JSTトッププレス一覧科学技術振興機構報 第890号 > 別紙1
別紙1

「平成22年度小学校理科教育実態調査」の目的・概要と
学校・教員・児童の経年比較の分析結果(抜粋)

【調査の背景・目的など】

JSTと国立教育政策研究所が平成20年度に共同で実施した「小学校理科教育実態調査」の結果から、理科の指導に苦手意識を持つ小学校教員が少なくないことや観察・実験を行う上での障害として準備・片付けの時間の不足、研修時間の確保ができないことなどが示唆された。現在、小学校教員の資質向上と観察・実験などの充実を図るため「理科支援員配置事業」※1が実施されている。一方、学級担任ではなく理科専科教員が理科を教えている学校も少なくない。そこで、今回これらの施策などの効果を検証し、小学校理科教育での適切な支援策を探るために、小学校で理科を教える学級担任の教員と6年生の児童および学校を対象としたアンケートによる全国調査を実施した。

※1)「理科支援員配置事業」は、国の予算措置により、大学(院)生や退職教員などの有用な外部人材を、理科支援員として小学校5、6年生の理科の授業に配置し活用することで、理科の授業における観察・実験活動の充実および教員の資質向上を図ることを目的として、平成19年度からJSTが実施している施策。

【調査の対象者・回答者】

1.調査対象者

(1)教員

平成22年度を含む過去3年間に「理科支援員」を配置した学校から770校、理科支援員未配置校から446校、計1,216校をそれぞれ無作為に抽出し、対象となった学校の以下の教員を調査対象とした。

@理科主任もしくはそれに相当する教員1名。(学校質問票に回答)

A平成22年度3〜6年生の学級担任として理科を教えている教員最大3名。

平成22年度を含む過去3年間に、理科支援員を活用した経験をもち、平成22年度3〜6年生の学級担任として理科を教えている教員がいる場合は、当該教員を最優先とした。(教員質問票に回答)

(2)児童

全国のすべての公立小学校から無作為抽出された上記対象校における第6学年第1組の児童全員(第1組としたのは無作為性を確保するため。)

2.回答者

集計対象となった有効回答数は、以下の通りであり、依頼した学校の約80%から回答が得られた。

○学校数(項番1(1)@による)   969校

○教員数(項番1(1)Aによる)  2,156名※2

※2)学級担任として理科を教える教員を有効回答とし、教員質問票問13(1)「平成22年度に理科を指導する必要がなかった」と回答した204名を除外した。

○児童数(項番1(2)による)  24,490名※3

※3)25,021名の回答が得られたが、学校質問票が回答されなかった531名は分類から除外し、24,490名を有効回答とした。

【調査方法】

全国の公立小学校から無作為に抽出された調査対象校と所管の教育委員会に、平成23年1月に調査を依頼するとともに、学校・教員・児童の3種類の質問票を送付し、調査対象校からの直接郵送方式により回収した。回答は学校、回答者名とも無記名とした。

【分析方法】

学校及び教員の状況の経年比較(「平成20年度理科教育実態調査」(JST)との比較)、児童の状況の経年比較(「平成15年度小・中学校教育課程実施状況調査」(国立教育政策研究所)との比較)、新学習指導要領における児童の観察・実験に必要な費用などの算出、昨年8月に発表した同調査の「集計結果」についてさらなる分析を進め、理科支援員を活用した教員の意識と取組、理科支援員・理科専科教員配置の有無と児童の理科に対する意識、理科に対する教員の意識及び取組への教員養成・研修の機会の影響を分析した。

なお、本調査に回答した学校の特性として、過去3年間に理科支援員を配置した学校の割合が、全国の割合と比較して高いことから、全国の平均値を算出する際に、理科支援員配置校と未配置校の割合の違いを係数化し、以下に説明する重み付けを行った加重平均値(もしくは割合)を全国の推定値とした。学校、教員、児童の状況に関する全国的な平均値の算出に当たっては、全国で過去3年間に理科支援員を配置した学校とその学校の教員、児童の割合を反映するように、本調査における学校、教員、児童の回答に重み付けをした加重平均値(もしくは割合)を用いることとした。

【分析結果】(抜粋)

1.学校・教員・児童の経年比較

(1)学校予算や備品の整備状況に関する経年比較※4及び小学校における観察・実験用消耗品の経費の試算※5

※4)「平成20年度小学校理科教育実態調査」(JST)の結果と比較しており、平成22年度の本調査では、標本抽出に伴う全国の学校分布とのずれに関して、「重み付け」を行うことで加重平均した平均値(もしくは割合)を全国値とした。

※5)標準的な観察・実験を行うために必要な設備備品費・消耗品費の算出方法は、3社の教科書を参照し、児童が行うことが想定されている観察・実験に関して、実施に必要な標準的な設備備品及び消耗品を特定し、標準的な学校規模に対して必要な経費を計算した。また、全ての設備備品、消耗品を新たに購入する想定ではなく、既に標準的な設備備品や消耗品が整備されていることを前提として一定期間での減価償却、破損を仮定することで1年間あたりの購入量から経費を計算した。耐久年数は、10年を基本とし、最長を20年とした。また、購入量の基礎となる標準的な学校の規模は、各学年2学級、各学級32人の児童、8班での実施を想定している。

○学校当たりや児童一人当たりの設備備品費は増加しているが、設備備品費の予算額が0円の学校は、約4割と依然高い割合である。

○標準的な観察・実験を行うために必要な設備備品費は約23.9万円※5となった。本調査における設備備品費の平均額は11.2万円であり、実際の運用では保有していないか、耐久年数を超えて使ったり、少ない個数で授業を実施したりしている等が考えられる。

表1 設備備品費の学校予算額の経年比較

年 度 平均値 最小値 最大値 有効回答数 推定母集団
(重みの合計)
H20 8.7万円 0万円 400万円 299 -
H22 11.2万円 0万円 256万円 864 19,577

表2 設備備品費の学校予算額の合計を児童数の合計(3〜6学年)で割った値の経年比較

年 度 平均値 予算額
(H22は重み付け後)
児童数
(H22は重み付け後)
有効回答数 推定母集団
(重みの合計)
H20 391円 26百万円 65千人 291 -
H22 516円 2,108百万円 4,081千人 834 18,877
図1

図1 当該年度の学校予算(公費)における理科全体の設備備品費の金額の経年比較

○学校当たりや児童一人当たりの消耗品費はわずかに増加しているが、消耗品費の予算額が5万円未満の学校は、約4割と依然高い割合である。

○標準的な観察・実験を行うために必要な消耗品費全体の試算値※5は約35.6万円である。本調査における消耗品費の平均額は8.0万円であり、実際の運用では代用品を用いる、できるだけ安く購入する、実験回数を減らしている、耐久年数を超えたり不足したりしていてもすぐには購入できない等が考えられる。

表3 消耗品費の学校予算額の経年比較

年 度 平均値 最小値 最大値 有効回答数 推定母集団
(重みの合計)
H20 7.1万円 0万円 82万円 307 -
H22 8.0万円 0万円 151万円 884 19,950

表4 消耗品費の学校予算額の合計を児童数の合計(3〜6学年)で割った値の経年比較

年 度 平均値 予算額
(H22は重み付け後)
児童数
(H22は重み付け後)
有効回答数 推定母集団
(重みの合計)
H20 316円 21百万円 66千人 298 -
H22 367円 1,532百万円 4,177千人 855 19,266
図2

図2 当該年度の学校予算(公費)における理科全体の消耗品費の金額の経年比較

○新学習指導要領における実験機器等については、調査した14品目で全体的に整備の状況が進んでいるといえる。

図3

図3 新学習指導要領で整備が期待される実験機器等の整備状況の経年比較

(2)教員の状況の経年比較※6

※6)「平成20年度小学校理科教育実態調査」(JST)の結果と比較しており、平成22年度の本調査では、標本抽出に伴う全国の学校分布とのずれに関して、「重み付け」を行うことで加重平均した平均値(もしくは割合)を全国値とし、概ね5パーセントポイント以上の差を増加・減少の変化の傾向として解釈した。

○理科の授業において、児童による観察や実験を行う頻度について、平成20年度と22年度の教員の調査結果を比較すると、「ほぼ毎時間」と回答した割合が増加している。

図4

図4 「理科授業では、児童による観察や実験を概ねどの程度行っているか」についての経年比較

○理科の観察や実験を行う際に障害となっていることについて、平成20年度と22年度の教員の調査結果を比較すると、「設備備品の不足」、「消耗品の不足」、「授業時間の不足」を挙げる割合が減少している。

図5

図5 「理科の観察や実験を行うにあたって、障害となっていること」についての経年比較

○理科全般の内容の指導に対する意識について、平成20年度と22年度の教員の調査結果を比較すると、教職経験年数が「5年未満」の教員について、「得意」、「やや得意」と肯定的に回答した割合が増加している。

図6

図6 平成20年度小理調査における教職経験年数別にみた
「理科全般の内容の指導」に対する意識

図7

図7 平成22年度小理調査における教職経験年数別にみた
「理科全般の内容の指導」に対する意識

(3)児童の状況の経年比較※7

※7)「平成15年度小・中学校教育課程実施状況調査」(国立教育政策研究所)の結果と比較しており、平成22年度の本調査では、標本抽出に伴う全国の学校分布とのずれに関して、「重み付け」を行うことで加重平均した平均値(もしくは割合)を全国値とし、概ね5パーセントポイント以上の差を増加・減少の変化の傾向として解釈した。

○平成15年度と平成22年度の児童の調査結果を比較すると、「理科の勉強が大切だ」「理科を勉強すれば私のふだんの生活や社会に出て役に立つ」について「そう思う」と回答した児童の割合が増加しており、さらに、「理科の勉強で観察や実験をすることが好きか」について、「好きだ」と回答した児童の割合が増加している。

図8

図8 「理科の勉強が大切だ」に対する意識の経年比較

図9

図9 「理科を勉強すれば、私のふだんの生活や社会に出て役に立つ」に対する意識の経年比較

図10

図10 「理科の勉強で、観察や実験をすることが好きか」に対する意識の経年比較