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別紙1

「犯罪から子どもを守る7つの提言」の概要について

1.背景

国は「犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008」の中で、事後対応のみならず犯罪の未然予防や不安感への対応を掲げ、警察だけでなく、地域、学校、自治体など多様な人々による取組みを求めてきました。その結果、刑法犯の認知件数は、子どもが被害のものも含めて10年間減少しています。しかし、ボランティアからは続けることへの疲れや、有効性が検証されていないなどの問題が指摘されています。また、小学生の性犯罪被害は平成20年以降増加傾向にあることや、増加し続ける虐待相談件数、いじめによる自殺の問題などをみても、今後も社会全体で取組む必要があります。

JST 社会技術研究開発センターでは、「犯罪からの子どもの安全」研究開発領域で13のプロジェクトに取組んだ成果として、「犯罪から子どもを守る7つの提言」をまとめました。この提言の内容は、さまざまな取組みや政策にも役立つものであり、関係者が積極的に対応することを期待しています。

2.提言の概要

子どもを犯罪から守るための重要な観点として、以下の3点が不可欠と考えます。

①子どもは社会全体で守り育むべき存在である

保護者が子どもを守り育むことは重要ですが、社会全体で取組むことが必要です。もちろん、防犯だけではなく、健全育成などの他の価値観との両立を目指すことも大切です。また、子どもの生活環境として、現実空間だけでなくインターネットなどの情報空間も見守ることが必要です。

②さまざまな取組みを被害の予防に結びつける

従来の犯罪対策は、発生後の問題や原因の解明が中心でした。今後は、犯罪予防の観点を結び付ける必要があります。その際、被害と加害の連鎖が少なからずあることを踏まえ、被害・加害双方の防止に取組むことが大切です。

③人・モノ・社会システムをあわせて考える

犯罪から子どもを守るのは最終的には人であり、それを支えるモノや社会システムがあります。優れた専門性や知識を持った人や、技術を駆使したモノが有効に機能するためには、法制度や社会的費用負担も含めて社会システムの在り方を考えることが必要です。

そこで、子どもを守るための具体的な方策として7つの提言をまとめました。

「犯罪から子どもを守る7つの提言」

1.あらゆる関与者が協働して子どもを守り育む
2.実態と根拠を踏まえ持続的な取組みを目指す
3.子どもの叫びを捉えデータ化し予防に活かす
4.データを共有し取組みに活かす仕組みを作る
5.犯罪現象を理解して防犯に役立つ能力を育む
6.犯罪予防に資する研究開発や実装を促進する
7.現場のニーズや研究の成果を社会に発信する

犯罪から子どもを守るためには、「被害の未然防止」や「早期発見・対処」、「加害少年への支援」まで考える必要があります。

提言1では、子どもを含むさまざまな世代や異業種・異分野の人々が地域を超えて、共通の目標の下に「協働」することを掲げています。

一方で、子どもを取り巻く環境は家庭や学校、地域、インターネットなどの情報空間まで広がり、犯罪も変化しています。多様な価値観を持つ人々が協働するために、提言2では、犯罪被害や社会、取組みの「実態と根拠」を科学的・客観的に捉え、ムリ・ムラ・ムダをなくして「持続的」な取組みとしていくことを掲げています。

犯罪被害のヒヤリ・ハットや子どもが受けた傷害などのデータは、防犯活動や虐待などの判別に有用です。その際、年齢や障害から対話が難しい場合でも子どもたちの叫びを適切に捉えることが大切で、そのために有効な面接法の活用が必要です。

さらに、得られたデータを現場で使える情報に加工し提供するに際しては、個人情報保護や著作権などの面から、現行法では対応が難しいこともあり、提言3および4では、子どもの犯罪被害の予防に有用な「データの収集」と「共有し活かす仕組みづくり」を、国や自治体が中心となって進めることを掲げました。

そして、提言5では、子どもへの安全教育の推進や大人たちが「防犯リテラシー」を高めるための取組みを、また提言6では、根拠に基づく犯罪予防に向けた「研究や成果の社会実装の促進」について、提言7では、現場での具体的な問題や研究成果の「社会への発信」を通じて取組みの一助とすることを掲げています。

提言書では、7つの提言に結びついた問題意識やプロジェクト成果などの根拠、より具体的な提言を取り上げています。