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別紙1

平成25年度 新規研究開発課題 一覧および総評

研究代表者 所属機関・役職 研究開発課題名 研究開発課題概要
蝦名 鉄平 理化学研究所
脳科学総合研究センター

研究員
大規模なタンパク質データ解析のための高速な局所配列特徴抽出法の開発

タンパク質の機能や構造に対応する局所配列の特徴抽出のためにクラスタリング法が広く利用されているが、従来の方法は近年のタンパク質データベースのような膨大なデータに適用することが難しい。そこで本研究開発では、近年開発された高速な階層的クラスタリング法、BOOL(Binary cOding Oriented cLustering)を利用することでこの問題を解決し、大規模なタンパク質データベースにも適用可能な局所配列の特徴の抽出法を開発する。

西田 孝三 理化学研究所
生命システム研究センター

テクニカルスタッフ
マルチオミクスデータを用いたゲノム規模代謝モデリングのためのネットワーク解析システムの開発

近年、いくつかのモデル生物で全ゲノム規模での代謝モデルの再構築結果が公開されている。これらのモデルに独自オミクスデータを適用し、その結果着目したパスウェイをターゲットとする薬剤情報の探索を容易にするソフトウエア基盤の構築を目的とする。本研究では「大腸菌の代謝モデルとKEGG PATHWAYの統合」「オミクスデータマッピングと可視化」「KEGG MEDICUSを用いた薬剤探索」これら一連の操作を実現したネットワーク解析システムの開発を行う。

西村 陽介 京都大学
化学研究所

大学院生
KNApSAcKを用いた植物の効能メカニズム解明のための基盤構築

KNApSAcK Familyは、植物代謝産物とその由来植物種の組み合わせおよび各植物種のヒトに対する薬効・適応症などの情報を収載している。本提案は、植物の効能に関する情報(個体レベルの機能情報)と、ChEMBLデータベースなどの植物代謝産物と相互作用するヒトタンパク質情報(分子レベルの機能情報)との因果関係の解明に向けた情報基盤を構築し、メタボローム情報を利用した植物の効能予測のための知識の蓄積を目的とする。

番野 雅城 東京大学
大学院農学生命科学研究科
応用生命工学専攻 生物情報工学研究室

大学院生
機械学習を用いたタンパク質—リガンド結合部位予測ツールの自動生成パイプラインの開発

利用者が指定したリガンド(糖、脂質、金属イオンなど)に対し、そのリガンドが結合するタンパク質の部位(リガンド結合部位)を予測するツールの自動生成パイプラインを開発する。すでに開発したリガンド結合部位データベースにほかの最新データを統合することで、機械学習に基づく高精度な予測ツールを生成する。生成される予測ツールは立体構造未知なタンパク質も予測可能で計算コストも小さく、ゲノムワイドな予測が可能である。

福島 敦史 理化学研究所
環境資源科学研究センター
メタボローム情報研究チーム

研究員
植物代謝物プロファイリングデータベースAtMetExpressの開発とオミックスデータ統合化の推進

本研究は、質量分析計を使って測定されたモデル植物シロイヌナズナのメタボローム測定データの過去研究を統合することで、シロイヌナズナメタボロームデータベースAtMetExpressを構築する。NBDCのメタボローム関連データベースおよび植物関連データベースを活用して、メタボロームデータおよび他階層オミックスデータの統合化によって新たな知識発見につなげる。

藤井 聡 九州工業大学
大学院情報工学研究院
生命情報工学研究系

助教
共起関係解析によるタンパク質の機能モジュール探索法の開発

現在、さまざまなデータベースが公開されているが、それらをいかにつなぎあわせて有用な情報を引き出すかが課題となっている。そこで本研究では、それらの情報同士の共起関係に注目し、重要な関係性を探索する手法を開発する。今回は機能ドメイン・モチーフに対して共起関係を求めていく。その共起関係は3次元構造上近くに存在するもの、全タンパク質中で高頻度に出現するもの、またその両方に当てはまるものを検出する。これらで得られた重要な共起関係はデータベースにしてWebツールとして公開する。

細田 正恵 創価大学
大学院工学研究科
生命情報工学専攻

大学院生
タンパク質−糖鎖間の糖鎖結合部位の解明のためのツール改良及び解析

生体内の機能解明に、タンパク質などの分子と相互作用する糖鎖の解明が注目され、質量分析、レクチンマイクロアレイなど実験により蓄積された大量の実験データを解析する糖鎖インフォマティクスの技術が求められている。そこで、糖鎖構造の解析ツールとして開発している、複数の糖鎖構造アラインメントを行うことができるツールを用いて、統合化されたデータベースのデータからタンパク質と糖鎖の認識および結合の理解・解明に貢献する。

森 宙史 東京工業大学
大学院生命理工学研究科

助教
MicrobeDB.jpデータを用いたメタゲノム解析Webアプリケーションの開発

本研究開発は、使いやすい解析ツールが不足しているメタゲノム解析について、既存のメタゲノム解析データを同一の解析手法で解析した結果を公開しているMicrobeDB.jpのデータおよびその解析手法を利用することで、ユーザーが所持するメタゲノム配列データからの知識発見を容易に行い、さらには既存のメタゲノム解析データとの比較解析を可能にするWeb アプリケーションを開発する。

(五十音順)

<総評> 研究総括:高木 利久(東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授)

統合データベース解析トライアルの目的は、現在、統合化推進プログラムで構築されているデータベース群を主な対象として、それらからの新たな知識発見を支援するようなツールや、より高次の意味付けをするようなツールの試作品を開発することです。また、このような開発を通して、統合データベースの新たな活用法や問題点を見いだしたり、データベース活用人材の裾野を広げたりすることです。

本プログラムには、今回13件の応募があり、8課題を採択しました。大学院の修士課程に所属するような若手からも応募がありましたので、また、今回はトライアルということでしたので、応募書類の作成に慣れていないために、表現が未熟だったり、説明が不十分だったりといった欠点には目をつぶり、良い点をできるだけ見いだすようにして、その課題を拾い上げるという方針で臨みました。選考には研究アドバイザーなど8名の方々の協力をいただきました。研究アドバイザーなどの間で意見が分かれることがしばしばありましたが、できるだけ良い点を見いだすという方針に基づいて8課題を選びました。採択した後も研究者任せにせず、より良いツール作りができるように、きちんとフォローしていきたいと考えております。次回の募集については現時点では未定ですが、今回の経験を踏まえて、募集のあり方、提案書の書式、募集説明会のあり方などを工夫して本プログラムをより良いものにしていきたいと考えております。

以上