本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。

(背景) 複雑な曲面を有する金型の鏡面仕上げの高精度化、高効率化、自動化ができる加工技術

 精密を要する複曲面金型の鏡面仕上げは、小形の砥石等を用いた手仕上げ作業に依存しており、形状精度と表面粗さの均一性については熟練した技能と経験が必要とされ生産性にも限界があります。一方、専用加工機械による金型の精密研削においては、理化学研究所で開発されたELID(電解インプロセスドレッシング)研削方法と放電ツルーイング法によって試みられてきました。この加工法は、導電性を有する研削砥石の近くに電極を設置し、砥石と電極間にパルス電流を流すことで砥石の目立てを行いながら安定した研削を行うものであったが、これまでこの加工法が搭載された加工装置は自由度や動作形態も限られることから、複雑な曲面、特に複曲面を有する金型の鏡面仕上げに対応した高精度、高効率、自動化を実現できる新加工技術が求められています。

(内容) 複雑な曲面を有する金型の自動鏡面仕上げを実現した、MC加工用ヘッドと専用砥石の開発

 本新技術は、ELID研削法による金型の鏡面研削として、MC(マシニングセンター)用いて複曲面の鏡面研削の自動加工を可能とした加工ユニットに関するものです。
 本開発の研削加工用ヘッドはMCに取り付け可能なボールエンド形とし、さらに、ELID研削法に適したドーナツ状のメタルボンド小径砥石およびインターバル方式によるELID用加工法を開発しました。また、ヘッド先端部の砥石回転機構は、ボールエンド形の欠点である砥石先端部での加工死点が生じないよう、ヘッド先端に取り付けた砥石を自転させると共に、ヘッド全体をMCの主軸と同期させて軸中心にも回転させる自公転式としました。これにより、砥石の研削性能を長時間一定に保つことができ、金型の鏡面仕上げの均一化、高精度化、自動化を実現することができました。

(効果) 複雑な曲面を有する精密成型金型の自動鏡面仕上げへの利用

 本新技術による加工ユニットは、ELID研削法に適した専用の研削加工用ヘッドと専用砥石の開発、MCによる加工とインターバルドレッシングにより、
砥石の研削性能を長時間一定に保つことができるため、金型の鏡面仕上げの生産性が向上
複雑な曲面を有する金型の鏡面仕上げの高精度化、高効率化、自動化が可能
 などの特徴を持つため、高い意匠性が求められる自動車・家電製品等の樹脂部品用精密成型金型の自動鏡面仕上げに、広く利用されることが期待されています。

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