本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。
望まれていた夜尿症の治療装置 |
夜尿症は、夜間睡眠中に不随的に排尿を行うもので、小児のみならず成人にも認められる疾患である。とりわけ、小児においては十数%にみられ、最も頻度の高い疾患の一つであり、多数の小児とその家族が夜尿症で悩んでいる。夜尿症は、睡眠の異常と排尿の異常が原因となっていると考えられており、従来、その治療は、抗うつ剤の投与や夜尿後に尿を検知し警告音で知らせる装置などにより行われているが、必ずしも満足すべき治療効果が得られていなかった。
脳波計による睡眠深度と超音波による膀胱充満度の測定を同時に行い、排尿前に患者本人に知らせて学習を促し、夜尿症を治療 |
本研究者は、これまで独立に研究されることが多かった睡眠機構と排尿機構に関する研究を体系的に関連付けて行い、夜尿症患者が3つのタイプに分類されることを初めて明らかにした。本新技術は、この病型分類の知見に基づき、夜尿症の効果的な治療を目指すものである。夜尿症患者は、膀胱機能は正常であるが正常人に比べて軽い覚醒機能障害を有するT型(60%)、重い覚醒機能障害を有するUa型(10%)、膀胱機能が不全で膀胱内圧が不安定なUb型(30%)に分類される。このうち、T型の患者が本装置の治療対象となる。T型夜尿症患者は、膀胱に尿が充満して初発膀胱収縮が正常に発生し、脳波も深睡眠型から浅睡眠型に移行するが、軽い覚醒機能障害を有するために、その時点で目覚めず夜尿をしてしまう。この病型は、睡眠が浅くなった時点で目覚め排尿するという学習ができていないのが原因と考えられる。本方法では、睡眠の深い時に特徴的に現れるδ波が睡眠が浅くなることで急激に減少する現象を脳波計でとらえ、深睡眠から浅睡眠への移行を検知するとともに、超音波計測装置により膀胱のサイズを計測して膀胱充満度を求め、これらの情報から夜尿前に警告音などで患者本人に知らせることで学習を促すものである。本方法によれば、夜尿後に知らせる従来の方法とは異なり、夜尿前に覚醒させる条件付け療法が可能となる。また、本方法は、高齢者の尿失禁などに対しても応用が可能と考えられる。
本治療装置は、以下の各部より構成される。
(1)脳波測定部 | : | 脳波を測定するための電極および脳波計であり、脳波分布のうちδ波の割合を測定する。 |
(2)膀胱充満度測定部 | : | 超音波を用いて膀胱のサイズを計測し充満度を求める。必要に応じて画像表示を行い、臨床での利便性の向上をはかる。 |
(3)解析・入出力部 | : | 脳波情報、膀胱充満度情報を解析し、所定の値を越えた時点で警報ブザーを鳴らし患者を覚醒させる。この値は、個々の患者に合わせて医師が設定できる設計とする。 |
患者に対する負担が少なく、効果的な夜尿症の治療が可能 |
本新技術には、次のような特徴がある。
(1) | 夜尿前に患者に警告し学習する条件付け療法により、夜尿症の治療が可能。 |
(2) | 非侵襲的治療法のため、対象となる患者の負担が少ない。 |
(3) | 病院での治療のほか、医師の指導により在宅での治療も可能。 |
従って、以下の用途に利用が期待される。
(1) | 夜尿症の治療。 |
(2) | 夜尿症、尿失禁の研究。 |
This page updated on May 14, 1999
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