加藤たん白生態プロジェクト


1.総括責任者
加藤 誠志(相模中央化学研究所 主任研究員)
2.研究の概要
 生物の設計図が書かれているゲノム(その生物に必要な遺伝子の総体)は、遺伝子の発現調節に関する情報と、遺伝子に書き込まれており、たん白質の構成要素となっているアミノ酸の配列情報を有している。これらの情報に基づいて細胞内で合成されたたん白質は、相互に複雑に関連しあって、生物体の基本単位である細胞を構成し、細胞の生命を維持する役割を担っている。細胞を各種分子からなる一つの世界と見た場合、たん白質を主役とする生態系、すなわち、たん白質ネットワークと見なすことができる。
 このような分野の研究では、細胞を構成するたん白質をできるだけ数多くとりそろえる必要がある。しかし、個々のたん白質を単離・精製するのに膨大な時間と労力を必要とするため、このような研究は困難であった。最近の遺伝子工学技術の発展に伴い、細胞内で発現しているすべての遺伝子を完全長cDNA(たん白質を完全な形で合成することができるDNA)の形で単離し、これを用いてたん白質を人為的に合成することが可能となってきた。
 本研究主題は、細胞をたん白質からなるネットワークとしてとらえ、たん白質ネットワークの基本構造を明らかにするとともに、この中における個々のたん白質の位置と機能の相関関係を解明することにより、細胞の生命維持機構の全体像を理解するための糸口を得ることである。具体的には、ヒト細胞が共通的に合成しているmRNA(DNAから合成され、たん白質を作るなかだちとなるもの)から作製した完全長cDNAを用いて、全ての細胞の機能維持に必要な主要たん白質を得る。次いで、個々のたん白質の細胞内における局所的な位置とその動き、およびたん白質間の相互作用を知るための新手法を開発し、これらの手法を駆使して、たん白質ネットワークの基本構造を解明する。さらに、このネットワークがどのように変化するかを解析するとともに、医薬などがネットワークを制御する機構について解明を試みる。
 この研究によって、細胞の全体像を多数のたん白質からなるネットワークとしてとらえることが可能となり、生命現象を理解するための新しい切り口が得られる。また、様々な所で研究が行われているゲノムプロジェクトの結果出てくるであろう数万種類と言われる未知たん白質の機能解明に有力な手段を提供することにもなる。
3.研究期間
平成7年10月 1日から平成12年 9月30日まで

This page updated on May 14, 1999

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