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別紙1

A−STEP「本格研究開発ステージ 実用化挑戦タイプ(中小・ベンチャー開発/創薬開発/委託開発)」
平成23年度採択課題 一覧

中小・ベンチャー開発(採択課題13件)

【情報通信分野(2件)】

課題名 新技術の
代表研究者
開発実施企業 新技術の内容
半導体デバイス3次元TCADシステム 明治大学 理工学部 情報科学科
教授
冨澤 一隆
アドバンスソフト 株式会社  本新技術は、第1原理計算、バリスティック輸送解析、パワートランジスタ解析などを可能とするデバイスシミュレータおよびプロセスシミュレータを統合する半導体デバイス向けの3次元TCADシステムである。LSIの更なる微細化に伴い、量子輸送効果の考慮、原子分子レベルでの挙動解析など従来のTCADでは対応できない課題を解決する3次元TCADシステムが求められている。
 本新技術では、機能、計算速度、ロバスト性の優位に加え、次世代素子を開発するユーザの評価をフィードバックすることにより、超微細素子やパワートランジスタのデバイス設計、プロセス設計に適した使い易いTCADシステムの提供が期待される。
UWB通信による位置計測システム 電気通信大学 大学院情報理工学研究科
教授
中嶋 信生
株式会社 日本ジー・アイ・ティー  本新技術は、UWB(Ultra Wide Band、超広帯域無線)通信による位置計測システムに関するものである。従来の屋外でのGPSによる位置計測に対し、屋内では、より高精度・高感度な位置計測技術の実用化が求められていた。
 本新技術では、UWB受信信号成分を抽出する新規アルゴリズムにより、屋内特有のクラッタ(壁や構造物からの反射波)を除去し、ノイズに埋もれた信号を浮かび上がらせることにより、送信機と受信機間の距離の高精度な計測が可能となる。上記アルゴリズムを含む送受信機とRFタグ(無線ICタグ)からなる位置計測システムを実証することで、倉庫、工場のみならず、病院や学校での幅広い応用が期待される。

【装置・デバイス分野(3件)】

課題名 新技術の
代表研究者
開発実施企業 新技術の内容
電子顕微鏡用無帯電位相板 自然科学研究機構 生理学研究所
特任教授
永山 國昭
テラベース 株式会社  本新技術は、染色などの前処理を行わずに生体材料を観察する際に使われる透過型電子顕微鏡用位相板の長寿命化に関するものである。従来から、顕微鏡内で電子線散乱波に90度の位相差をつけて結像させる為のゼルニケ位相板を光路に配置すると、無染色試料でも高コントラストな位相差像を取得できることが知られていた。しかしながら対物絞り部位に設置されている従来の位相板は、試料からの汚染を受けやすくその寿命は約10時間と短い欠点があった。
 本新技術では、位相差板の構造と製造プロセスを改善し、対物絞りホルダーとの一体化を図ることによる帯電防止や、それによる汚染軽減により10倍以上の位相板寿命を実現するものである。この位相板は従来の透過型電子顕微鏡にも適用できるため、有機物や生物の凍結試料を高コントラストな位相差像として高分解能に観察する手法として広めることが期待される。
ユニバーサル視差全自動3D撮影システム 東京工業大学 精密工学研究所 知能化工学部門
准教授
張 暁林
Bi2−Vision 株式会社  本新技術は、人間の眼に優しい3D映像の撮影を、手動キャリブレーションを一切必要とせずに実現する全自動3D撮影システムである。これまでの3D撮影装置は、ズーム・フォーカスや撮影位置・姿勢に合わせてキャリブレーションを必要とし、そのため機器も高価なものとなっている。
 本新技術では、二つのカメラの映像が人間の両眼に自然投影された映像と同じになるような制御方式を採用し、必要なカメラ制御を自動的に行うことができるため、長時間見ても疲れない3Dコンテンツの安価な制作を可能とする撮影システムが期待される。
コンパクト排熱回収熱交換器 東京大学 生産技術研究所
教授
鹿園 直毅
有限会社 和氣製作所  本新技術は、安価でコンパクトな排熱回収熱交換器の開発を可能にするものである。従来の熱交換器は、熱伝導率が高いアルミや銅などのフィンによる伝熱面積増大で伝熱特性を向上させていたが、伝熱特性の向上と共に空気抵抗も増大し、大きなロスが生じていた。また、潜熱回収では、熱伝導率の低いステンレスがフィンに用いられ、そこに凝縮水が付着して目詰まりするなどの課題があった。
 本新技術では、フィンレス熱交換器技術と斜交波状伝熱面技術を組み合わせることで、ステンレスを用いても通風抵抗と凝縮水付着を減少しながら伝熱を促進するため、排熱回収熱交換器の小型化、低コスト化が図れ、燃料電池などの装置への展開が期待される。

【有機化学分野(1件)】

課題名 新技術の
代表研究者
開発実施企業 新技術の内容
流通温度管理認証用センサーシール 東京農工大学 大学院連合農学研究科
教授
千葉 一裕
株式会社 堀内電機製作所  本新技術は、食品・医薬品などの冷凍・冷蔵の低温物流において、「荷主から届け先までの温度管理された状態履歴」を目視で確認できるセンサーシールの開発に関するものである。従来技術では困難であった、常温保存から低温監視状態へ自動的にスイッチオンする機能、さらに履歴が最後まで残る機能や子供が誤食しても問題ない安全性の確保などを、容易にしかも高い信頼性を持って実現するものである。
 本新技術では、油脂の結晶化現象を活用し、設定温度以上で内部構造が不可逆的に変化して外観の色が変わる、安価で特殊なエマルションの開発で可能としており、今後の低温物流への幅広い普及が期待される。

【アグリ・バイオ分野(1件)】

課題名 新技術の
代表研究者
開発実施企業 新技術の内容
医療用SPFブタ生産技術 東邦大学 医学部 薬理学講座
教授
杉山 篤
富士マイクラ 株式会社  本新技術は、超小型実験用ブタ育種とそれを利用した医療モデル動物の創製に関するものである。従来、実験動物として小型サルやビーグル犬が用いられてきたが、近年では循環器系などに人に近い構造の臓器が多いという観点からも、ブタを実験動物とする流れがあり、実験動物へ特化した、生後6ヶ月で10kg以下とより小型で安全性試験にも利用できる種を求める声は大きい。
 本新技術では、形態安定が見られる特に小型の種「マイクロミニピッグ」を用い、無菌飼育による実験動物化を進めるものである。併せて、実験動物の機能を確認するため催不整脈モデルを作成しその規格を制定する。これにより広範囲に実験動物として利用できる中型哺乳類のひとつとして超小型ブタの利用を即し、薬物性致死性不整脈発生スクリーニングにも適用できることが期待される。

【医療技術分野(2件)】

課題名 新技術の
代表研究者
開発実施企業 新技術の内容
網羅的ゲノム解析に基づく抗EGFR抗体薬治療効果予測診断キット 国立がん研究センター 東病院
臨床開発センター長
大津 敦
G&Gサイエンス 株式会社  本新技術は、大規模塩基解析方法を用いて、網羅的遺伝子解析データから新しいバイオマーカーを特定し、抗EGFR抗体薬の治療効果を予測可能な診断薬を開発するものである。従来から用いられているKRAS遺伝子変異検査は、抗EGFR抗体の治療抵抗性の一部を予測することは可能であったが、同療法の無効例の多くは予測不可能であった。患者のQOL向上および医療経済学的な観点から、より高精度で予測可能な新しいバイオマーカーが求められていた。
 本技術では、臨床背景の確かな検体を用いた網羅的な遺伝子解析により、予測精度の高いバイオマーカーを得る。これらのバイオマーカーを用いた体外診断薬用医薬品を開発することにより、従来より高い精度で抗EGFR抗体薬の治療効果を予測し、患者のQOL向上に貢献することが期待される。
グルコースイメージングによるガン早期診断薬 弘前大学 大学院医学研究科
准教授
山田 勝也
株式会社 ペプチド研究所  本新技術は、蛍光標識ブドウ糖(グルコース)誘導体を用いた癌診断のイメージング技術に関するものである。従来、癌の有力な画像診断法として放射性標識グルコースを利用したPET(陽電子断層法)が用いられているが、正常細胞に取り込まれるグルコースの存在により微小な癌の早期発見が困難なことや、個々の癌細胞の違いを可視化できないこと、さらに炎症を起こした正常細胞との識別力も低いことから、腫瘍細胞と正常細胞を明確に識別し、微小な癌の悪性度を正確に可視化する方法が求められていた。
 本新技術では、新規に蛍光グルコース誘導体を合成し、体外に摘出した生検標本に適用することで、癌細胞の悪性度を明確に可視化することが可能となり、癌の早期発見、擬陽性診断の回避、悪性度の診断精度などの癌の病理診断法を飛躍的に向上させることが期待される。

【創薬分野(4件)】

課題名 新技術の
代表研究者
開発実施企業 新技術の内容
アナフィラトキシン阻害ペプチドを用いた敗血症治療薬 名古屋市立大学 大学院医学研究科
教授
岡田 則子
株式会社 蛋白科学研究所  本新技術は、血流中に細菌やその毒素が拡がることにより生ずる重篤な全身性炎症反応である敗血症の治療薬に関するものである。従来、敗血症の治療は抗菌薬の投与や、血液透析や血漿交換などの支持療法が行われてきたが、重症化した場合の死亡率は高く新たな治療薬が求められていた。
 本新技術では、敗血症の重篤な病態の要因であるC5aアナフィラトキシンに対して強い阻害作用を持つペプチドを開発することにより、全身性炎症反応を抑制する治療法を提供することが可能となる。
 本新技術によって、重篤な敗血症患者の救命に寄与するとともに患者家族の看病などの負担を軽減することが期待される。
微生物由来低分子化合物を用いた脳梗塞治療薬 東京農工大学 大学院農学研究院
教授
蓮見 惠司
株式会社 ティムス  本新技術は、急性期の脳梗塞治療薬に関するものである。従来、超急性期の脳梗塞治療には、血栓溶解酵素製剤が用いられてきたが、その使用が推奨される症例は、発症から3時間以内に限定されていた。このため、治療可能時間のより長い薬剤を開発することが求められていた。
 本新技術では、抗炎症作用と血栓溶解促進作用を併せもつ微生物由来の新規低分子化合物を利用することにより、治療可能時間を延長する可能性がある。本化合物を医薬品として開発することにより、これまでよりはるかに多くの脳梗塞患者の治療が可能となると期待される。
抗神経炎症作用を標的とするALS用薬 東海大学 医学部
教授
池田 穰衛
株式会社 ニュージェン・ファーマ  本新技術は、新規低分子化合物による筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬に関するものである。ALSは原因不明の運動神経変性疾患で、根治療法はなく、有効な治療薬・治療法の開発が求められている。
 本新技術では、新規アシルアミノイミダゾール化合物の生理活性として、酸化ストレスによる細胞死に対する選択的な抑制効果および疾病発症しているALSマウスでの経口投与試験で顕著な運動機能保持と神経炎症抑制効果を確認し、ALS治療に繋がる可能性を見いだした。ALSは難病指定疾患で患者数が少なく、市場も限られており、新規治療薬開発には難しい現況にあるが、本新技術により患者とその家族の肉体的・精神的・経済的負担と医療保険費の軽減、生活の質の向上が期待できる。
がんワクチン機能を有する遺伝子医薬 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科
教授
公文 裕巳
桃太郎源 株式会社  本新技術は、岡山大学で発見された新規がん治療遺伝子(REIC/Dkk−3)を発現するアデノウイルス(Ad−REIC)製剤として、固形がんの腫瘍局所に投与し治癒を図る『自己がんワクチン化療法』に関するものである。
 遺伝子治療は既存療法では制御不能ながん克服のブレークスルーを実現するイノベーションとして期待されており、効果と安全性の高い遺伝子医薬の開発が望まれている。
 本新技術では、すでに岡山大学病院で臨床研究が開始されているAd−REIC製剤の1/10のウイルスベクター量で同等の効果を発揮する新規製剤を創出するものであり、がん細胞の選択的細胞死と抗がん免疫を活性化する新しいタイプのがんワクチンの開発として期待される。

創薬開発(採択課題1件)

【創薬分野(1件)】

課題名 新技術の
代表研究者
開発実施企業 新技術の内容
組換えHGF蛋白質による脊髄損傷治療薬 慶應義塾大学 医学部 整形外科学教室
専任講師
中村 雅也
クリングルファーマ 株式会社  本新技術は、積極的な治療法のない脊髄損傷に対する治療薬の開発に関するものである。従来、脊髄損傷の治療は急性炎症に対する対症療法、損傷部位の外科的修復、あるいはリハビリ療法を中心に行われてきたが、患者の運動機能の回復は極めて限定的である。従って、損傷および二次性の炎症からの保護や、軸索の進展による脊髄神経の再生などを促す根本的な治療薬の開発が強く求められている。
 本新技術では、神経の保護・再生を促す組換えHGF蛋白質を有効成分とする脊髄損傷治療薬を開発することによって、脊髄損傷に対する有効な治療法を提供することが可能となる。本技術によって、患者の運動機能を回復させ生活の質(QOL)を改善させると共に、さらには介護者の負担を軽減して、社会福祉・医療経済に大きく貢献することが期待される。

委託開発(採択課題3件)

【アグリ・バイオ分野(1件)】

課題名 新技術の
代表研究者
開発実施企業 新技術の内容
遺伝子組換え鶏技術により生産する貧血治療薬 名古屋大学 大学院工学研究科 化学・生物工学専攻
教授
飯島 信司
株式会社 カネカ  本新技術は、遺伝子組換え鶏技術を用いて、腎性貧血治療薬として用いるエリスロポエチン(EPO)を高効率で生産するものである。従来の動物細胞培養技術では、EPOのような複雑な構造を持つたんぱく質は生産困難であった。また、遺伝子組換え動物による医薬用たんぱく質の生産は、ほ乳類では例があるが、操作性およびコストの点で問題があった。そのため、遺伝子組換え鶏のような生産効率の良い医薬用たんぱく質生産技術が求められていた。
 本新技術では、遺伝子組換え鶏の卵白中にEPOを高発現させる。生産するEPOをPEG化し、造血効果が長時間持続し、かつ副作用が少ない貧血治療薬として、まずは小動物に適用する。将来は、新しいコンセプトの医薬用たんぱく質生産技術として、ヒトへの展開が期待される。

【創薬分野(2件)】

課題名 新技術の
代表研究者
開発実施企業 新技術の内容
組換えヒト肝細胞増殖因子を用いた急性肝不全治療薬 鹿児島大学 大学院
医歯学総合研究科
教授・研究科長
坪内 博仁
エーザイ 株式会社  本新技術は、ヒト肝細胞増殖因子を成分とする急性肝不全に対する新薬開発に関するものである。従来、急性肝不全治療には血漿交換療法を主体とした内科的肝補助療法が行われてきたが、その治療成績は未だ充分ではない。一方、肝移植法の有効性は知られているが、これを多くの急性肝不全の患者に実施することには限界があり、新たな内科的治療薬の開発が緊急の課題として求められている。
 本新技術では、本邦で発見されたヒト肝細胞増殖因子を成分とした新薬を開発することにより、急性肝不全治療に新たな医薬を提供し、患者の健康回復に貢献することが期待される。
テーラーメイド型がんペプチドワクチン 久留米大学 先端癌治療研究センター
教授
野口 正典
富士フイルム 株式会社  本新技術は、多数の腫瘍抗原ペプチドから各患者に最適な抗原ペプチドを選択して投与するテーラーメイド型の癌ペプチドワクチンに関するものである。進行癌の患者に対する治療は化学療法が中心であるが、効果の持続性や治療薬に対する抵抗性の発現などの面から、新たな治療法の開発が求められていた。
 本新技術では、すでに初期治療抵抗性患者を対象に第1相臨床試験や継続投与試験により安全性が確認され、化学療法抵抗性の進行癌患者を対象とした臨床試験により有効性を確認しようとするものである。ワクチン療法は化学療法、放射線療法、手術などに比べ副作用の少ない新規治療法として期待されており、また薬剤選択することにより患者毎に効果的な「個別医療」の実現も期待される。