JSTトッププレス一覧科学技術振興機構報 第847号別紙2 > 研究領域:「エネルギー高効率利用のための相界面科学」
別紙2

平成23年度(第2期) 新規採択研究代表者・研究者および研究課題の概要

CREST

氏名 所属機関 役職 課題名 課題概要
川田 達也 東北大学 大学院環境科学研究科 教授 実環境計測に基づく高温電極の界面領域エンジニアリング  固体酸化物形燃料電池(SOFC)はエネルギー安定供給と低炭素化とを両立させるシステムです。本格的実用化の鍵となるのが電極界面の最適化ですが、複雑な界面現象の素過程を把握することは困難でした。そこで本研究では、界面領域をナノ、ミクロ、マクロのマルチスケールで捉え、それぞれの挙動を実環境下もしくはそれに近い環境で測定する計測法を開発・整備・統合し、界面領域設計のエンジニアリングを可能にすることを目指します。
古山 通久 九州大学 稲盛フロンティア研究センター 教授 固体酸化物形燃料電池電極の材料・構造革新のためのマルチスケール連成解析基盤  固体酸化物形燃料電池の高効率化のためには、電池内の反応・輸送現象に伴って生じる不可逆的な損失の低減が重要です。本研究では、時間・空間スケールの異なる複数のシミュレーション技術を連係するとともに実験計測と協働することで、電極の三相界面における現象を解明し、その微構造制御に基づく高活性化に挑戦します。化学系・機械系・材料系の多様な知識を集積することにより、材料と構造の両面から固体酸化物形燃料電池の電極の設計革新を目指します。
高田 保之 九州大学 大学院工学研究院 教授 固気液相界面メタフルイディクス  気液相変化や吸脱着など固気液相界面における熱物質移動の素過程はエネルギーシステムの性能を大きく左右します。本研究では、ナノ構造がもたらす機能をマクロな流体現象へ積極的に利用することで既存性能の超越を目指す新しい学理(メタフルイディクス)を提起します。濡れ性、表面粗さ、空隙率など従来のマクロスケールの指標を超越した複合構造の最適設計によって飛躍的に高効率な熱物質移動界面を創製します。
高柳 邦夫 東京工業大学 大学院理工学研究科 教授 ナノとマクロの相界面と物質移動ナノサイクル  ナノ構造とマクロ構造がコンタクトしたNano−in−Macro相界面での物質移動を研究します。エネルギーや環境に重要とされているリチウムイオン電池やナノ粒子触媒などは、互いに接合した異相間をイオンや電荷が移動しています。ナノとマクロ間には特殊な相界面が創られ、イオン・電荷・組成などの物質移動ナノサイクルを制御します。本研究では、エネルギー高効率利用に資するため、世界最高分解能を持つ0.5Å分解能収差補正電子顕微鏡法を活用して、これらの物質移動ナノサイクルを明らかにします。
陳 明偉 東北大学
原子分子材料科学高等研究機構
教授 界面科学に基づく次世代エネルギーへのナノポーラス複合材料開発  本研究では、従来のキャパシタの持つ高い出力密度に匹敵し、かつ、既存のリチウム2次電池を凌駕するエネルギー密度を持った、ナノポーラス複合金属を基軸にした次世代エネルギーデバイスを創出します。エネルギーデバイスは、ナノ構造やナノ組織の表面・界面を通じて機能が発揮されるため、高性能電子顕微鏡、ラマン分光法、第一原理計算、分子動力学法の視点から、界面で原子・分子レベルでの現象を明らかにし、さらなる発見や改良に結びつけます。

(五十音順に掲載)

<総評> 研究総括:笠木 伸英(東京大学 大学院工学系研究科 教授)
副研究総括:橋本 和仁(東京大学 大学院工学系研究科 教授)

本研究領域は、豊かな持続性社会の実現に向けて、エネルギー利用の飛躍的な高効率化を実現するため、エネルギー変換・輸送に関わる相界面現象の解明や高機能相界面の創成などの基盤的科学技術の創出を目的としています。今年度は119件の応募があり、10名の領域アドバイザー、9名の外部評価者の協力を得て書類選考を進め、11件の面接選考を経て、最終的に5件の研究提案を採択しました。

本研究領域の目標を着実に達成するため、特に以下を重要視しました。

今回の研究提案を見ると、研究内容自体は物理、化学、材料学、工学の基礎研究として優れたものが多数ありましたが、残念ながら、エネルギーの高効率利用への量的貢献も含めた挑戦的な提案、相界面に関わる根源的な基礎課題を抽出して飛躍的な効率向上を展望する提案、そして分析、解析だけでなく新たな相界面を創成することを目標に掲げた提案は多くありませんでした。また、異なる分野間の協働によって新たな学術と技術の創成という困難な課題を達成しようとする共同研究チームからの提案も多くはありませんでした。こうした観点から、惜しくも選考に漏れた提案が多くありました。来年度の募集では、本研究領域の意義と目的を念頭に十分練られた計画を含む、妥当性と説得力のある研究提案を期待します。