本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。
望まれていた軽量で耐熱性に優れた新たな材料 |
近年、航空、輸送機器、発電などの分野において、エネルギー効率の向上を図るために、軽量で耐熱性に優れた新材料の研究開発が行われている。従来の耐熱合金である鋼合金やニッケル合金は耐熱性はあるものの重量が重く、また、アルミニウム合金やチタン合金は軽量ではあるが耐熱性が高くないため、これらの特性を兼ね備えた材料の開発が望まれていた。
この期待に応え得る材料の一つとしてチタン−アルミニウム基合金が有望である。チタン−アルミニウム基合金は金属間化合物の一つで、軽量で高温での強度劣化が少ないため、軽量耐熱材料として注目されているが、延性に欠けるために加工性や耐衝撃性が低く、また、耐酸化性も充分でないことなどから未だ実用化されていない。
チタン粉末、アルミニウム−マンガン合金粉末を圧縮した後、所望の形状に成形し、固相拡散により合金化。 |
本新技術は、チタン粉末とアルミニウム−マンガン合金粉末を混合し、この粉末を圧縮成形し、塑性加工により形状付与したものを、固相拡散によるチタンとアルミニウムの合金化を行った後、熱間等方圧圧縮での組織の安定化など一連の工程により、チタン−アルミニウム基合金の耐熱軽量部材を製造するものである。
チタン粉末とアルミニウム粉末を原料としてチタン−アルミニウム合金を製造しようとすると、塑性加工の際、アルミニウムはチタンに比べて柔らかで変形しやすいため、主にアルミニウム粉末が加工の圧力を受けて変形し、チタン粉末との均一組成の成形体を得ることが難しい。そこで、本新技術では、アルミニウムに少量のマンガンを添加してアルミニウム−マンガン合金にし変形のしやすさをチタンに近づけることにより、加工の圧力が全体に均等に加わるようになり、この圧力で両粉末とも押しつぶされて微細化し、均一組成の成形体を得ることができる。さらに、固相拡散後の熱間等方圧圧縮により組織の形態を制御することなどでチタン−アルミニウム基合金の延性の向上を図ることが可能となった。この結果、耐衝撃性などが改善され、耐酸化性も改善された成形品が得られる。
(1) | 原料混合 |
チタン粉末と成分調整したアルミニウム−マンガン合金粉末を所定の割合に秤量し、混合する。 | |
(2) | 粉体処理 |
塑性加工の前処理として、原料粉末を圧縮して円柱状に固化成形し、その後加熱脱気して成形体に吸着しているガスや水分を除去する。 | |
(3) | 形状付与 |
熱間押し出しなどの塑性加工を行い、緻密な成形体とするとともに最終製品に近い形状とする。この加工において、原料粉末を覆う酸化被膜を破壊し、チタンとアルミニウムを直接接触させることで、次の固相拡散工程での反応を可能とする。 | |
(4) | 固相拡散 |
原料粉末成形体を所定の温度で固相拡散の反応をさせることにより、チタン−アルミニウム系金属間化合物を得る。なお、反応中に細孔が発生し成形体が膨張するのを防ぐため、この反応は高圧下で行う。 反応終了後、熱間等方圧圧縮することにより、均質な組成にするとともに組織の形態および結晶粒を制御する。 |
比強度、耐熱性、耐酸化性に優れ、耐熱軽量部材としての利用が期待される |
本新技術により製造したチタン−アルミニウム基合金は、他の耐熱合金と比べて高温における比強度が優れており、さらに、耐酸化性も向上している。
このため、本合金は航空、輸送機器、発電などの分野で応用され、エネルギー効率の向上に寄与することが期待される。
用語解説
1) | 塑性加工:固体に荷重を加えると変形するが、荷重がある限界値を越えると荷重を除いても形状はもとに戻らない。このような変形を塑性変形といい、これを利用して行なう加工を塑性加工という。 |
2) | 固相拡散:異なる金属を接触させて高温に保持すると、それぞれの材料の原子は混じり合い、均一な濃度となる方向へ原子が移動する。このような原子の移動を拡散といい、特に固相間での拡散を固相拡散という。本新技術では、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)を押出により緻密化しこれを高温に保持することによりTi、Alが反応してTiAl、Ti3Al に変化する。 |
3) | 熱間等方圧圧縮:HIP(Hot Isostatic pressing) ともいう。高圧容器内の試料を全ての方向から同じ圧力で圧縮すると同時に、高温加熱を行うものである。 |
This page updated on May 7, 1999
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