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別紙1

平成24年度 新規プロジェクトの概要 一覧

研究開発領域「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」≪平成22年度発足≫

実施期間:上限3年、研究開発費:(カテゴリーT)1000万円未満/年
(カテゴリーU)2000〜2500万円程度/年
【カテゴリ−】※1
題 名
研究代表者名
所属・役職
概 要 研究開発に協力する関与者
【T】

高齢者ケアにおける意思決定を支える文化の創成

清水 哲郎
東京大学
大学院人文社会系研究科
特任教授

高齢者ケアにおける意志決定には社会的・制度的にもいまだ多くの課題が存在しており、新たなケアのあり方についての理解や積極的な姿勢を促すための意識変革および文化の醸成が重要となっている。

本プロジェクトでは、高齢者が住み慣れた地域で最期まで自分らしく生きることを妨げる要因の解消を目的とする。具体的には、@本人・家族の意思決定プロセスを支援する態勢の不備、A最期の生のよいあり方や医療の役割についての地域住民の理解、B家族の介護負担軽減のための社会的ケア導入に否定的な意識、に焦点を当て、これらの要因の改善を目指す。

  • 医療法人社団ナラティブホーム
  • NPO法人全国コミュニティライフサポートセンター(CLC)
  • 青梅慶友病院
  • 国立長寿医療研究センター
  • 昭和大学医学部
  • 砺波市
【T】

認知症高齢者の医療選択をサポートするシステムの開発

成本 迅
京都府立医科大学
精神機能病態学
講師

高齢者数の増加に伴い、認知症により同意能力が低下した高齢者に対してどのように医療を提供すべきかが、医療を受ける側、提供する側双方において大きな課題となっている。

本プロジェクトでは、認知症高齢者においても、医療、福祉、行政の多職種によるサポートを受けてスムーズな医療選択および受療行動が可能になるためのシステムの開発を目的としている。具体的には、同意能力判定ツールの作成と、医学、法学、心理学の専門家、行政、高齢者、認知症高齢者とその家族が参加し、意志決定プロセスモデルを開発し、病院や地域で実際に運用してフィードバックを得ることで、現場で運用可能なシステムを構築する。

  • 花園大学 社会福祉学部 臨床心理学科
  • 千葉大学 法経学部
  • 成年後見センター リーガルサポート
  • 京都府丹後保健所
  • 土井医院
  • 認知症の人と家族の会 京都支部
  • 市民後見センターきょうと
【U】

健康長寿を実現する住まいとコミュニティの創造

伊香賀 俊治
慶應義塾大学
理工学部
教授

治療重点の医療から“疾病予防・健康増進”を重視する保健医療体系への転換が求められているが、健康づくり(一次予防)のみの対策には限界が指摘されている。ここで、社会レベルでの疾病予防(ゼロ次予防)の対象として、生活基盤である住環境の重要性が再認識されている。

本プロジェクトでは、高齢化率が日本の40年後と同じ40%に達する中山間地域の高知県梼原(ゆすはら)町をフィールドとした実証実験を行う。具体的には、フィールド調査に基づいて、ゼロ次予防推進に貢献する住環境の論拠を獲得し、住民主体型の生涯学習およびICTを活用した住環境見守りシステムによって、健康長寿支援のしくみを構築する。

  • 高知県梼原(ゆすはら)町
  • 首都大学東京
  • 北九州市立大学
  • 一般財団法人建築環境・省エネルギー機構
  • 独立行政法人建築研究所
  • 特定非営利活動法人サステナブル・コミュニティ研究所
  • 社団法人農協共済総合研究所
【U】

広域避難者による多居住・分散型ネットワーク・コミュニティの形成

佐藤 滋
早稲田大学
理工学術院/総合研究機構 都市・地域研究所
教授/所長

原発事故被災地である福島県浪江町では、町役場や仮設住宅団地、公共施設が町外各所に分散している。避難生活を送る高齢者にとって、孤立分散化した各種施設間を移動する負担は大きく、また分断された人的ネットワークにより孤立化も生じうる。

本プロジェクトでは、分散した町外コミュニティがそれぞれの地域と連携して避難住民の生活を支援するネットワーク・コミュニティの形成を目的とする。具体的には、生活・福祉・介護サポートシステムと多様な移動手段を組み込んだ統合型移動システムからなる包括的生活サポートシステムの構築と、それらを基盤とした多居住・分散型ネットワーク・コミュニティをデザインし、その形成を目指す。

  • 浪江町
  • 福島市
  • 二本松市
  • まちづくりNPO新町なみえ
  • NPO法人たけねっと
  • NPO法人JIN
  • 福島交通
  • 四谷共同法律事務所
【U】

認知症予防のためのコミュニティの創出と効果検証

島田 裕之
国立長寿医療研究センター
老年学・社会科学研究センター
自立支援開発研究部
自立支援システム開発室・室長

加齢とともに増加する認知症は、患者本人や家族の生活を崩壊させるとともに多額の医療や介護費用を要することから、予防や治療方法の確立は急務の課題である。

本プロジェクトでは、認知症発症の危険性が高い高齢者を抽出し、その予防のための包括的プログラムおよび活動モデルを開発し効果検証を行う。事業の運営は認知症予防サポーター研修を修了した健康な高齢者を主たる担い手とし、高齢者共助関係の新たなコミュニティを創造する。

  • 大府市 健康福祉部
  • 東京都健康長寿医療センター
  • 東京大学大学院
  • 早稲田大学 スポーツ科学学術院
  • 東京医科大学 公衆衛生学講座

※1 カテゴリーT:社会の問題を解決するための選択肢を提示しようとするもの(研究開発のあり方や科学的評価のための指標などの体系化など)。

カテゴリーU:社会の問題の解決に資する具体的な技術や手法などについてその実証まで行おうとするもの。

○実行可能性調査 ※2

題 名 研究代表者名
所属・役職
2030年代をみすえた機能統合型コミュニティ形成技術
小川 全夫
特定非営利活動法人アジアン・エイジング・ビジネスセンター
理事長

※2 実行可能性調査:

研究開発プロジェクトとしての実行可能性を1年間で調査し、その結果に基づき、あらためて採択・不採択についての評価を行うことを条件としたもの。

<総評>領域総括 秋山 弘子(東京大学 高齢社会総合研究機構 特任教授)

平成22年度より活動を開始した「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」研究開発領域も、いよいよ公募の最終年度にあたる3年目に入りました。平成22年度、23年度に採択したプロジェクトはいずれも精力的な活動を続けており、さまざまな成果を創出しつつあります。

このような状況の中で、本研究開発領域では本年度の公募にあたり、東京および京都で説明会を実施しました。そこでは、認知症や住環境、生涯学習など、これまでに採択できていない提案をはじめできるだけ広い分野をカバーするよう配慮すること、平成22年度、23年度において採択プロジェクトが少なかった地域やコミュニティからの提案、コミュニティの多様な関与者が参画する高齢社会の斬新なデザインの提案を期待することを特に強調しました。

これに対して、大学や研究機関のみならず、NPO、企業、公益法人から73件という多数の応募が寄せられ、そのうちカテゴリーTの応募が6件、カテゴリーUの応募が67件でした。研究開発を実施するコミュニティは北海道から沖縄まで幅広く分布しており、内容についても、ICT、健康づくり、多世代共生、まちづくり、認知症、機器開発・導入、医療、生涯学習、介護、就業、住環境、社会参加、人材育成、孤立・孤独、移動手段、評価尺度など多様な分野の提案が集まりました。

審査にあたっては特に以下の点を重視しました:コミュニティの現状と将来起こりうる問題を客観的根拠に基づいて把握し、課題の重要性を明確に示しているか、提案するプロジェクトについて国内外の類似の取り組みの動向や先行研究を十分に整理し、提案の新規性・独創性を客観的根拠に基づいて示しているか、実施期間で達成しようとする目標が明確か、コミュニティでの研究開発には多様な関与者の間の協働体制の構築など難関も多々あるが、研究計画は期間内に実行可能か、プロジェクト終了後の成果を持続するための方策が明確に示されているか。

厳正なる書類選考、面接選考を行った結果、カテゴリーTの提案2件、カテゴリーUの提案3件をそれぞれ採択しました。また、1件を実行可能性調査として、1年間という期間で暫定的に採択しました。採択された提案は、医療、認知症、災害、住環境などの分野に分かれ、対象地域も東北から九州まで幅広いものとなっています。

本年度においても、さまざまな興味深い提案を頂きました。しかしながら、採択には至らなかった提案内容として、豊富な経験に裏打ちされた提案ではあるが「研究開発」という客観的・科学的視点が十分でないもの、データの収集や分析という学術的側面に重点が置かれ具体的な課題解決の道筋が示されていないもの、コミュニティの構成員である高齢者のニーズを十分に踏まえていないもの、研究開発を実施するコミュニティの選択や研究開発実施者の構成において論理的必然性が不明確な提案、などが見られました。

全3回の公募を通して、合計17件(うちカテゴリーT5件、カテゴリーU9件、企画調査2件、実行可能性調査1件)の提案を採択し、その分野や研究代表者の専門性も非常に多様なものとなっています。

日本は世界の最長寿国です。今後は研究開発活動をさらに展開し、複雑な高齢社会の課題をコミュニティで解決するためのプロトタイプを創出できるよう、領域アドバイザーやプロジェクト研究代表者および関係者、地域の方々との連携を密にして、不断の努力をして参る所存です。

○「科学技術イノベーション政策のための科学 研究開発プログラム」≪平成23年度発足≫

実施期間:1年半〜3年、研究開発費:1500万〜2000万円/年
題 名 研究代表者名
所属・役職
概 要 研究開発に協力する関与者
STIに向けた政策プロセスへの関心層別関与フレーム設計
加納 圭
滋賀大学 教育学部/京都大学物質−細胞統合システム拠点(iCeMS)
講師/特任講師

科学技術とそれに係る政策を経済的・社会的価値につなげていくためには、取り組むべき課題や社会・国民のニーズを的確に把握し、政策に反映していく必要がある。

本プロジェクトでは、これまで広く漠然と捉えられていた「国民」を、関心の程度などによる複数のセグメントで捉え直し、多様なセグメントの政策参画を促すとともに、セグメントごとのニーズを把握する手法を開発する。その上で、実務家や専門家と連携・協働し、それらのニーズに基づく多様な科学技術イノベーション(STI)政策メニューを作成し、政策担当者などに提示する。

  • 京都大学 学術情報メディアセンター、情報環境機構、教育学研究科、経済学研究科など
  • 帝塚山大学 経営学部
  • 神戸大学 大学院人間発達環境学研究科
  • 大阪大学 大学院医学系研究科
  • 鳥取大学 産学・地域連携推進機構
  • ひょうごサイエンス・クロスオーバーネット
地域科学技術政策を支援する事例ベース推論システムの開発
永田 晃也
九州大学
科学技術イノベーション政策教育研究センター/経済学研究院
センター長/教授

日本では、1980年代前半からさまざまな地域科学技術振興施策が推進され、多くの起業などの成果を生み出してきたが、なお地域を持続的に活性化させる上での課題も指摘されている。

本プロジェクトでは、地域の科学技術政策が直面している課題の解決に資するため、過去の類似事例に基づいて効果的な解決策を推論するシステム(事例ベース推論システム)を開発する。これより地域間において政策に関する有用な経験的知識の共有が促進される。

  • 北陸先端科学技術大学院大学 地域イノベーション教育研究センター
  • 産学連携機構九州
科学技術イノベーション政策の経済成長分析・評価
楡井 誠
一橋大学
イノベーション研究センター
准教授

成熟経済において、科学技術はイノベーションの源泉として機能することが期待されている。一方で、限られた政策資源のもとでは、科学技術部門への投資についても、その経済効果を統合的かつ定量的に測定し、客観的に評価していくことが求められている。

本プロジェクトでは、経済成長論を基本的枠組みとして、大学や公的研究機関への運営費交付金、競争的研究資金、企業の研究開発への補助金、税制、人材養成への補助、国際的な技術移転制度など、科学技術イノベーション政策が国民経済厚生に与える効果を測定するモデルを開発し、効果発現メカニズムを踏まえた政策の立案に寄与することを目指す。

  • 東北大学 大学院経済学研究科
  • 一橋大学 大学院経済学研究科
  • 九州大学 大学院経済学研究院
リソースロジスティクスの可視化に立脚したイノベーション戦略策定支援
松八重 一代
東北大学
大学院工学研究科
准教授

あらゆる科学技術イノベーションは資源・環境制約のもとにその開発と普及が行われる。しかしながら、イノベーションに伴う資源需要構造の変化や拡散は網羅的に見ることが難しく、そのためにステークホルダー間で情報が十分に共有されず、戦略的な政策立案には困難が伴う。

本プロジェクトでは、イノベーションに伴う資源利用の変化とその社会への影響がどれほどなのか、あるいは利用・調達に物理的・経済的障壁が予想される資源について、イノベーションを喚起し、牽引することで需給構造にどのような波及効果が期待できるのかといった「リソースロジスティクス」を可視化する手法を開発する。また、イノベーションに係わるステークホルダーの抽出と、その関与の度合いを定量的に示し、戦略的な政策立案に寄与することを目指す。

  • 東北大学 大学院環境科学研究科
  • 東京大学 大学院新領域創成科学研究科、大学院工学系研究科、公共政策学連携研究部
  • 京都大学 エネルギー科学研究科
  • 独立行政法人 国立環境研究所
  • 独立行政法人 農業環境技術研究所
  • 龍谷大学 理工学部
  • リン資源リサイクル推進協議会
  • 材料戦略委員会
  • 日本鉄鋼協会
  • 日本金属学会
イノベーション政策に資する公共財としての水資源保全とエネルギー利用に関する研究
村山 研一
信州大学
人文学部
教授

水の最適な保全を図りながら小水力発電などの技術導入を促し、グリーンイノベーションを推進するためには、関連する法制度や関与者間の合意形成における課題を明らかにし、総合的な水利マネジメントに取り組む必要がある。

本プロジェクトでは、水を地域の公共財と認識することを前提として、1)水の保全と高度利用を進める為の政策・制度形成の検討、2)水利用技術を導入する際の社会的手続きと導入手法を実例とした社会実装の推進、3)地域社会での対話や利害調整と合意形成に係る課題検討に取り組み、地域の総合的水利マネジメントを確立する。これらの成果を体系化し、地域のイノベーション政策立案に寄与することを目指す。

  • 信州大学 経済学部、工学部、地域共同研究センター、産学官連携推進本部
  • 長野県内の地方公共団体関連部局

○プロジェクト企画調査 ※3

題 名 研究代表者名
所属・役職
医療介護システム等協創の科学技術イノベーション政策のための企画調査
今中 雄一
京都大学 大学院医学研究科
教授
情報工学を用いた研究開発課題の設計支援手法の開発
梶川 裕矢
東京工業大学 大学院イノベーションマネジメント研究科
准教授

※3 プロジェクト企画調査:

構想は優れているものの研究開発プロジェクトとして実施するためにはさらなる具体化が必要と判断されたものについて、年度内で企画を具体化するための調査を行うこととしたもの。

<総評>プログラム総括 森田 朗(学習院大学 法学部 教授)

平成23年度にスタートした「科学技術イノベーション政策のための科学 研究開発プログラム」は、現代社会におけるさまざまな問題の解決に貢献し得る科学技術イノベーションをもたらす政策の選択肢を、「客観的根拠(エビデンス)」に基づき、科学的方法によって策定するための体系的知見を創出することを目的としています。

近年、わが国は少子高齢化、財政危機に加えて、東日本大震災・原発事故などの大きな課題に直面しています。これらに関する課題を適切に把握するとともに、課題解決に向けて取り組んでいくためには、科学技術の力を活用すること、イノベーションを起こすことが必要と考えられます。しかし、これまでは先端的な科学技術の知見が存在しながらも、それを活用して社会的課題の解決に結びつけ、充分な効果を生み出してきたとはいえません。それらの知見を活かして、科学技術イノベーションの創出に結びつけるようなインセンティブが不足していましたし、そのインセンティブを顕在化させるような社会的な仕組み、すなわち制度の形成も充分とはいえません。

第2回目の募集となる今年度は、これらの目的や問題意識を提示するとともに、期待されるプロジェクト像として、(1)明確な現状分析とそれを基礎に論理的に組み立てられた具体的で科学的な提案、(2)現実の政策形成や社会への実装、(3)科学技術イノベーション政策を担う人材育成への貢献、(4)幅広い主体のネットワーク形成に対する寄与、(5)多様な分野の専門家が一体となるような研究開発体制の整備、という観点を強調して提案を募りました。また、より幅広い提案者層に呼びかけることを目的に、他のプログラムとの共催による募集説明会を東京と京都で開催しました。

この結果、大学や研究機関のみならず、独立行政法人、特定非営利活動法人、民間企業などから、43件の応募が寄せられました。本プログラムが期待する研究開発アプローチは必ずしも容易ではありませんが、昨年度と比較すると、目的や対象とする政策が明確で、政策実装の観点が考慮された提案がより多く見受けられました。多様な提案を審査する過程では、「科学技術イノベーション政策」や「政策のための科学」の範疇かといった点について評価が分かれる提案もありましたが、本プログラムの趣旨を広く捉え、特に、類似の研究に対する新規性と政策実装の実現可能性に配慮して選考を行い、最終的に5件を研究開発プロジェクトとして、2件を企画調査として採択しました。総合的な判断の結果、採択に至らなかった提案には、取り上げるテーマは重要と評価されるが計画において具体性を欠いている、取り組む必要性は認められるものの新しいアプローチや研究開発要素に乏しい、あるいは、個別領域における研究としての着想が優れており研究計画自体には魅力を感じるものの、必ずしも本プログラムの目的・趣旨と適合しないといった課題が見受けられました。

「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』推進事業」では、昨年度より「基盤的研究・人材育成拠点整備事業」も本格的に始動しています。また、本プログラムにおいても、昨年度採択とあわせて11件のプロジェクトが展開されることとなり、取り組みやネットワークが広がりつつあります。今年度採択したプロジェクトについても、他の取り組みと連携や情報共有を図りながら進めていくことが必要であり、本プログラムとしても効果的な推進につながるようプロジェクトと協働して取り組んでいきます。

「問題解決型サービス科学研究開発プログラム」≪平成22年度発足≫

実施期間:上限3年、研究開発費:(研究アプローチA)  最大4000万円程度/年
(研究アプローチB1) 最大2000万円程度/年
(研究アプローチB2) 300〜1000万円程度/年
【研究アプローチ】※4
題 名
研究代表者名
所属・役職
概 要 研究開発に協力する関与者
【A】

共創的デザインによる環境変動適応型サービスモデルの構築〜レストランサービスを例として〜

貝原 俊也
神戸大学
大学院システム情報学研究科
教授

モノを介したサービスの需要変動は、使用価値に関わる外部環境とともに、サービス提供の速さや丁寧さなど、提供側の要因にも強く影響を受ける。効率的なサービスの提供は、顧客満足度を向上させるための鍵の1つであり、その実現に向けたサービスモデルを検討する必要がある。

本プロジェクトでは、レストランサービスを事例として、新たな価値創造を目指した、共創的デザインを基本コンセプトとする環境変動適応型サービスモデルを構築する。具体的には、厨房と人員のレイアウトに着目してサービス現場を革新し、新たな価値提供による顧客満足度向上を目指す。その際、変種変量生産が必須の製造業において培われた方法論を応用し、サービス提供における柔軟かつ効率的な共創的レイアウト決定手法を開発する。それを実店舗に導入することで、その有効性を検証する。本プロジェクトの成果を、サービス全般にわたって新たな価値創造プロセスを高度化させるため、有形財の生産に関連する他のサービス業や製造業へ汎化させるべく研究開発を進める。

  • 神戸大学 大学院システム情報学研究科
  • がんこフードサービス株式会社
  • 神戸大学 大学院経営学研究科
  • 大阪大学 大学院工学研究科
  • 青山学院大学 理工学部
  • 大阪ガス株式会社
  • ミラノ工科大学
【A】

文化的な空間における触発型サービスによる価値創造

中小路 久美代
株式会社SRA先端技術研究所
所長

ミュージアムは、日常生活に彩りや癒しを与え、世の中を違った視点で見ることを促し、人と人とをつなげるといった価値を提供するサービスの場である。しかしながら、現状ではそのようなサービスを比較したり、その効果を表現する手法がなく、来場者数といった尺度でしか評価されていない。

本プロジェクトでは、ミュージアムにおける体験を触発型サービスとして捉え、それを記述、評価、促進するためのモデルを構築する。本モデルの構成要素となるのは、来館者が触発されるポイント、学芸員の意図や予測の表現、および、触発された結果の創出と流通のメカニズムである。ミュージアムにおけるワークショップを現場として、情報技術を活用したモデルの構築を行うとともに、触発という現象を観察・分析・展開するフィールドスタディを実施する。

  • 株式会社SRA先端技術研究所
  • 公立はこだて未来大学 情報アーキテクチャ学科
  • 東京大学 大学院教育学研究科
  • 東京大学 大学院総合文化研究科・教養学部 駒場博物館
  • 東京工業大学 精密工学研究所
  • 東京都現代美術館
  • 平塚市 美術館
  • 市立函館博物館
【A】

ITが可能にする新しい社会サービスのデザイン

中島 秀之
公立はこだて未来大学
学長

近年、地方都市では人口減少や高齢化が進み、人の流れとモノの流れが停滞している。この停滞は、都市の経済的、文化的活動の低迷を招く原因の1つとなっている。

本プロジェクトは、画期的な交通システムを投入することで、人とモノの円滑な流れを産み出し、都市の活動を活性させるという課題に取り組む。都市内の全てのバスとタクシーをフルデマンド化することにより、利便性の高い配車サービスの実現を目指す。バスやタクシーの利用実態の調査データに基づくシミュレーションと実車輛を使った実地運行実験を繰り返すことで、人流と物流を段階的に活性化させるサービスを設計し、その有用性を検証する。配車サービス戦略と創発する乗客の振舞いを分析し、それを汎化させることで、サービス科学の研究基盤の構築に取り組む。

  • 公立はこだて未来大学 複雑系知能学科
  • 公立はこだて未来大学 社会連携センター
  • 公立はこだて未来大学 情報アーキテクチャ学科
  • 産業技術総合研究所 サービス工学研究センター
  • 名古屋工業大学 しくみ領域
  • 名古屋工業大学 産業戦略工学専攻/情報工学科
  • 函館タクシー株式会社
  • 函館バス株式会社 バス事業部
  • 特定医療法人高橋病院
  • 函館市 企画部計画推進室 政策推進課
【A】

介護業務における情報活用基盤を用いた介護の質の評価に基づく、新しい「人財教育・評価サービス」の検討・実用化

村井 純
慶應義塾大学
環境情報学部
学部長/教授

介護業務におけるサービスの質を評価する方法は確立されておらず、熟練者の持つ優れた技術を抽出するための客観的な方法がない。そのため、利用者が望む優れたサービス提供の維持ができないという問題が生じている。

本プロジェクトでは、情報活用基盤を用いて介護業務の質を評価し、その評価を基にした新しい「人財教育・評価サービス」を開発し、その実現化を目指す。具体的には、介護者自身の被介護者の状態に関する「気付き」を定量化し、それぞれの介護者が持つ「気付き」の差異を認識できるよう形式知化する。これにより、介護の質に関する定量的エビデンスに基づく、熟練化を支援する研修サービスを社会へ提供する。

  • 慶應義塾大学 環境情報学部
  • 慶應義塾大学 SFC研究所
  • 慶應義塾大学 大学院政策・メディア研究科
  • 公立はこだて未来大学
  • 社会福祉法人こうほうえん
  • 株式会社日本経営戦略人事コンサルティング
【B】

金融サービスにおける企業・従業員・顧客の共創価値測定尺度の開発(*)

戸谷 圭子
同志社大学
大学院ビジネス研究科
准教授

共創価値はサービス科学で最も重要な概念のひとつであるが、共創価値の創造度合いをはかる具体的な評価指標は、いまだ科学的に確立されていない。

本プロジェクトでは、共創価値の定義の明確化と、その測定尺度の開発を目指す。金融サービスという実フィールドを対象とし、顧客、企業、従業員および社会の各ステークホルダーにとっての共創価値を、金銭的価値/知識価値/感情価値に分類して測定し、各価値間、ステークホルダー間の関係性から生じるネットワーク効果も含めた構造を明らかにする。

  • 同志社大学 大学院ビジネス研究科
  • 筑波大学 システム情報系
  • 明治大学 商学部
  • 鳥取大学 工学研究科
  • 群馬大学 社会情報学部
  • 流通経済大学 経済学部
  • 首都大学東京
  • 東京大学
  • 株式会社ふくおかフィナンシャルグループ
  • 株式会社福岡銀行
  • 株式会社親和銀行
  • 株式会社熊本ファミリー銀行

※4 A:「問題解決型研究」:具体的なサービスを対象に、当該サービスに係る問題解決のための技術・方法論などを開発して問題を解決するとともに、得られた技術・方法論が「サービス科学」の研究基盤の構築に貢献することを目的とする研究。

B:「横断型研究」:研究エレメントに焦点を当て、新たな知見を創出し積み上げることで体系化し、「サービス科学」の研究基盤を構築する。それにより将来的に現場のさまざまな問題解決に応用され、サービスの質・効率を高め、新しい価値の創出に貢献することを目的とする研究。

(*)B1(文理融合型)
(**)B2(人文・社会科学型)

<総評>プログラム総括 土居 範久(慶應義塾大学 名誉教授)

「問題解決型サービス科学研究開発プログラム」は、平成22年度に開始されました。本プログラムでは、これまで勘と経験に頼ることの多かったサービスを科学の対象ととらえ、自然科学や人文社会科学の方法論や知見を取り込んだ文理融合的なアプローチによる研究開発を通じて、サービスに関する概念・理論・技術・方法論などを体系的に構築していくことを目指しています。

過去2回の公募によって、9件の研究開発プロジェクトを採択しています。採択されたプロジェクトの研究テーマは、価値共創や日本のサービスのグローバル化に焦点をあてるもの、工学的アプローチによって既存サービスに変化を与えるものなどがあります。また、産業分野としては、ヘルスケア、流通、公共サービス、農業などを対象としています。

本年度の公募では、①ポートフォリオの拡充、特にサービスに関する重要な問題の解決を目指す提案、②サービス科学の研究基盤構築や問題解決を通じた社会的貢献が明らかな提案、③多様性(研究規模、地域、若手・女性)のある提案を期待することを強調しました。

これに対し、全国の大学・研究所・企業などから、69件(A.問題解決型研究54件、B.横断型研究15件)の応募を頂きました。提案の内訳に目を向けると、研究代表者の研究領域では、これまで多く提案があった理工学分野の提案の割合が減少し、社会科学系の提案や環境学、情報学などの総合・複合領域の提案が増加しました。また、理工学分野の研究者をプロジェクトにうまく取り入れた提案が多く見受けられ、サービス科学における分野融合が進んでいるという印象を強く受けました。産業分野では、昨年に引き続きヘルスケア関連の提案が最も多く、この分野への関心の高さがうかがえました。その一方で、今年度は、教育や交通システム、流通、公共サービスに関する提案の割合が増加しており、提案が多様化したとの印象がありました。さらに、本年度の募集で強調した②サービス科学の研究基盤構築や問題解決を通じた社会的貢献が明らかな提案に関して、その貢献が見込める提案が増加したように思えます。このような歓迎すべき状況がある一方で、サービス科学の提案と捉えるには練度が十分ではなく、既存の研究領域の提案として捉えることが適切と思われる提案や、対象とするサービスに関して研究開発体制が十分には検討しきれていないと思われる提案も見受けられました。この点については、ご提案いただく皆様に、公募の主旨をしっかりとご理解いただけるよう改善に努めて参ります。

厳正なる審査の結果、今年度は、A.問題解決型研究4件、B.横断型研究1件を採択しました。採択課題にも、広がりと多様性が反映されました。これまで採択がなかった女性の研究代表者による提案が2件採択されました。また、研究対象となる地域が広がりました。北海道のプロジェクトが採択されたこと、九州地方の銀行や山陰地方の介護施設を調査対象とするプロジェクトなどが採択されたことなどが挙げられます。採択された提案は、産業分野として、交通システム、ヘルスケア、流通、金融、公共サービスを対象としています。各提案は、サービスに関する基礎理論の構築を目指すものから、大規模な実証実験を必要とし、都市への公共サービスとして社会実装を目指すものまで多様性に富むものとなりました。

採択課題が「問題解決型サービス科学研究開発プログラム」のモデルケースとなるように、研究実施者とマネジメントチームのメンバーが一体となってプロジェクトの推進に取り組んで行く所存です。また、「サービス科学」コミュニティの一層の拡充のため、本プログラムの情報発信に努めるとともに、関係各位との議論を通じ「サービス科学」構築のために尽力いたします。

「研究開発成果実装支援プログラム」≪平成19年度発足≫

支援期間:1年〜3年、実装費:最大500〜1000万円/年
実装活動の
名称
実装責任者名
所属・役職
概 要 主たる協働組織
(活動地域)
研究開発成果を得た
公的資金
発達障害の子どもへの早期支援のための「気づき」・診断補助手法の実装
片山 泰一
大阪大学大学院
大阪大学・金沢大学・浜松医科大学・千葉大学・福井大学
連合小児発達学研究科科長

発達障害(特に自閉症スペクトラム障害)の客観的診断指標はない。このことが、家庭における「気づき」の遅れの一因となり、その先の社会的不適応につながる。発達障害の簡便かつ客観的なスクリーニング法の確立とエビデンスの収集は喫緊の課題である。

本活動では、発達障害の早期診断を補助する注視点検出型の次世代診断装置を自治体・医療機関における乳幼児健康診査や診断過程に盛り込み、ユーザビリティ検証と診断予測精度の大規模な検証を行ってスクリーニング法を確立し、事業化・普及の基盤とする。

静岡大学、株式会社JVCケンウッド
(佐賀県、大阪府、静岡県)
JST 産学イノベーション加速事業【先端計測分析技術・機器開発】
学校などにおける犯罪の加害・被害防止のための対人関係能力育成プログラム実装
小泉 令三
福岡教育大学
大学院教育学研究科教職実践講座
教授

「生徒指導上の諸問題」(文部科学省)にあるように、小中学生の暴力行為やいじめが減少せず、また規範意識の低下などがいわれており、非行や犯罪への関与や被害を減少させる必要がある。

本活動では、生活体験の質や量が変化したことによって低下した子どもの社会的能力を、対人関係能力育成プログラムを用いて計画的・意図的に育て、それを基盤として規範行動を高めることによって、小中学校での犯罪の加害や被害を予防し、また児童自立支援施設入所者の問題行動後の矯正を図ることを目指す。

福岡県飯塚市教育委員会、福岡県香春町教育委員会、福岡県および宮崎県内の公立小中学校5校、福岡県立福岡学園(児童自立支援施設)
(福岡県、宮崎県)
JST 戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)「犯罪からの子どもの安全」研究開発領域
優良盲導犬の効率的育成と普及率の向上
鈴木 宏志
帯広畜産大学原虫病研究センター
教授、センター長

日本では1,000頭余りの盲導犬が実働しているが、その需要は5,000頭とも8,000頭ともいわれており、恒常的な供給不足が続いている。日本の盲導犬の普及率は、先進諸国の中では最も低く、その改革が望まれて久しい。

本活動では、盲導犬事業所との協働により、性格関連遺伝子の多型解析による盲導犬適性の解析技術が盲導犬の効率的な育成のために活用し得ることを実証して、制度・体制面の整備を含め、全国の盲導犬事業所にこれら育成技術の利用と普及を促進する。

北海道盲導犬協会
(札幌市)
科学技術振興調整費、厚生労働省 科学研究費補助金
津波堆積物の地球化学的判別による沿岸地域のリスク評価と社会的影響の予測
土屋 範芳
東北大学大学院
環境科学研究科
教授

東北被災地に残された津波堆積物の一部からヒ素・重金属類が溶脱し移動することが明らかとなっている。約1千万トンに達する津波堆積物の適切かつ迅速な処理が必要であり、安全性評価を進めることが求められている。さらに、沿岸域における津波被害の危険リスクを判断する必要がある。

本活動では、行政機関とも緊密に連携し、津波堆積物や河口底泥などに含まれる有害物質の水・海水溶出挙動分析の標準手法を策定する。また、主に東北地方において、新たに開発した地球化学判別手法による歴史津波の浸水域の復元により、津波浸水リスク評価を社会実装する。

独立行政法人産業技術総合研究所
(宮城県を含む日本全域)
JST 戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)東日本大震災対応・緊急 研究開発成果実装支援プログラム
環境負荷の低減に資する持続的農業生産システムの実装
林 正浩
静岡大学イノベーション社会連携推進機構
教授

日本の農業分野における国際競争力の強化が求められている中、耕作放棄地の増加、新規就農者数の伸び悩みなど、農業経営の安定化に向けた抜本的な課題解決策が急がれている。

本活動では、農場廃棄物の他、地域行政機関協力のもと、活動地域周辺から排出される一般廃棄物をA重油に替わる農業生産用再生エネルギーとして活用し、循環型社会に根差した持続可能な農業生産システムの実装を目指す。

静岡大学 農学部附属地域フィールド科学教育研究センター 藤枝フィールド
(静岡県)
科学研究費補助金 基盤研究(C)、産学官連携研究開発助成、ALCA 研究開発課題(探索ステージ)他
分散型エネルギーの利用促進と農山村地域環境ビジネスの創出
両角 和夫
東京農業大学総合研究所
教授

自然環境の悪化と経済の長期不況という地域の当面する社会問題に対処するためには、自然生態系の修復をビジネスによって実現することが必要である。

本活動では、岩手県陸前高田市生出集落において、森林生態系の修復に必要な間伐を促進するため、間伐材で製造した木炭による木炭発電および森林生態系の修復で安定する河川を利用した小水力発電によって、森林の間伐作業および温室での有機野菜栽培に必要な電力を給電。これら事業を、企業のCSRに基づく費用の社会的負担の制度などを活用して、総合的な事業として実現することを目指す。

生出コミュニティ推進協議会、NPO法人いわて銀河系環境ネットワーク、岩手県農業研究センター、独立行政法人岩手県工業技術センター(岩手県陸前高田市生出地区) JST 社会技術研究開発事業 (循環型社会)

<総評>:プログラム総括 冨浦 梓(元 東京工業大学 監事)

今年度は29件(前年度比:88%)の応募があり、その中から、社会技術の特性を考慮しつつ、グリーンイノベーション、ライフイノベーション、安全・安心に関連した課題として、研究開発がほぼ終了しており、目的、方法、効果が明確であるもの6件を採択しました。「分散型エネルギーの利用促進と農山村地域環境ビジネスの創出」、「環境負荷の低減に資する持続的農業生産システムの実装」、「優良盲導犬の効率的育成と普及率の向上」「発達障害の子どもへの早期支援のための「気づき」・診断補助手法の実装」、「津波堆積物の地球化学的判別による沿岸地域のリスク評価と社会的影響の予測」、また、「学校などにおける犯罪の加害・被害防止のための対人関係能力育成プログラム実装」の6件です。いずれのプロジェクトも実装支援の対象となる機関や受益者が明確であり、社会への定着が予想されるものです。

本プログラムは開始後5年を経過しましたが、プログラムの趣旨を理解した提案が増加しています。すなわち、研究者は単に研究開発をするのではなく、研究開発成果の社会的価値を実証し、社会に定着させ、普及の端緒を拓きたいという意志を以て提案する案件が増加しています。実装プログラムは受益者と研究者との共同事業であり、実装にあたっては思わぬ障害に遭遇することがあります。選考にあたっては受益者との組織的連携や障害に対する柔軟な対応体制に十分配慮しているかなども評価することにしています。

本プログラムは、例えば、昨年の東日本大震災で現実に実効を上げたプロジェクトや、社会的に注目を浴びることとなったプロジェクトが数件あることに見られる通り、先見性のあるプロジェクト選択をしてきたと思っています。今後は、採択された実装活動がより効率的に社会に実装されるよう、実装責任者との連携を深めたいと考えています。