本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。
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フロンの分解技術の開発が望まれていた |
フロンは、地球のオゾン層を破壊するとして、1995年末をもって国際的にその生産と新たな消費が禁止されることとなっている。既に製造されたものについては、早急にその分解処理が求められているが、フロンは、ほとんど全ての化学反応に対し安定で反応性が低いため効果的な方法は未だ得られていない。
従来、フロンの分解無公害化技術として、プラズマによる高温熱分解法、焼却法などが実用化に近い方法として検討されているが、それぞれ、大規模な施設を必要とする、廃ガスの処理を要するなどの問題があった。また、酸化鉄などの触媒による分解法も検討されているが、500℃以上の高温を要するなどの問題があった。
ハロゲン化金属触媒を用い、アルコール類の存在下で難分解性のフロンを比較的低温で分解・無公害化 |
本新技術は、主触媒としてフッ化第二鉄や塩化第二鉄などの鉄ハロゲン化物、助触媒として塩化第二銅やフッ化第二銅などを活性炭に担持させた触媒系により、低級アルコールやエーテル類の存在下で難分解性のフロンを300℃程度の比較的低温で分解・無公害化するとともに、分解生成物をハロゲン化アルキルなどの有用な形で取り出し有効利用するものである。
接触分解は、フロン(CFC−113(CCl2FCClF2)など)をエタノールやメタノールなど
のアルコール類と混合し、気化させて反応管に流すことにより行われる。反応管には触媒を担持させた活性炭が
充填されており、300℃程度の低温、常圧という温和な条件で難分解性のフロンを分解することが可能である。
フロン分子中の炭素は一酸化炭素と炭酸ガス、塩素は塩化アルキル(塩化メチルなど)、フッ素はフッ化水素
として回収する。分解率は99.99%で、反応温度が低いため触媒の活性低下が少ない。主触媒の金属ハロゲン化物は、
反応時間の経過とともに次第に酸化物などになり活性が低下するが、助触媒の働きにより再び金属ハロゲン化物に
復元されるため長時間にわたり活性を維持することが可能である。触媒自体は、活性炭をハロゲン化金属の水溶液に
浸し乾燥させるという簡便な操作により調整することができる。触媒物質(主触媒/助触媒)、共存反応物質
(アルコール類など)はいずれも安価で入手容易であり、分解反応は発熱反応であるため追加加熱は少量で
すむことなどから、運転コストを低く抑えることが可能である。また、分解生成物は、回収が容易で再利用可能な
有用化合物(化学品原料など)として得られる。本分解方法は、特別な高温熱源や大容量電流を必要とすることなく、
処理量に応じて装置規模(反応管のサイズ、本数)を比較的自由に設計でき装置自体も小型である。
このため、装置を車載移動型とし、フロンの貯蔵場所に出向いて処理を行うことが可能である。
本装置は、反応塔、冷却凝集塔、ガス吸着塔、未反応フロン吸着塔より構成される。
(1)反応塔 : | 並列に設置された複数の反応管と反応温度制御のためのヒータよりなる。個々の反応管には触媒を担持させた活性炭が充填されており、反応管を順次切り換えながらフロンを連続的に接触分解する。一部の反応管を休ませることで、触媒活性の回復を図る。フロンは、アルコールと混合され、気化器を通して気体状態で反応管に導かれ、反応・分解する。 |
(2)冷却凝集塔 : | 分解生成物を冷却液化し、フッ化水素を水酸化ナトリウムにより中和して回収する。 |
(3)ガス吸着塔 : | 分解生成物中の塩化メチルを吸着回収する。 |
(4)未反応フロン吸着塔: | 活性炭を充填した吸着塔を設け、未反応の微量フロンを吸着する。 |
難分解性のフロンを触媒により分解 |
本新技術には、次のような特徴がある。
(1) | 温和な反応条件(300℃、常圧)で難分解性のフロンを接触分解することができる。 |
(2) | 分解生成物は、いずれも回収が容易で再利用可能な有用化合物として得られる。 |
(3) | 装置を小型にできるため、車載移動型とすることが可能。 |
(4) | 装置は安価であり、運転コストも低い。 |
従って、以下の用途に利用が期待される。
(1) | 特定フロンなどの分解処理。 |
(2) | その他のオゾン層破壊物質(四塩化炭素など)の分解処理への応用。 |
(3) | 難分解性脂肪族ハロゲン化物の分解処理への応用。 |
This page updated on May 14, 1999
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