 電子管の一種で、数十から数百ボルトに加速された電子が銅、モリブデンなどからなる陽極(電子を回収する電極)に衝突してX線を発生する。
(注2) 高エネルギーの電子ビームが強力な磁場によりその軌道を曲げられて光を放射すること。
(注3) 電子シンクロトロンと呼ばれる加速器の一種で、高周波電場による加速でエネルギー損失 を補いながら、強力な磁石の配置等により設定された一定の閉じた軌道(円形、レーストラック状の軌道など)を周回させておくことで高エネルギー電子ビームを蓄積または貯蔵する。
(注4) 光速度に近い速度の電子からの放射の方向は電子の衝突前の運動方向の前方付近に分布し 、またターゲットが薄いために電子がターゲット内の原子核と多数回衝突(多重散乱)する確率が小さいので、ターゲットからの放射の方向は電子ビームの入射方向の付近にほぼ限定される。

「電子蓄積リング型X線発生装置」(背景・内容・効果)

(*) この発表についての問い合わせは、電話048(226)5616 野田、天野までご連絡下さい。


This page updated on May 6, 1999

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