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別紙1

平成23年度 新規プロジェクトの概要 一覧

概要: 研究開発領域「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」≪平成22年度発足≫
概要: 「問題解決型サービス科学研究開発プログラム」≪平成22年度発足≫
概要: 「研究開発成果実装支援プログラム」≪平成19年度発足≫

研究開発領域「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」≪平成22年度発足≫

実施期間:上限3年、研究開発費:(カテゴリーⅠ)1000万円未満/年
(カテゴリーⅡ)2000〜3000万円程度/年
【カテゴリ−】※1
題名
研究代表者名
所属・役職
概要 研究開発に協力する関与者
【Ⅰ】
社会資本の活性化を先導する歩行圏コミュニティづくり
中林 美奈子
富山大学
大学院医学薬学研究部
准教授
 都市中心部に居住する後期高齢者の歩行圏の規模とそれに関連する要因を明らかにするとともに、自立支援型歩行補助車を用いた歩行支援が「歩行圏コミュニティ」実現の基盤的条件であり、その整備が都市中心部の健康・福祉増進活動のみならず社会資本の活性化を先導することを検証する。
  • 富山大学 地域連携推進機構
  • 富山市
  • 富山市角川介護予防センター
  • (株)まちづくりとやま
【Ⅱ】
「仮設コミュニティ」で創る新しい高齢社会のデザイン
大方 潤一郎
東京大学
大学院工学系研究科
都市工学専攻
教授
 今回の津波被災地の仮設住宅地において(具体的なフィールドとしては大槌町、および比較対象地として釜石市、遠野市)、生活再建のために必要となる最小限のコミュニティ・インフラ(特に、高齢者・子供のケア・サービス)を住民自身の問題発見活動と住民共助的活動を基軸にしながら、社会実験的に整備することを通じて、仮設住宅地コミュニティの物的・社会的なデザイン・モデルを開発するとともに、当該モデルを基礎に、地方中小都市の分散集約的コミュニティに適した高齢社会対応型コミュニティのデザイン・モデルを獲得する。
  • 岩手県沿岸広域振興局
  • 釜石市
    (総合政策課、都市計画課、地域福祉課)
  • 遠野市
    (沿岸被災地後方支援室、都市計画課、福祉課)
  • 大槌町
    (総務課、地域整備課、福祉課)
【Ⅱ】
高齢者の虚弱化を予防し健康余命を延伸する社会システムの開発
新開 省二
地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所
研究部長
 3つの地方自治体(草津町、鳩山町、養父市)をフィールドとして、最新の老年学研究の成果に基づいて、高齢者(特に後期)の要介護化の背景にある虚弱(frailty)の予防戦略を立て、行政、住民、専門機関が一体となって住民参加型の予防活動を展開し、その効果を検証した上で他地域にも実装可能な健康余命を延伸する社会システムを構築する。
  • 群馬県草津町
    (健康推進課、保健センター、地域包括支援センター)
  • 埼玉県鳩山町
    (保健センター、地域包括支援センター、地域健康づくりサポーターの会)
  • 兵庫県養父市
    (地域包括支援センター、養父市社会福祉協議会)
【Ⅱ】
高齢者の営農を支える「らくらく農法」の開発
寺岡 伸悟
奈良女子大学
文学部 人文社会学科
准教授
 「働く」を軸に据えて、集落単位の現状把握と持続可能性に関する点検調査を行い、その内容を基にして、農村に最適化した作業補助具を新たに導入するとともに、高齢者が無理なく営農を続けられる畑のあり方のデザインを開発する。
  • 栃原農林産直販売出荷組合「道しるべ」
  • 川田真左靴工房
  • 奈良県社会福祉事業団 介護実習・普及センター
  • 近畿大学 農学部
【Ⅱ】
高齢者による使いやすさ検証実践センターの開発
原田 悦子
筑波大学
大学院人間総合科学研究科(心理学)
教授
 高齢者にとって「使いやすいデザイン」の実現を目標として、地域の高齢者が参画する「使いやすさ検証実践センター(CUAR)」を構築し、家電、公共機器、さらには公共空間そのもの(例:駅のデザイン)などを対象として、生活者(ユーザ)という視点から使いやすさを検討する。これらの活動を通して、高齢社会における使いやすいデザイン原理を明らかにするとともに、研究者、開発者、高齢者による対等な関係に基づいた新しいコミュニティを創造し、高齢者の新たな社会参加モデルの構築並びにセンターの自立運営モデルの確立を目指す。
  • 産業技術総合研究所 ヒューマンライフテクノロジー研究部門
  • 山形県三川町

※1 Ⅰ:社会の問題を解決するための選択肢を提示しようとするもの(研究開発のあり方や科学的評価のための指標などの体系化など)。

Ⅱ:社会の問題の解決に資する具体的な技術や手法などについてその実証まで行おうとするもの。

<総評>領域総括 秋山 弘子(東京大学 高齢社会総合研究機構 特任教授)

日本は世界の最長寿国であり、2030年には65歳以上の人口が総人口の3分の1になります。世界のどの国も経験したことのない超高齢社会が日本に到来します。私たちは、この高齢社会の課題に挑戦し、世界に先駆けてモデルを創っていくことが急務となっています。本研究開発領域「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」は昨年度から活動を開始しました。

本研究開発領域では、本年度の公募にあたり、東京および大阪で説明会を実施しました。そこでは、(1)3回の公募でできるだけ広い分野をカバーするよう配慮すること、(2)昨年度において採択プロジェクトが少なかった地域やコミュニティからの提案、女性や若手研究者の提案を奨励すること、(3)コミュニティの多様な関与者が参画する高齢社会の斬新なデザインの提案を期待することを特に強調しました。

これに対して、大学や研究機関のみならず、NPO、企業、公益法人から65件という多数の応募が寄せられ、そのうちカテゴリーⅠの応募が10件、カテゴリーⅡの応募が55件でした。研究開発を実施するコミュニティは北海道から沖縄まで幅広く分布しており、内容についても、健康づくり、災害、社会参加、機器開発・導入、ICT、まちづくり、住環境、介護、医療、認知症、就業、生涯学習、人材育成、ネットワークづくり、評価尺度など多様な分野の提案が集まりました。

審査にあたっては特に以下の点を重視しました:(1)コミュニティの現状と将来起こりうる問題を客観的根拠に基づいて把握し、課題の重要性を説得的に示しているか、(2)提案するプロジェクトについて国内外の類似の取り組みの動向や先行研究を十分に整理し、提案の新規性・独創性を客観的根拠に基づいて示しているか、(3)実施期間で達成しようとする目標が明確か、(4)コミュニティでの研究開発には多様な関与者の間の協働体制の構築など難関も多々あるが、研究計画は期間内に実行可能か、(5)プロジェクト終了後の成果を持続するための方策が明確に示されているか。

厳正なる書類選考、面接選考を行った結果、カテゴリーⅠの提案1件、カテゴリーⅡの提案4件をそれぞれ採択しました。採択された提案は、健康づくり、災害、機器開発・導入、社会参加、まちづくりなどの分野に分かれ、対象地域も関西から東北まで幅広いものとなっています。

本年度の提案についても、着想は優れているが研究開発実施期間での実行可能性が乏しいもの、高齢社会に対する「思い」が先行し「研究開発」という客観的・科学的視点が欠けたもの、「研究」にとどまり具体的な課題解決の道筋が示されていないもの、コミュニティの構成員である高齢者のニーズを踏まえて「コミュニティで創る」という視点が欠けたもの、研究開発を実施するコミュニティの選択や研究開発実施者の構成において論理的必然性に欠ける提案、が見られました。来年度は募集最終年度であり、安心と活力と夢のある高齢社会を目指して、本年度採択できなかった、安全・安心、認知症、住宅・住環境、交通、世代共生などに関する課題を含め、全国のコミュニティから斬新な提案を期待しています。今年度採択されなかった提案の再チャレンジも大いに歓迎します。

「問題解決型サービス科学研究開発プログラム」≪平成22年度発足≫

実施期間:上限3年、研究開発費:(研究アプローチA)  最大4000万円程度/年
(研究アプローチB1) 最大2000万円程度/年
(研究アプローチB2) 300〜500万円程度/年
【研究アプローチ】※2
題名
研究代表者名
所属・役職
概要 研究開発に協力する関与者
【A】
農業水利サービスの定量的評価と需要主導型提供手法の開発
飯田 俊彰
東京大学
大学院農学生命科学研究科
講師
 愛知用水および印旛沼に研究対象地区を設定し、農業用水の量的質的動態の精密な観測と動的モデルの開発を行う。その成果を基に、農民および農村地域に居住する市民をサービス被提供者(受益者)として、農業水利サービスの社会学・経済学的価値を評価する。それにより、サービス提供者である農業水利システムの設計・管理者(国、自治体、土地改良区)から受益者への農業水利サービスの効率的提供手法を開発し、研究成果の社会への実装を図る。
  • 茨城大学 農学部
  • 中部大学 中部高等学術研究所
  • 東京農工大学 農学部
  • 三重大学 生物資源学部
  • 立正大学 経済学部
  • (独)国際農林水産業研究センター
  • (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
  • 愛知用水土地改良区
  • 印旛沼土地改良区
  • NTCコンサルタンツ(株)
  • 芸者東京エンターテインメント(株)
【A】
サービス指向集合知に基づく多言語コミュニケーション環境の実現
石田 亨
京都大学
大学院情報学研究科
教授
 本研究では国際社会が抱える「言語の壁」を取り上げ、欧米亜の協力により、世界中の機械翻訳や辞書などをインターネット上で集積した言語グリッドを活用する。この言語グリッドに蓄積された言語サービスを組み合わせることで、サービスの提供者である企業や研究機関、現場で活動するエンドユーザ、両者をつなぐNGO/NPOなどのニーズを踏まえつつカスタマイズし、国際NGO/NPOの活動に適した多言語環境を実現する。こうした具体的課題への取り組みを通じて、複数のサービスを連携させて新たな価値を生み出す手法を研究し、企業、NGO/NPO、エンドユーザなど多様な価値観を持つプレイヤによる価値の共創を支援する。
  • 早稲田大学理工学術院
  • 特定非営利活動法人ジェン(JEN)
  • 特定非営利活動法人パンゲア
  • 特定非営利活動法人多文化共生センターきょうと
  • 言語グリッドアソシエーション
【B】
日本型クリエイティブサービスの理論分析とグローバル展開に向けた適用研究(*)
小林 潔司
京都大学
大学院経営管理研究部
部長
 日本市場において連綿と培われてきたクリエイティブサービス(創造的高付加価値サービス)の良さを表出し、グローバル市場において価値評価を行う基準を明示し、サービスを持続・発展させる理論的基盤の構築を目的とする。特徴的なサービスとして、革新的な老舗企業、食サービス、クールジャパン、伝統文化・芸能などを取り上げ、活動成果を日本の製造業・サービス業のグローバル展開事例に適用する。
  • 京都大学 こころの未来研究センター
  • 京都大学 大学院情報学研究科
  • 帝塚山大学 経営情報学部
  • 合同会社KICS
  • 大阪商工会議所
  • ウィーン大学 知識ビジネス学科
  • シンガポール経営大学
  • ホーチミン工科大学
  • 韓国・建国大学
  • Palo Alto Research Center(Xerox)
【B】
やさしい社会の実現を目指したサービスにおける利他性の研究:自殺防止相談員の事例を中心に(**)
舘岡 康雄
静岡大学
大学院工学研究科
教授
 複雑で不確かな時代の問題は、利己的な競争原理のみでは解決しえない。参加者が一定程度の利他性を発揮しながら、違いや変化を吸収し、共創的プロセスを通じて解を生みだす必要がある。この利他性発現のメカニズムは分かっていない。本研究は、先進国中、最悪の水準にある日本の自殺問題に取り組むボランティア相談員に焦点をあて、活動の中で交換されている価値や利他性の本質を明確にする。これにより、誰もが利他性を発揮するやさしい社会の実現に向け、利他性に基づくサービスの科学的基盤を確立する。
  • ビズテック(有)
  • 特定非営利活動法人 国際ビフレンダーズ東京自殺防止センター
  • SHIEN(支援)研究会
【B】
医療サービスの「便益遅延性」を考慮した患者満足に関する研究(*)
藤村 和宏
香川大学
経済学部
教授
 医療サービスに対する患者満足の向上を図るには、医療サービス組織におけるその水準を適切に評価する必要があるため、「便益遅延性」という医療サービスの特質を考慮した患者満足測定尺度の開発を行う。また、理想的な状態では、患者参加、サービスの品質および患者満足の間に正の関連性が存在するが、「便益遅延性」のために関連性に歪みが生じやすいため、理想的な関連性を導く方策について考察する。
  • 香川大学 医学部
  • 流通科学大学 総合政策学部
  • 香川大学 医学部 付属病院
  • 大阪厚生年金病院
  • 坂出市立病院

※2 A:「問題解決型研究」:具体的なサービスを対象に、当該サービスに係る問題解決のための技術・方法論などを開発して問題を解決するとともに、得られた技術・方法論が「サービス科学」の研究基盤の構築に貢献することを目的とする研究。

B:「横断型研究」:研究エレメントに焦点を当て、新たな知見を創出し積み上げることで体系化し、「サービス科学」の研究基盤を構築する。それにより将来的に現場のさまざまな問題解決に応用され、サービスの質・効率を高め、新しい価値の創出に貢献することを目的とする研究。

)B1(文理融合型)
**)B2(人文・社会科学型)

<総評>プログラム総括 土居 範久(慶應義塾大学 名誉教授)

平成22年度から開始された「問題解決型サービス科学研究開発プログラム」は、「サービス科学」の研究基盤を構築すること、および研究成果をさまざまなサービスに活用し社会貢献をするために有効な技術・方法論などを開発し、「サービス科学」の研究者・実践者のコミュニティの形成に貢献することを目指しています。まだ日本ではなじみの薄い「サービス科学」の研究開発プログラムを構築するために、対象とする問題解決プロジェクトのイメージ、基礎となる研究エレメントなどの議論から行いました。平成22年度の採択案件は、サービスの基礎理論、サービスマネージメント、サービス工学に関わるものであり、A.問題解決型研究2件、B.横断型研究2件、および企画調査4件の計8件でした。本年度の公募では、サービスの理論構築を強化するため、B型研究(横断型研究)において人文・社会科学を軸足に置くアプローチも推奨するなど、幅広い分野の応募を呼びかけました。

これに対し、全国の大学・研究所・企業・NPO法人などから、105件(A.問題解決型研究74件、B.横断型研究31件)の応募を頂きました。昨年に引き続きヘルスケア関連の提案が最も多く、この分野への関心の高さがうかがえました。また、交通・水システムや情報技術関連の提案の割合が増加しました。研究代表者の研究領域では、理工学分野の提案の割合が減少し、総合・複合領域の提案が増加しました。従来の科学研究と異なり「サービス科学」は、既存のサービスに科学的アプローチを導入してサービスの効率化・最適化を図るだけではなく、理工学分野とマネジメント・マーケティング・文化人類学などの人文・社会科学分野を融合し、サービスの現場と協業することにより、サービスに関する科学的な概念・理論・技術・方法論の構築を目指すもので、選考会ではこれらの観点を注視しました。幅広い分野から興味深い提案がありましたが、サービス科学の研究課題の記述が十分ではなく、研究計画が基盤の開発に止まっているもの、研究開発の対象とするサービスシステムの関与者からのコミットメントが不明確であるもの、学術的な先行研究の調査やサービス領域の先進事例についての調査が不十分であるもの――などが依然見受けられました。

採択された提案は、水システム、公共サービスなどを対象にしたサービスの基礎理論、サービスマネージメントに関わるもので、A.問題解決型研究2件、B.横断型研究3件の計5件となりました。採択課題が「問題解決型サービス科学研究開発プログラム」のモデルケースとなるように、マネジメントチームのメンバーと研究実施者が一体となってプロジェクトの推進に取り組んで行く所存です。また、「サービス科学」コミュニティの一層の拡充のため、本プログラムの情報発信に努めるとともに、関係各位との議論を通じ「サービス科学」構築のために尽力していきます。

「研究開発成果実装支援プログラム」≪平成19年度発足≫

支援期間:1年〜3年、実装費:最大500万円/年
実装活動の名称 実装責任者名
所属・役職
概要 主たる協働組織
(活動地域)
研究開発成果を得た
公的資金
急性白血病の早期診断を目的とした誘電泳動による細胞検出・同定法の臨床応用
今里 浩子
一般財団法人ファジィシステム研究所
主任研究員
 急性白血病は、白血病細胞が末梢血中に現れる極めて早い時期(超早期)に、確実にそれを検出できれば、薬剤投与による完治が可能と言われている。現在、臨床検査で使用されている最新の自動血球計数機は、100個/μℓの白血病細胞検出感度であり、初期症状が出ている場合ですら急性白血病を見落としている。
 本活動の目的は、当研究グループが開発した「誘電泳動力測定法とその装置」を利用して白血病細胞を高感度に検出し、早期に白血病を確定診断できる方法を臨床応用することである。
  • 呉工業高等専門学校
  • STEMバイオメソッド
  • 緒方医学化学研究所
21世紀COEプログラムほか
女性の尿失禁予防・改善を目的としたサポート下着の社会実装
岡山 久代
滋賀医科大学
医学部
准教授
 腹圧性尿失禁の症状を有しながらも、抵抗感や羞恥心から受診せず放置している女性や、罹患リスクのある女性が多いことから、負担が少なくセルフケアが容易な予防・改善方法の開発が急務となっている。本活動は、体型補正などの用途で開発されたサポート下着(着用による骨盤内臓器挙上と筋肉強化作用を有する)の着用効果について縦型オープンMRによる骨盤内画像と自覚症状によって有効性・持続性を評価する。これにより、成熟期・更年期の女性を対象にサポート下着の腹圧性尿失禁予防・改善効果を実証するとともに、自治体の健康支援事業や産後の保健指導への導入を通じ、簡易なセルフケアの1つとしてサポート下着による腹圧性尿失禁予防・改善を促進する。
  • 滋賀県を中心とした市町村保健センター、企業、産婦人科
  • 滋賀県医師会
  • 日本助産師会滋賀県支部
  • (株)ワコール
JST 研究成果最適展開支援事業 フィージビリティスタディ(シーズ顕在化タイプ)ほか
視野障害者自立支援めがねの社会実装
下村 有子
金城大学
社会福祉学部
教授
 長寿社会の中で視野障害者が増えている。原因の1つが緑内障であり、40歳以上の17人に1人が該当する。痛みを伴わない視野欠損は気がつかない人も多い上に、視野を元に戻すことはほとんどできない。
 本活動は、「視野狭窄者自立支援用デジタルグラス試作品の開発」を発展させ、補装具・日常生活用具として自治体で指定されることにより、いろいろな視野障害者に健常者の視野をめがねという形で提供することを目指す。日本で初めての視野障害者用めがねであり、障害者の現状の視野に対応できるめがねを開発することによって危険の回避、QOLの向上、自立支援を目指す。
  • 石川県視覚障害者協会(石川県金沢市、白山市)
JST 産学共同シーズイノベーション化事業(顕在化ステージ)
肢体不自由者のための自動車運転支援システムの社会実装
和田 正義
東京農工大学
工学研究院
准教授
 重度肢体不自由者は公共交通機関、自家用車などによる移動に困難を伴うため、就労の機会が限定され、また介護・介助者の負担も多大である。開発したジョイスティック式自動車運転装置によって障害者自身による自動車の運転が可能になればこの問題は解決する。開発した装置は、ジョイスティックによる運転を可能にする装置であるが、取り付け作業者および免許取得過程での支援者の適応が十分ではなく、また、普及のため社会実装活動が必要である。ジョイスティック車の利用が拡大し、リーズナブルな価格で購入可能となることを契機とした普及拡大を目指し、個別のニーズに応じたオーダーと免許取得の要件検討などを加えた持続可能な総合的サポートを行う連携体制を確立する。
  • (株)ニッシン自動車工業
平成21年度ものづくり中小企業製品開発等支援補助金

<総評>:プログラム総括 冨浦 梓(元 東京工業大学 監事)

今年度は33件(前年度比:110%)の応募があり、その中から、社会技術の特性を考慮しつつ、ライフイノベーション、安全・安心に関連した課題として、研究開発がほぼ終了しており、目的、方法、効果が明確であるもの4件を採択しました。「急性白血病の早期診断を目的とした誘電泳動による細胞検出・同定法の臨床応用」、「女性の尿失禁予防・改善を目的としたサポート下着の社会実装」、「視野障害者自立支援めがねの社会実装」、また、「肢体不自由者のための自動車運転支援システムの社会実装」の4件です。いずれのプロジェクトも実装支援の対象となる機関や受益者が明確であり、社会への定着が予想されるものです。今年度は、女性が実装責任者となる活動が3件採択されました。

本プログラムは開始後5年を経過しましたが、プログラムの趣旨を理解した提案が増加しております。すなわち、研究者は単に研究開発をするのではなく、研究開発成果の社会的価値を実証し、社会に定着させ、普及の端緒を拓きたいという意志を以て提案する案件が増加しているのです。実装プログラムは受益者と研究者との共同事業であり、実装にあたっては思わぬ障害に遭遇することがあります。選考にあたっては受益者との組織的連携や障害に対する柔軟な対応体制に十分配慮しているかなども評価することにしています。

本プログラムは、例えば、今回の東日本大震災で現実に実効を上げたプロジェクトや、社会的に注目を浴びることとなったプロジェクトが数件あることに見られる通り、先見性のあるプロジェクト選択をしてきたと思っています。今後は、採択された実装活動がより効率的に社会に実装されるよう、実装責任者との連携を深めたいと考えています。