舛本単一量子点プロジェクト



1.総括責任者
舛本 泰章(筑波大学物理学系 教授)

2.研究の概要
 「電子をナノメートルサイズの空間に閉じ込めることで顕著に現れる量子力学的効果(電子がもつ波としての性質が顕著に現れる効果−量子サイズ効果−)により電子のエネルギーを自由自在に操り、人工的に電子状態を設計・制御したい」という期待から出発した低次元半導体量子構造(半導体を極く薄い平面状あるいは非常に細い線状に形成した構造)の研究は、半導体物理学に大きな発展をもたらした。さらに微細な構造である量子点(微少な点状の半導体結晶)についても近年、活発な研究が行われている。
 量子点は、それが埋め込まれる外部物質(ホスト)中に散在した形で作製することができるが、平面状あるいは細線状の半導体構造と本質的に異なっている点は、それが103〜106個程度の原子からなり、量子点の表面に存在する原子数の割合が高いため、外部との相互作用が極めて大きいことにある。このため量子点は、単独ではなく、それが埋め込まれているホストと一体のものとして考える必要があり、このホストとの相互作用に起因する現象の探索やその解明には、そのサイズに影響されないよう、量子点一個を観測することが不可欠である。
 本研究主題は、この観点に立ち、サイズにばらつきを持つ多くの量子点を観測することにより得られる平均化された特性の中から、個々の量子点の持つ特性を選択して調べることにより量子サイズ効果にとどまらない新しい量子現象を探索するものである。
 具体的には、最先端のレーザー分光法を用いて高い空間分解能で少数の量子点を選び、かつ特定の量子点にレーザー光を照射することによって得られる光スペクトルを観測することによって、単一の量子点の光物性を研究する。さらに、超短パルスレーザー光を照射し、その応答をみることにより量子点の動的特性を明らかにしていく。
 この研究は、量子点をホストと一体のものとしてとらえるため、結晶,ガラスあるいはポリマー中の半導体微結晶から成る量子点、半導体基板上に成長された量子点など多くの研究対象が考えられ、幅広い分野へ影響を及ぼす。また、量子点を制御することによる新しい量子デバイスなどの工学的発展も期待される。
3.研究期間
平成 7年10月 1日から平成12年 9月30日まで


This page updated on May 14, 1999

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