本新技術の背景、内容、効果は次のとおりです。

(背景) 金型のメンテナンス軽減を実現することが望まれている。

 金型成型は、一定品質のものを大量に生産できる技術であり、様々な製品に利用されています。しかしながら、生産工程で金型が汚れるため、金型のメンテナンスを頻繁に行う必要があり、生産効率を大幅に向上させるためには、
  ○金型の防汚化
  ○離型効果の長寿命化
  ○離型効果の万能化
が求められています。従来、金型成形の度にフッ素系またはシリコン系化合物の離型剤を塗布し、金型と成型物との離型性を保持させていました。これらの離型剤は、成型の度に部分的に金型表面から剥離するため、金型表面に凹凸ができ、成型物の品質低下の原因となっています。成型物の品質を一定水準に維持するためには、頻繁に金型を洗浄する等メンテナンスを行い、離型剤を再度塗布する必要がありました。そのため、生産コストが嵩む傾向にあり、金型が汚れず、離型効果が長時間持続し、様々な成型材料に対して離型効果を発揮する金型用被膜加工技術が求められていました。

(内容) 離型性、耐久性が向上する離型金型用被膜加工技術に関するものです。

 本新技術は、トリアジンジチオールを金型表面に真空蒸着させることにより、金型成型物の生産効率が大幅に向上する離型金型用被膜加工技術に関するものです。
 本新技術によるトリアジンジチオールは、金属と反応しやすく、フッ素化合物等を置換基に結合させることで、加熱蒸着後、分子同士が重合し、撥水性、離型性が発揮されます。加熱重合することで、剥離しにくい強固な被膜を生成することができるため、離型効果を長時間保持することが可能です。この離型効果、耐久性の向上により、金型が汚れ難くなり、メンテナンスフリーの金型成型を実現しました。本新技術によるトリアジンジチオール被膜の摩擦係数は、フッ素、テフロンよりも小さい値(0.1~0.14)が得られました。
トリアジンジチオール テフロン、フッ素
摩擦係数 0.1~0.14 0.2程度


(効果) 歩留まり良く成型物を数千~数万ショットまで連続生産できるため、生産効率の大幅な向上が可能です。

 本新技術により被膜加工した金型は、従来の離型剤と比べて離型効果が飛躍的に向上するため、歩留まり良く成型物を数千~数万ショットまで連続生産することや従来金型成型が全くできなかった材料での成型が可能となります。さらに、膜厚が0.05~0.1μ程度にできるため、従来の離型剤に比べ1桁精度の高い金型成型も可能となります。離型性・耐久性・防汚性に優れメンテナンスを軽減できるため、生産効率が上がることから、金型成形加工品の製造ライン等への利用が期待されます。

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This page updated on July 20, 2004

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