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別紙1

「平成22年度小学校理科教育実態調査」の目的と概要

【調査の背景・目的など】

JSTと国立教育政策研究所が平成20年度に共同で実施した「小学校理科教育実態調査」の結果から、理科の指導に苦手意識を持つ小学校教員が少なくないことや観察・実験を行う上での障害として準備・片付けの時間の不足、研修時間の確保ができないことなどが示唆される。現在、小学校教員の資質向上と観察・実験などの充実を図るため「理科支援員配置事業」が実施されている。一方、学級担任ではなく理科専科教員が理科を教えている学校も少なくない。そこで、今回これらの施策などの効果を検証し、小学校理科教育での適切な支援策を探るために、小学校で理科を教える学級担任の教員と6年生の児童および学校を対象としたアンケートによる全国調査を実施した。

「理科支援員配置事業」・・・
国の予算措置により、大学(院)生や退職教員などの有用な外部人材を、理科支援員として小学校5、6年生の理科の授業に配置し活用することで、理科の授業における観察・実験活動の充実および教員の資質向上を図ることを目的として、平成19年度からJSTが実施している施策。

【調査方法】

全国の公立小学校から無作為に抽出された調査対象校と所管の教育委員会に、平成23年1月に調査を依頼するとともに、学校・教員・児童の3種類の質問票を送付し、調査対象校からの直接郵送方式により回収した。回答は学校、回答者名とも無記名とした。

【調査報告書】

今回は、各調査項目別の集計結果と支援策の効果を検証するための基本的なクロス分析結果の報告であり、より詳細なクロス分析などの結果と統計的な有意差の検定、および平成20年度の全国値との比較については、今後作成する調査報告書に掲載する予定である(平成23年12月頃を予定)。

【回答者の特性と結果の解釈】

本調査は、小学校理科教育支援策の効果の検証を主目的とした。そのため、調査対象となる小学校については、平成20年度から22年度の過去3年間にJSTによる理科支援員を配置したことのある学校9680校から770校、理科支援員未配置校12346校から446校、計1216校を無作為に抽出し、依頼した学校の約80%から回答が得られた。

分析方法は、学校・教員・児童質問票の回答状況について、理科支援員および理科専科などの配置の有無、教員の大学院修了の有無、教員の教職経験年数の違い、理科支援員の配置時間や学級規模などの違いによるクロス集計を行った。

(1)学校(理科主任もしくはそれに相当する教員)の回答

支援策パターン 回答件数 内容
未配置 253 過去3年間で理科支援員および理科専科が配置されていないと回答した学校
専科のみ配置 104 過去3年間で少なくともいずれかの年度で理科専科が配置されているが、理科支援員はいずれの年度にも配置されていないと回答した学校
支援員のみ配置 375 過去3年間で少なくともいずれかの年度に理科支援員が配置されているが、理科専科はいずれの年度にも配置されていないと回答した学校
支援員・専科配置 237 過去3年間の少なくともいずれかの年度で理科支援員および理科専科が配置されていると回答した学校
調査対象学校(969校)の支援策パターン別内訳
円グラフ 調査対象学校の支援策パターン別内訳

※1 学校質問票問6「理科支援員が配置された年度と学年」および問7「理科専科が配置された年度と学年」の回答から、支援策のパターンを4通りに分類した。

(2)教員質問票(理科を教える第3学年~第6学年の学級担任)の回答

支援策パターン 回答件数 内容
支援員未活用・
指導無0年
666 過去3年間で理科支援員を未活用であり、さらに理科専科あるいは低学年担当等で理科を指導する必要がなかった年度がないと回答した教員
支援員未活用・
指導無1年
333 過去3年間のいずれか1年のみ理科専科あるいは低学年の担当等で理科を指導する必要がなかったと回答し、かつ過去3年間で理科支援員を未活用と回答した教員
支援員未活用・
指導無2年
244 過去3年間のいずれか2年間、理科専科あるいは低学年の担当等で理科を指導する必要がなかったと回答し、かつ過去3年間で理科支援員を未活用と回答した教員
支援員活用1年・
指導無0年
345 過去3年間でいずれかの年度1年のみ理科支援員を活用したと回答し、かつ過去3年間で理科を指導する必要がなかった年度がないと回答した教員
支援員活用2年・
指導無0年
195 過去3年間でいずれか2年間、理科支援員を活用したと回答し、かつ過去3年間で理科を指導する必要がなかった年度がないと回答した教員
支援員活用3年・
指導無0年
76 過去3年間で3年間、理科支援員を活用したと回答し、かつ過去3年間で理科を指導する必要がなかった年度がないと回答した教員
支援員活用及び指導
無1年以上
297 過去3年間にいずれかの年度に理科支援員を活用し、さらに理科専科あるいは低学年の担当等で理科を指導する必要がなかった年度があると回答した教員
調査対象教員(2156名)の支援策パターン別内訳
円グラフ 調査対象教員の支援策パターン別内訳

※2 教員質問票については、2360名の教員から回答が得られた。しかし、理科を教える第3学年~第6学年の学級担任を対象とするため、問13(1)「平成22年度に理科を指導する必要がなかった」と回答した204名を除外し、2156名を有効回答とした。

※3 教員質問票問12(1)「理科支援員の活用年度」および問13「理科を指導する必要がなかった年度」の回答から、支援策のパターンを7通りに分類した。

(3)児童質問票の回答(無作為性を確保するため第6学年第1組を対象)

支援策パターン 回答件数 内容
未配置 7825 平成22年度第6学年・平成21年度第5学年で理科支援員および理科専科が配置されていないと回答した学校の第6学年の児童
専科のみ配置 3209 平成22年度第6学年・平成21年度第5学年いずれかに理科専科が配置されているが、理科支援員はいずれの年度にも配置されていないと回答した学校の第6学年の児童
支援員のみ配置 8797 平成22年度第6学年・平成21年度第5学年いずれかに理科支援員が配置されているが、理科専科はいずれの年度にも配置されていないと回答した学校の第6学年の児童
支援員・専科配置 4667 平成22年度第6学年・平成21年度第5学年の両方、または、いずれかで理科支援員または理科専科が配置されていると回答した学校の第6学年の児童
調査対象児童(24490名)の支援策パターン別内訳
円グラフ 調査対象児童の支援策パターン別内訳

※4 25021名の回答が得られたが、学校質問票が回答されなかった531名は分類から除外し、24490名の回答を有効とした。

※5 学校質問票問6「理科支援員が配置された※6年度と学年」および問7「理科専科が配置された年度と学年」の回答から、支援策のパターンを上記4通りに分類した。

※6 平成22年度に理科支援員として学校で活動した時間数の平均は158.9時間で、担当した学級数の平均は4.9学級であり(平成22年度理科支援員配置事業成果アンケート調査結果、JST)、1学級当たりで約32時間となるが、実際には観察・実験の準備と後片付けや教員との打ち合わせの時間をこれから差し引く必要がある。一方、理科の授業時数は小学校高学年で年間105時間が標準であることから、支援員が配置されている学級においても、児童は必ずしも毎回の理科授業で理科支援員の支援を受けているとは限らない状況である。

(4)無回答の扱い

本報告においては、無回答の件数も有用な情報と捉え、ほとんどの集計表で無回答を含めた回答数を分母として、回答割合を算出している。