新技術事業団報 第642号

平成6年12月7日
埼玉県川口市本町4-1-8
新技術事業団
電話(048)226-5608(企画調査室)

「量子井戸構造半導体赤外線(3〜5μm)レーザ素子の製造技術」
を委託開発課題に選定ならびに開発企業を選定

 新事業団(理事長 松平寛通)は、静岡大学工学部教授 藤安 洋氏、同助教授 石田 明広氏らの研究成果である「量子井戸構造半導体赤外線(3〜5μm)レーザー素子の製造技術」を委託開発課題として選定するとともに開発企業を選定した。
 近年、通信、計測、医療などの分野において波長が3〜5μmの半導体赤外線レーザが重要とされてきたが、従来この波長帯の半導体赤外線レーザは液体窒素(マイナス 196度)などで冷却する必要があり、また、半導体レーザを発振させるために加えなければならない電流(しきい値電流)が高いことが問題であった。
 本新技術は、半導体レーザ素子を構成する半導体層のうち、活性層(電流を注入することでレーザ発振し、レーザ光を放出する層)を硫化鉛ストロンチウム、硫化鉛などを交互に積層させた多層構造とすることで量子井戸構造(注1)とするとともに、活性層を挟んでいるクラッド層(活性層に注入された電子および正孔およびレーザ発振した光が外に漏れないよう活性層内に閉じこめる層)にストロンチウムを混入する(図1)ことで、電子、正孔および光の閉じこめ効率を上げて約マイナス70度以上と従来より高温の発振を可能とし、かつ、しきい値電流を下げるものである。そしてこのような半導体レーザ素子を製造するため、原料蒸気を高濃度にして結晶成長を行わせるホットウォールエピタキシーに、蒸着膜昇華法(注2)を組み合わせる方法を用いたものである(図2)。
 本新技術による半導体赤外線レーザ素子は、極力常温に近い温度(マイナス70度以上)で発振するため、液体窒素などで冷却する必要がなくなって装置全体の小型化がはかれ、小さい電流でパルス発振が可能となるとともに、従来の半導体赤外線レーザ素子に比べ高出力であるなどの特徴を有することから、CO2濃度などの環境物質計測、医療におけるアイソトープ測定、次世代の光通信の分野などで広く利用されることが期待される。
 本新技術の開発は、浜松ホトニクス株式会社(社長 晝馬輝夫、本社 静岡県浜松市砂山町32番地の6、資本金70億円、電話053-452-2141)に委託する予定で、開発期間は4年、委託開発費は5.5億円の予定である。今後、科学技術庁長官の許可を受けた後、新技術の開発を実施する。

「量子井戸構造半導体赤外線(3〜5μm)レーザ素子の製造技術」(背景・内容・効果)

(*) この発表についての問い合わせは、電話048(226)5617 本田、岩本までご連絡ください。


This page updated on May 14, 1999

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