<用語解説>

注1)同位体効果
 物質中の原子を、原子番号は同じで質量数のことなる原子核で置き換えたときに生ずる効果。従来の超伝導体の場合には、格子振動のエネルギー変化が反映されて、原子の質量の1/2乗に半比例して超伝導転移温度が低下する現象を指す。一九五〇年に発見され、BCS理論の完成に大きな影響を与えた。
注2)BCS理論
 一九五七年にバーディーン、クーパー、シュリーファー博士らによって提唱された超伝導の微視的理論。電子の間に格子振動を媒介とする引力が働き、電子対が形成されることで超伝導状態が実現することを示した。これにより、三博士は一九七二年にノーベル物理学賞を受賞している。
注3)強電子相関
 電子はマイナスの電荷を持った粒子であるため、電気的な反発力によりお互いの個性を主張する電子相関と呼ばれる性質をもつが、これが極端になった強電子相関の系では、お互いの運動状態を束縛しあって動きの取れなくなったモット絶縁体と呼ばれる状態になったりする。高温超伝導を示す銅酸化物は、強電子相関を示す物質に分類される。
注4)Bi2Sr2CaCu2Oy 高温超伝導体
 セ氏零下約一八〇度の超伝導転移温度を示す高温超伝導物質。図1に示すような結晶構造をもち、高温超伝導は2次元の正方格子状に並ぶ銅と酸素のネットワーク面において電子対が作られることによって発現する。高温超伝導のメカニズム解明を解明するために、この電子対が形成される原因を突き止める研究が活発に行われている。
注5)シンクロトロン軌道放射光施設
 光速に近い速度で運動している電子を、磁場などによって急激に進行方向を変えると、電子の運動エネルギーの一部が非常に強力な光となって放出される。これをシンクロトロン軌道放射光と呼び、これを発生させて研究を行える施設が世界に二十余りある。今回の実験は、米国ローレンスバークレー国立研究所の応用光源施設で図3に示すような装置を使用した。

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