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研究開発課題の概要

1 革新的ガンマ線計測システムの開発
 ガンマ線計測技術の応用技術である陽電子放射断層撮影(PET)装置はがんの早期発見に有効であり、その更なる性能向上を目指して研究が続けられている。本研究開発では、より正確な位置情報が得られる飛行時間分解型PET装置において利用可能な、高性能ガンマ線検出装置を開発する。具体的には、ナノ構造を利用した高性能シンチレータと検出信号をデジタル的に処理する新規な方法を用いて、従来技術に比べ時間分解能を数倍向上させた装置を構築する。本技術は、医学分野では診察時間の大幅短縮、材料科学分野では金属の非破壊計測の精度向上の達成が見込まれる等広範な分野での応用展開が期待される。
2 迅速診断用のチッププラットフォームの開発
 臨床診断用ツールとして見た場合、既存のマイクロアレイは計測の迅速性や信頼性、操作性の点で不十分である。本研究開発は、マイクロアレイに3次元微細構造を形成し、DNA分子を誘電効果により濃縮するメサ型DNAチップブラットフォームと、搭載するコンテンツとして神経発達への環境分子の影響解析用シナプトチップ、院内感染菌の診断チップを開発し、従来のマイクロアレイや遺伝子診断法では達成できない少サンプル且つ短時間での診断・解析機能を実証する。我が国が持つ独自のバイオ技術によるマイクロアレイ応用の新しい展開が期待できる。
3 独自の非侵襲可視化技術を用いた生体内シグナルの動態解析試薬等の開発
 創薬研究・スクリーニングにおいて低分子を用いた分子イメージング技術は遺伝子操作等を必要とせず手軽に使用可能であるが、対象分子毎に全く異なるものが必要である。本研究開発は、分子内FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)や蛋白質スプライシングを用いて開発した、汎用性の高い蛋白質性の分子イメージングプローブ作成技術により、細胞内での蛋白質相互作用検出試薬の開発、細胞内情報伝達物質の可視化プローブの開発、in vivo(体内の)スクリーニング用トランスジェニック動物の作製などを行う。本技術は一般研究試薬から創薬スクリーニング用のツールまで幅広い応用が可能で、創薬研究における基盤技術となることが期待できる。
4 羊膜由来幹細胞を用いた細胞遺伝子治療用の細胞ベクターの研究開発
 再生医療に幹細胞を用いる試みが開始されている。羊膜細胞由来の幹細胞は、他の細胞に比較して同種移植による急性拒絶反応が惹起されないという特徴がある。本研究開発では、この利点を活用し、癌抑制遺伝子や神経成長因子、欠損酵素などの遺伝子を羊膜細胞由来幹細胞に導入し、治療用の細胞ベクターを開発する。癌に対する遺伝子細胞療法、パーキンソン病などの神経変成疾患や脳代謝病などへの細胞移植療法などの臨床応用の実現は、致命的な疾患に悩まされている患者に福音となるだけでなく、ソースが得やすいことから医療費の削減にもつながることが期待される。
5 モノリシック型高出力高演色性大型白色LEDの開発
 現状の白色LEDは、青色LEDチップと黄色の蛍光体を含む樹脂によって構成されているため、色合い(演色性)の不均一性、低い再現性が問題となっている。本研究開発では熱伝導、電気伝導ともに優れたSiC単結晶基板にRGBの蛍光体を添加し、その基板上に紫色発光ダイオードを積層したモノリシック構造の、大面積単一チップによる高出力高演色性白色LEDを開発する。デバイス構造の簡略化により大幅なコスト低減と特性向上を実現することが可能で、照明や表示機器などの分野において巨大な産業創出に結びつくことも期待される。
6 レーザ干渉法を利用した小型・光ファイバ・高応答温度センサの開発
 温度センサとして主流を占めている熱電対は、高い応答性を必要とする温度変化を時系列計測することは困難である。本研究開発ではヘテロダイン干渉法を用いた、非接触で測定できる非常に小型で且つ安価・ロバスト・操作容易な光ファイバ温度センサを開発する。本センサによる温度計測により、熱流体分野においてエンジン、ガスタービンなどの省資源化や低排出ガス化が、医療分野において人工臓器内温度や呼吸温度のモニタが可能となる等、従来の熱電対等で対応しえなかった新規分野での利用拡大が期待できる。
7 無機ナノ粒子に関する研究
 ナノ粒子の製造法には気相法、液相法、噴霧熱分解法などがあるが、装置が大掛かり、原料が高価、高温・高圧を必要とするなどの短所がある。本研究開発では、金やニッケル、鉄、コバルトなどそれぞれ目的とする金属塩を含む溶液にエチレングリコールなどの有機物還元剤を含ませて、これにマイクロ波を照射するだけで安定した品質の粒子を得る安価なナノ粒子の製造法を開発する。本技術で得られるナノ粒子は、塗料・コーティング分野、電子材料分野、触媒分野などに広く用いられ、製造コストの低減に大きく貢献する。
8 機能性材料に対する高精度複雑形状放電加工技術の開発
 セラミック材料は金属材料にはない優れた特性をもっているが、その絶縁性のため電気的な加工ができず、加工コストの高い材料となっている。本研究開発では、放電に伴う加工油の解離で生じる炭素を絶縁体表面に継続的に付着させることで加工面の導電性を保持して、導電性材料と同様な放電加工を可能とする補助電極法加工技術を開発・実用化する。本技術により、セラミック材料は金属材料と同程度のコストで製品化することが可能になり、産業界における使用分野の拡大と新分野への応用が著しく加速されると期待される。
9 欠落消滅機能を持つ半導体洗浄液の実用化研究
 LSIの製造に用いられているシリコン洗浄液は、材料表面に荒れを生じ、また汚染金属洗浄能力も次世代デバイス製造用としては不十分であった。本研究開発では、従来の100倍以上の洗浄能力に加え、半導体中の欠陥準位を消滅させる機能を併せ持ち、かつ安価な新洗浄液を開発する。本洗浄液の使用により、各種半導体デバイスの高性能化と低コスト化が同時に達成できるだけでなく、本洗浄液は反復使用した後に完全分解可能なため、環境保護という観点からもその利用拡大が期待される。
10 消臭による快適介護環境の創出に関する研究
 介護現場での不快臭は介護者のストレスや要介護者の隔離に繋がる等深刻な問題であるが、要介護者の心理を考慮した場合、介護者による行為ではなく自動的に消臭されることが望ましい。本研究開発では、アンチモン酸亜鉛厚膜を用いた高感度悪臭ガスセンサーと植物/微生物系の高性能消臭剤およびこの両者を組み込んだ自動消臭機能付きポータブルトイレと介護室用自動消臭システムを開発する。本技術により、快適な介護環境が創出され、高齢化に伴い急増する要介護者との明るく清潔な共存型社会の実現に貢献できる。
11 液体電極プラズマを用いた超小型原子発光分光分析装置の開発
 溶液中の元素分析などに用いられる誘導結合式プラズマ原子発光分析装置は、一般のプラズマ発光装置に比べ電極からの不純物の影響がなく高感度ではあるが、反面、高周波電源が必要なため装置が大掛かりである。本研究開発では、微細な流路に高電界を集中させたときに発生するプラズマの特長を活用して、両者の欠点を同時に補う手のひらサイズでかつ高感度の発光分光分析器を開発する。本技術は手軽な現場分析を可能とし、魚貝類などの食品管理分野をはじめ、水質や土壌汚染などの環境分析分野に大きく貢献する。
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This page updated on July 26, 2004

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