JST(理事長 中村 道治)は、スペイン科学・イノベーション省(MICINN)注1)と共同で「環境への挑戦のためのナノテクノロジー及び新材料」に関する5件の研究交流課題を支援することを決定しました。この支援は、戦略的国際科学技術協力推進事業注2)「日本-スペイン研究交流」注3)の一環として行われるものです。支援を決定した課題は次の通りです。
(1)「高信頼性とコスト競争力を兼ね備えた膜利用下水再生処理システム構築のための光触媒ナノ複合膜の新規開発」
(研究代表者:北海道大学 大学院工学研究科 岡部 聡 教授、科学研究高等評議会 触媒・石油化学部門 マルコス・フェルナンデス・ガルシア 教授)
本研究交流は、高機能で低コストの光触媒ナノ複合膜を新規開発し、膜によって、下水再生処理水のさらなる用途拡大を目指すものです。
(2)「イオンビーム分析技術を用いた先進電極材料の評価と次世代リチウムイオン電池のための電極材料の開発」
(研究代表者:光産業創成大学院大学 加藤 義章 学長、マドリード工科大学 核融合研究所 マヌエル・ペルラド 教授)
本研究交流は、イオンビーム分析技術を利用したリチウム電池のための新しい電極材料の評価の実現を目指すものです。
(3)「非対称型ハイブリッドスーパーキャパシタのための特異なスーパー多孔質炭素(カーボンアロイ)」
(研究代表者:東北大学 多元物質科学研究所 京谷 隆 教授、アリカンテ大学 無機化学部門 材料研究所 ディエゴ・カツォーラ・アモロス 教授)
本研究交流は、特異な多孔質炭素を合成し、正極と負極の両極が炭素から成る高性能なキャパシタを開発することを目指すものです。
(4)「溶液プロセスによる高効率太陽電池への応用に向けた新規ナノ結晶/ポリマーハイブリッド材料の開発」
(研究代表者:東京大学 大学院工学系研究科 但馬 敬介 准教授、フォトニック科学研究所 ゲラシモス・コンスタンタトス グループリーダー・准教授)
本研究交流は、溶液プロセスによって作成した有機薄膜太陽電池と無機ナノ結晶を組み合わせることにより、高効率な太陽電池を実現することを目指すものです。
(5)「熱電ユビキタス化へ向けたナノ磁気構造を用いる薄膜熱電変換素子の開発」
(研究代表者:日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター 前川 禎通 センター長、サラゴザ大学 ナノサイエンス研究所 リカルド・イバッラ・ガルシア 教授)
本研究交流は、スピンゼーベック効果を開発し、さらにそれを用いて革新的な電熱デバイス開発につながる熱電素子を薄膜化することを目指すものです。
今回の研究交流課題の募集では16件の応募があり、これらの応募課題を日本側およびスペイン側の外部専門家により評価しました。JSTとMICINNはその結果をもとに協議を行い、研究内容の優位性や交流計画の有効性などの観点から、日本とスペインがともに支援すべきと合意した5件を支援課題として決定しました。日本側は本年12月、スペイン側は平成24年1月に支援を開始し、研究期間は支援開始から約3年間を予定しています。