JST(理事長 中村 道治)は、中国科学技術部(MOST)注1)と共同で「地震防災」に関する2件の研究交流課題および「気候変動」に関する4件の研究交流課題を支援することを決定しました。この支援は、戦略的国際科学技術協力推進事業注2)「日本-中国研究交流」注3)の一環として行われるものです。
「地震防災」に関して支援を決定した課題は次の通りです。
(1)「巨大地震災害時における効果的災害対応を実現するための日中比較研究交流」
(研究代表者:京都大学 防災研究所 巨大災害研究センター 林 春男 教授、中国地震局 中国地震応急救援センター チュ・グゥォシェン 副センター長)
本研究交流は、近年に発生した地震災害での対応事例(東日本大震災や四川地震など)を日中間で比較研究することにより、災害時における効果的な危機管理・災害情報システムおよび災害対応計画のあり方を解明することを目指すものです。
(2)「龍門山断層帯北東部とその周辺断層の活動史と地震発生危険度に関する研究」
(研究代表者:東京大学 大学院理学系研究科 池田 安隆 准教授、中国地震局 地質研究所 マー・シォンリー 副所長)
本研究交流は、2008年の地震で割れ残った中国龍門山断層帯とその周辺における現在、および過去の地殻活動を調査することにより、活動度は低くても一度破壊が始まると大地震を起こす可能性のある長大な断層について、その地震危険度を解明することを目指すものです。
「気候変動」に関して支援を決定した課題は次の通りです。
(1)「気候変動に対する海洋生態系応答機構の解明」
(研究代表者:長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科 石松 惇 教授、厦門大学 海洋環境科学国家重点実験室 ガオ・クンシャン 教授)
本研究交流は、南シナ海と東シナ海における海洋気候変動が、その海域における生態系や生物生産性に与える影響を解明することを目指すものです。
(2)「水田から発生する温室効果ガスの削減技術の開発とその削減ポテンシャルの評価」
(研究代表者:農業環境技術研究所 八木 一行 研究コーディネータ、中国科学院 南京土壌研究所 土壌利用・環境変化研究センター シュ・ファ 教授)
本研究交流は、水田からの温室効果ガス発生量を削減するための管理技術を開発し、農業における温室効果ガス緩和策の確立を目指すものです。
(3)「SNPマーカー選抜による耐乾性ナタネの作出」
(研究代表者:東北大学 大学院農学研究科 西尾 剛 教授、中国農業科学院 油糧作物研究所 油料作物生物学国家重点実験室 ジャン・シュエクン 教授)
本研究交流は、乾燥地や半乾燥地でも栽培できる乾燥耐性のナタネを、遺伝子組換え技術を用いるのではなく、DNA分析技術とゲノム情報を利用して自然変異や突然変異により作出することを目指すものです。
(4)「吸収性エアロゾル(EC)と散乱性エアロゾル(OC、金属成分、イオン成分)の分布と化学成分の変化による影響の解明」
(研究代表者:東京農工大学 大学院農学研究院 畠山 史郎 教授、中国環境科学研究院 大気環境研究所 ムン・ファン 研究員)
本研究交流は、黒色炭素のような「太陽光を吸収し温暖化に寄与するエアロゾル」と、そのほかの「光散乱性で寒冷化に寄与するエアロゾル」の化学成分を測定し、エアロゾルが長距離輸送で気候変動に与える影響の解明を目指すものです。
今回の研究交流課題の「地震防災」に関する募集では23件、「気候変動」に関する募集では26件の応募があり、これらの応募課題を日本側および中国側の外部専門家により評価しました。JSTとMOSTはその結果をもとに協議を行い、研究内容の優位性や交流計画の有効性などの観点から、日本と中国がともに支援すべきとして合意した「地震防災」に関する2件および「気候変動」に関する4件を支援課題として決定しました。研究期間は支援開始から3年間を予定しています。