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別紙2

震災関連研究を対象とした「国際緊急共同研究・調査支援プログラム(J−RAPID)」
採択課題の概要(仏国との共同支援分)

課題名 日本側
研究代表者
所属・役職 課題概要
相手国側
研究代表者
東北・福島地方における放射性物質の移行に関する研究 恩田 裕一 筑波大学
大学院生命環境科学研究科
教授
本研究は、フランスのLSCEと協力して、土壌粒子に強力に吸着した放射性物質の測定値を通して、福島の原発事故と津波が環境にもたらした結果をより広範に調査することを目的とする。具体的には、日本側は放射性物質や土砂流出モニタリングを担当し、フランス側は放射性物質の移行モデルを担当する。 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、土壌や川や海等への環境汚染の拡大を評価していくための重要なデータが収集されることが期待される。
オリビエ・
エバール
気候環境科学研究所(LCSE)
研究員
東北地方太平洋沖地震における非線形地盤応答の定量的評価 川瀬 博 京都大学
防災研究所
教授
本研究は、東北地方太平洋沖地震で得られた観測記録および余震記録や微動(地盤の微小な揺れ)記録を用いて、その強震動特性の特徴の抽出、特に地盤の非線形応答特性を明らかにすることを目的とする。 日本側は強い揺れの特性分析、余震観測・微動観測、非線形特性の抽出や再現解析等を行い、フランス側は観測記録からの非線形特性の抽出及び地下構造の同定と非線形応答シミュレーションを行う。 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、大入力時のより高精度な強い揺れの予測につながることが期待される。
フローレン・ド・マルタン 仏国地質調査所(BRGM)
研究員
長期応力蓄積過程を考慮した東北地方太平洋沖地震のダイナミクスの解明 井出 哲 東京大学
大学院理学系研究科
准教授
本研究は、東北地方太平洋沖地震の地殻変動および地震動データと、これまで開発してきたさまざまな地震のモデル化手法を駆使して、非常に広い周波数範囲でこの地震の震源像を明らかにすることを目的とする。 日本側は主にデータの分析を担当し、フランス側は主に応力蓄積過程のモデル計算を担当する。 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、今後の巨大地震の予測精度向上へ貢献することが期待される。
ラウル・
マダリアガ
パリ高等師範学校
教授
大地と海と宇宙から見た2011年東北地方太平洋沖地震:地震発生と津波予測向上のための重要な実践的研究 綿田 辰吾 東京大学
地震研究所
助教
本研究は、東北地方太平洋沖地震が引き起した津波について、沿岸や海底ケーブル等による既存の津波計測以外の手法を用いた、新たな定量的(位置、時刻、空間分布)検出方法を確立し、将来の津波警報システムの高度化に資する知見を得ることを目的とする。 具体的には日本側は、地震発生による大気圧の波動伝播の観測と解析を担当し、フランス側は、GPSデータを用いた電離層攪乱検出および発生から伝搬までの物理過程のモデリングを担当する。 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、既存システムよりも安価で正確かつ迅速な津波警報発令の実現が期待される。
アンソニー・
スラーデン
ニース大学
研究員
福島原発事故汚染地域において電離放射線が野鳥に及ぼす影響の包括的評価 渡邉 守 筑波大学
大学院生命環境科学研究科
教授
本研究は、福島原発事故による放射線の被ばくが野鳥に与える生理、行動、繁殖への影響について調べることを目的とする。 具体的には、日本側は放射線が繁殖に与える行動生態学的影響評価を担当し、フランス側は放射性物質の挙動と生態毒性学的モデルの作成を担当する。また、アメリカの研究グループが生物化学的経路への影響評価で日仏研究チームに協力する。 日仏の共同研究に米国グループの協力が加わることによって、放射線への被ばくが体内でどのような生物化学反応を起こして繁殖に影響し、個体群動態の変化につながるかという一連のプロセスが明らかになる。同時に、放射線による悪影響の根本原因がどの生理要因によるのかについても明らかになる。
クリステル・
アダム-ギレミン
放射線保護・原子力安全研究所 環境毒性学グループ
リーダー
2011年東北地方太平洋沖地震による東日本地域の地殻構造の地震波速度変化と地殻変動 西村 太志 東北大学
大学院理学研究科
准教授
本研究は、巨大地震によって引き起こされた東日本の地殻変動と地震波速度変化を、防災科学技術研究所、国土地理院や東北大学の地震波、GPS、InSARのデータを利用し、精度良く推定することを目的とする。 具体的には、日本側は大地震による地殻変動推定、地震波速度変化の要因解明を担当し、フランス側はデータセンター構築と4次元速度変化分布の推定を主に担当する。 両国の研究チームが相互補完的に取り組み、得られた成果を比較検討することで、これまでにない地震活動が起きている東北地方の地殻構造の状態を明らかにする。また、その成果は、今後の地震火山活動を評価する上での基礎的な資料となることが期待される。
フローラン・
ブランギエ
パリ地球物理学研究所
研究員
民主主義社会における震災避難とリスク認識:日仏比較研究の視点から 蟹江 憲史 東京工業大学
大学院社会理工学研究科
准教授
本研究は、観測やステークホルダーへの聞き取りといった現地調査を実施することで、震災対応への同時進行的変化を記録し、それに対する政治学的、社会学的、文化人類学的、及び経済学的分析を加えることを目的とする。 具体的には、福島における避難過程や、震災がリスク認識の変化に与えた影響の分析を通じ、民主主義社会における環境変化に起因する住民移動現象を解明する。その際、日本側は日本語文献や資料の分析、日本人コミュニティの行動に焦点を当てて研究を実施し、フランス側はフランス語文献や資料の分析、フランスにおける認識の変化や在日フランス人コミュニティの分析に力点を置いて研究を進める。 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、より深い知見と洞察に基づいた分析につながることが期待される。
フランソワ・
ジェミン
パリ政治学院
リサーチフェロー
東北日本沈み込み帯における古地震・古津波研究:東北地方太平洋沖地震と巨大地震サイクルの解明 遠田 晋次 京都大学
防災研究所
准教授
本研究では、東北地方太平洋沖地震の津波被災域において過去の津波堆積物を見出し、その拡がりを調べるとともに、誘発された陸域正断層の活動時期を特定することによって、巨大地震発生史の解明を目指す。 具体的には、日本側は長期的な隆起・沈降を示唆する海岸地形や陸域断層地形の調査、津波堆積物調査、プレート固着・変形の数値計算を担当し、フランス側は誘発された陸域正断層の物理探査とトレンチ掘削調査を担当する。 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、海溝型巨大地震の地震サイクルを明らかにするとともに、海溝型地震と内陸地震活動との相互作用の解明、南海トラフなど他地域での巨大地震の長期評価に示唆を与えることが期待される。
ムスタファ・
メグラオウイ
ストラスブール大学
教授
複雑化する世界におけるNatech(自然災害と技術の相互作用)リスクの低減に関する学際的研究:日本の経験から学び、iNTeg-Riskプロジェクト・NaTech分野の手法を応用 岸本 充生 産業技術総合研究所
安全科学研究部門
研究グループ長
本研究では、東日本大震災による被害を、欧州委員会によるiNTeg-Riskフレームワークと、そこで開発されたNaTech(自然災害と技術の相互作用)事故リスクの解析手法を適用し、得られた知見を発信するとともに事故リスク解析手法の発展を目指す。 具体的には、日本側が社会科学的知見に基づく経済影響評価と減災のための政策的アプローチを担当し、フランス側が工学的知見に基づく物理的影響と減災のための工学的アプローチを担当する。 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、今後、低頻度高影響の自然災害が引き起こす技術的な事故の影響を軽減するために必要な工学的対策と政策的対策の組み合わせについての知見が得られることが期待される。
アドリアン・
ウィロー
国立産業・環境リスク研究所(INERIS)
リサーチエンジニア