新技術事業団報 第647号

平成7年2月9日
埼玉県川口市本町4-1-8
新技術事業団
電話(048)226-5608(企画調査室)

「卵黄由来シアル酸及びシアリルオリゴ糖の製造技術」
を委託開発課題に選定ならびに開発企業を選定

 新技術事業団(理事長 松平寛通)は、福山大学工学部生物工学科教授 山本武彦氏らの研究成果である「卵黄由来シアル酸及びシアリルオリゴ糖の製造技術」を委託開発課題として選定するとともに開発企業を選定した。
 シアル酸は、動物の細胞に含まれている物質で、細胞間の情報の伝達や認識に関与していると考えられており、実用的には医薬品などの原料として用いられている。一方、シアリルオリゴ糖は、シアル酸と同様、細胞に含まれている物質で、ウィルスや毒素の中和作用があるため離乳食などに用いる機能性の食品素材としての用途が期待されている。
 シアル酸を得るには、従来、ミルクに含まれるものを分離する方法や大腸菌の細胞膜に存在するものをとり出す方法が知られているが、含有量が低いなどの問題があり大量製造には必ずしも適していなかった。また、シアリルオリゴ糖は、細胞に含まれるが、分子構造は一定ではない。このため、化学合成により純粋なものを得る試みがなされているが、合成反応が複雑なため現在のところ実用規模での製造法は確立されていない。このようなことから、これらの物質を工業的に製造する方法の開発が望まれていた。
 本新技術は、脱脂した鶏卵卵黄を原料とし、これを加水分解した後、膜分離、電気透析、クロマト分離などを行ってシアル酸を製造するとともに、同様の脱脂した鶏卵卵黄を酵素分解した後、膜分離、電気透析などを行いシアリルオリゴ糖を製造するものである。本新技術は、製造工程が簡便で、安定して安価に入手が可能な鶏卵卵黄を原料とするため大量の製品を低コストで製造可能であり、シアル酸とシアリルオリゴ糖の製造工程が類似であるため両方を製造する場合には設備を共用できるなどの特徴を有する。得られるシアル酸及びシアリルオリゴ糖は、各々、医薬品中間体及び食品素材などへの利用が期待される。また、糖鎖の研究などにおける応用が期待される。
 本新技術の開発は、太陽化学株式会社(社長 山崎長孝、本社 三重県四日市市赤堀新町9番5号、資本金77億3,062万円、電話 0593-52-2555)に委託する予定で、開発期間は3年、委託開発費は約8億円の予定である。今後、科学技術庁長官の認可を受けた後、新技術の開発を実施する。

「卵黄由来シアル酸及びシアリルオリゴ糖の製造技術」(背景・内容・効果)

(*) この発表についての問い合わせは、電話048(226)5616 本田、島田までご連絡下さい。


This page updated on May 14, 1999

Copyright© 1999 JapanScienceandTechnologyCorporation.

www-pr@jst.go.jp