JSTトッププレス一覧科学技術振興機構報 第915号 > 資料5
資料5

評価者(選考パネル)および評価

研究総括:河原林 健一(国立情報学研究所 教授)

研究領域:

巨大グラフ

戦略目標:

人間と調和する情報環境を実現する基盤技術の創出

選考パネル:

パネルオフィサー 喜連川 優(東京大学 生産技術研究所 教授)
パネルメンバー 上田 和紀(早稲田大学 理工学術院 教授)
辻 ゆかり(NTT情報流通基盤総合研究所 企画部 研究推進担当部長 総務経理G長兼務)
中川 裕志(東京大学 情報基盤センター 教授)
美濃 導彦(京都大学 学術情報メディアセンター 教授)
Calton Pu ( Professor,College of Computing, Georgia Tech)

評価結果:

研究領域「巨大グラフ」は、インターネットのWeb構造やFacebook、Twitterなどのソーシャルネットワーク、道路・交通網などのネットワークを、巨大グラフとして理論的に解析するための高速アルゴリズムの開発を目指すものである。今日のネットワークアルゴリズムは、大規模化し続けるネットワークに対し、現実的な時間で解析を行うことが不可能となると想定される。この問題に対し、本研究領域は、数学的理論に基づき、短時間で実用的に問題の無い精度の解析を可能とする、巨大グラフ高速解析アルゴリズムを開発する。さらに、リアルタイムで変化・膨張を続けるWebやソーシャルネットワークなど、成長する巨大グラフに対するモデル理論の基盤構築を試みる。これらは、計算社会学を始め、学際的な研究にも寄与すると同時に、ソーシャルネットワークを利用した災害対応などにおいても有効な解析手段になることが期待される。

人のつながりをITが支える今日、各個人のネットワークに着目した最適情報環境の実現は極めて挑戦的な課題であり、その実現に不可欠な巨大グラフ超高速解析基盤技術を創出しようとする本研究領域は、戦略目標「人間と調和する情報環境を実現する基盤技術の創出」に大きく資するものと期待される。

河原林 健一 氏は、アルゴリズム的グラフマイナー理論の研究や、グラフ理論的高速アルゴリズムの開発など、本研究領域の基盤となる離散数学や理論計算機科学の分野を国際的に先導し、極めて高い評価を得ていることから、研究総括として申し分ない研究者と認められる。

研究総括:東原 和成(東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授)

研究領域:

化学感覚シグナル

戦略目標:

多様な疾病の新治療・予防法開発、食品安全性向上、環境改善等の産業利用に資する次世代構造生命科学による生命反応・相互作用分子機構の解明と予測をする技術の創出

選考パネル:

パネルオフィサー 岡田 泰伸(自然科学研究機構 生理学研究所 所長)
パネルメンバー 飯田 秀利(東京学芸大学 教育学部 教授)
椛 秀人 (高知大学 医学部 教授)
小泉 修一(山梨大学 医学部 教授)
関野 祐子(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部 部長)
Frank Wehner(Professor, Max−Planck−Institute)

評価結果:

研究領域「化学感覚シグナル」は、匂い、フェロモン、味など化学物質(シグナル)に反応して起こる嗅覚や味覚といった「化学感覚」の基本原理を解明するとともに、産業展開など社会的波及が期待される成果を得ることを目指すものである。具体的には、脳神経科学、行動生物学など多分野からのアプローチにより、化学感覚シグナルの受容から情動・行動の表出に至るまで、化学感覚の脳神経回路における情報処理機構や複数感覚の統合機構を解明する。また、複合臭からの匂い物質の同定手法の確立や、体調などにより匂いの感覚が変化するメカニズムの解明に取り組むとともに、さまざまな生物の化学感覚メカニズムを比較することで化学感覚の進化的変遷を明らかにする。さらに、疾病に伴う匂いや安心感をもたらすフェロモンが生体の代謝産物であるとの視点に立ち、これらの物質を探索・同定する。

本研究領域の推進により、さまざまな生命現象に関係する化学感覚の総合的な理解が進むと同時に、例えば美味しさに関与する分子機構の解明や疾患診断マーカーの開発など、食・医療などの産業への展開が期待される。従って、戦略目標「多様な疾病の新治療・予防法開発、食品安全性向上、環境改善等の産業利用に資する次世代構造生命科学による生命反応・相互作用分子機構の解明と予測をする技術の創出」に資するものと思量する。

東原 和成 氏は、これまで脳神経科学・分子生物学・生理学などをまたぐ分野横断的領域において、有機化学の観点から先導的な研究を行ってきており、研究総括として相応しいと認められる。