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別紙1

国際科学技術共同研究推進事業(戦略的国際共同研究プログラム)
「日本−EU共同研究」平成25年度新規課題 一覧

課題名 日本側
研究代表者
所属・役職 課題概要
EU側
研究代表者
バイオマス変換反応のための普遍元素触媒 上田 渉 北海道大学
触媒化学研究センター
教授
本研究は、バイオマス資源の効率的な利用を実現することを目的とし、複数の普遍元素(容易に入手可能な元素)を均一な構造に配置することにより、多機能の人工触媒を創出し、生物プロセスを超えた反応を達成することを目標とする。 具体的には、日本側は主に、反応ベースに触媒物質をデザインした多機能構造触媒物質の創出を目指す。EU側は設定したバイオマス触媒反応の機構を計算科学的方法や高度分析で解析し、普遍元素触媒作用の特徴を解明する。 双方の研究チームが相互補完的に取り組むことにより、普遍元素による多機能構造触媒が創出され、バイオマス反応を発展させることができ、石油資源から生物資源利用への変化に呼応した触媒元素利用シフトを導き、化学資源シフトを促進することが期待される。
エミエル・ヘンセン (オランダ)
アイントホーフェン工科大学 
化学工学科 
教授
イリジウムを代替するホイスラー合金 高梨 弘毅 東北大学
金属材料研究所
教授
本研究の目的は、高密度磁気記録の読み取りヘッドやスピントロニクス素子に不可欠な反強磁性イリジウム−マンガン(IrMn)薄膜を代替する、希少元素フリー反強磁性ホイスラー合金薄膜を創製することである。 具体的には、日本側はエピタキシャル薄膜試料の作製と基礎物性測定、中性子や放射光を用いた構造や微視的磁性の評価を行い、EU側は理論計算による材料設計と多結晶薄膜試料を作製する。デバイス構造の作製と評価は日本側とEU側が共同して行う。 双方の研究チームが相互補完的に取り組むことにより、希少元素であるイリジウムを用いずに汎用元素のみから成る反強磁性ホイスラー合金薄膜が開発され、イリジウム消費量の削減および資源の保護につながることが期待される。
廣畑 貴文  (イギリス)
ヨーク大学
電気学科
准教授
単層カーボンナノチューブ薄膜によるインジウム代替 丸山 茂夫 東京大学
大学院工学系研究科
教授
本研究の目的は、希少金属であるインジウムを含むITOやIGZOを完全に代替する高性能カーボンナノチューブ(CNT)薄膜を開発することである。 具体的には、日本側は支持基材上におけるCNTの成長機構解明と成長制御、材料精製や薄膜デバイス集積を担当し、EU側は気相合成法におけるCNTの成長制御とその場観察による成長機構の解明などを行う。 双方の研究チームが相互補完的に取り組むことにより、基礎的な物性理解に基づいてCNT薄膜・デバイスの性能・信頼性を向上させ、従来の平面ディスプレイのみならず、将来の巨大市場に成長が期待されるフレキシブルエレクトロニクスにおいて、長期にわたって導入可能なCNT薄膜の開発につながることが期待される。
エスコ・カウピネン (フィンランド)
アールト大学
応用物理学科
教授

<総評> 研究主幹 黒田 一幸 (早稲田大学 理工学術院 教授)

持続可能な社会を実現する上で、資源問題は日本が直面する大きな課題であり、なかでも近年、希少元素の重要性が注目を集めています。希少元素代替材料および使用量低減技術の開発は最も期待されている研究分野の1つです。本プログラムでは、合理的な材料設計、ナノ構造の合成・作製、先端的な評価・測定手法などによって、さまざまな角度から新材料開発、希少元素使用量低減を追求する研究テーマについて、日本と欧州の研究者が協力して展開する共同研究を広く募集しました。その結果、33件の多岐にわたる優れた提案が寄せられました。内容的には触媒材料、電子材料、磁性材料など、多岐にわたっており、これらについて、日本側と欧州側でそれぞれ別個に書面での評価を行いました。評価の重点は、研究内容がプログラムの趣旨に適合しているか、3年という期間内で実行できる研究計画となっているか、日欧で対等かつ効率的に行う共同研究の体制がとられているか、などに置かれました。まず選考にあたっては、日本側と欧州側で行った評価の結果を総合して国内で9課題のヒアリングを実施し、次にそれらの情報をもって最終的な欧州側との合同選考会議に臨み、採択する3課題を決定しました。ハイレベルな研究提案の中から採択課題を精選するということで困難を伴いましたが、各課題について直接、闊達な議論を交わしたことにより合意に至りました。

最終的に採択された課題はいずれも学術レベルの高い研究内容であり、共同研究の成果が今後、本研究分野が発展する上で基盤となる重要な知見を提供するものと期待しています。また、分野もそれぞれ触媒材料、電子材料、磁性材料とバランスが取れたものとなっており、本プログラムの趣旨を生かせたものと思います。