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資料5

評価者(選考パネル)および評価

研究総括:

彌田 智一(東京工業大学 資源化学研究所 教授)

研究領域:

超集積材料

戦略目標:

プロセスインテグレーションによる次世代ナノシステムの創製

選考パネル:

パネルオフィサー澤本 光男(京都大学 大学院工学研究科 教授)
パネルメンバー 岡本 佳男(名古屋大学 特別招へい教授)
片岡 一則(東京大学 大学院工学系研究科 教授)
小池 康博(慶應義塾大学 理工学部 教授)
Jean M.J. Fréchet(Professor, Department of Chemistry, University of California at Berkeley, and Vice-President, King Abdullah University of Science and Technology)

評価結果:

研究領域「超集積材料」は、ポリマー分子およびその集合体や微生物・生物組織などを「テンプレート(鋳型)」として捉え、これを利用することで特異な機能や物性を備えた材料を創製し、もって革新的なプロセスの開拓及び確立に資することを目指す。具体的には、ブロックコポリマーのミクロ相分離構造を構造信頼性の高いテンプレートとして用いたマルチフェロイック物質やメタマテリアルなどの創製、同じく上記構造体をテンプレートして用いた分子グリッド配線、微生物・生物組織に見られる複雑な形態をテンプレートして用いる材料創製プロセスの基盤技術の創出などに取り組む。

本研究領域は、テンプレートを用いたボトムアッププロセスを駆使して、多彩な物質系のナノスケールでの集積や組織化を行い、自律的に機能を創発する革新的材料の創製へとつながるものと期待される。これにより本研究領域は、戦略目標「プロセスインテグレーションによる次世代ナノシステムの創製」に資するものと期待される。

彌田 智一 氏は、本研究領域の基盤となるブロックコポリマーのミクロ相分離構造の創製およびその応用展開等に関する先導的な研究を推進しており、研究総括として相応しいと認められる。

研究総括:

香取 秀俊(東京大学 大学院工学系研究科 教授)

研究領域:

創造時空間

戦略目標:

最先端レーザー等の新しい光を用いた物資材料科学、生命科学など先端科学のイノベーションへの展開

選考パネル:

パネルオフィサー荒川 泰彦(東京大学 生産技術研究所 教授)
パネルメンバー大野 英男(東北大学 電気通信研究所 教授)
曽根 純一(物質・材料研究機構 理事)
樽茶 清悟(東京大学 大学院工学系研究科 教授)
福井 孝志(北海道大学 量子集積エレクトロニクス研究センター センター長)
Gerhard Abstreiter (Professor, The Walter Schottky Institut, Technische Universität München)

評価結果:

研究領域「創造時空間」は、香取 秀俊 氏が自ら提唱した「光格子時計」技術を駆使して、現在の時間標準であるセシウム原子時計の15桁精度を上回る18桁精度を実現し、新たな時間標準の確立に挑戦するものである。具体的には、「光格子時計」の潜在的な安定度を最大限引き出すため、従来のelectron shelving法による射影測定に代わる新しい安定化手法を構築すると同時に、実時間の高精度時間計測の実現に向けて、「超狭線幅・光格子レーザーの開発」「極低温冷却共振器を用いる超高安定度レーザー安定化」などの最新・最先端の量子制御技術やレーザー技術を結集し、これまで最大の問題であった「安定化レーザーの熱的ノイズ限界」を打破することで、「積算時間1秒で10−18の安定度」を実現する。この精度が実現すれば、例えば高低差1cmのずれに起因する相対論的時間変化を実測することが可能となり、自然科学全般への学術的貢献のみならず、高速データ通信やGPS技術などの社会的インフラにおいて、革新的なイノベーションを誘発することが期待される。

本研究領域は、最先端のレーザー技術を駆使して光格子時計の周波数標準器としての活用を目指すものであり、戦略目標「最先端レーザー等の新しい光を用いた物資材料科学、生命科学など先端科学のイノベーションへの展開」に資するものと期待される。

香取 秀俊 氏は、これまで量子計測分野の最先端研究を先導し、本研究領域の基盤となる「狭線幅レーザー冷却法」、「光格子時計」などを独自に提案・実証しており、研究総括として相応しいと認められる。

研究総括:

竹内 昌治(東京大学生産技術研究所 准教授)

研究領域:

バイオ融合

戦略目標:

プロセスインテグレーションによる次世代ナノシステムの創製

選考パネル:

パネルオフィサー北森 武彦(東京大学 大学院工学系研究科 研究科長/教授)
パネルメンバー神原 秀記(株式会社日立製作所 フェロー)
馬場 嘉信(名古屋大学 大学院工学研究科 教授)
加納 健司(京都大学 大学院農学研究科 教授)
Edward S. Yeung (Professor, Iowa State University and DOE Ames Laboratory)

評価結果:

研究領域「バイオ融合」では微細な加工・配置を得意とするMEMSやマイクロ流体デバイスなどの工学テクノロジーとバイオテクノロジーを融合させ、複雑な三次元生体組織の構築を目指す。具体的には、MEMS技術を利用し細胞をビーズ状やファイバー状の微小構造単位へと加工する技術、及びこれら構造単位を精密に配置する技術の研究開発を推進し、多種の細胞からなる複雑な立体構造の形成と血管様構造の付与に挑戦するとともに、組織構築の際の細胞間相互作用や細胞周辺の拡張ナノ微小環境を研究し、細胞の三次元自己組織化と機能発現の制御技術への応用を試みる。さらにこれらの技術を組み合わせることで、生体に近い機構・機能構築のためのデバイス工学と設計論の確立を目指すものであり、再生医療や創薬だけでなく、分析化学やセンシング工学、ロボット工学など幅広い分野への貢献も大きいと考えられる。

本研究領域は、工学テクノロジーを利用した細胞の精密配置技術などのトップダウンプロセスと、細胞の自己組織化制御技術などのボトムアッププロセスとの統合により、細胞培養や組織培養を超えた細胞を使った構造構築と機能発現への道を拓くもので、細胞を材料に使った新しいデバイス工学を目指すものであり、これまでにない新たな観点から戦略目標「プロセスインテグレーションによる次世代ナノシステムの創製」に資するものと期待される。

竹内 昌治 氏は、これまでマイクロ・ナノ流体デバイス技術の研究と生命科学への適用に取り組み、本研究領域の基盤となる研究分野において先導的研究を推進し、この領域の国際コミュニティーにおいても高い評価を得ており、新しい研究分野を拓く研究総括として相応しいと認められる。

研究総括:

東山 哲也(名古屋大学 大学院理学研究科 教授)

研究領域:

ライブホロニクス

戦略目標:

生命システムの動作原理の解明と活用のための基盤技術の創出

選考パネル:

パネルオフィサー岡田 清孝(自然科学研究機構 基礎生物学研究所 所長/教授)
パネルメンバー島本 功 (奈良先端科学技術大学院大学 教授)
内藤 哲 (北海道大学 大学院農学研究院 教授)
町田 泰則(名古屋大学 大学院理学研究科 教授)
Gerd Jürgens (Professor, Universität Tübingen)

評価結果:

研究領域「ライブホロニクス」は、多細胞生物における個々の細胞が、細胞間コミュニケーションを通じて自身の位置情報を認識し、機能を果たすまでの仕組みを解明する。すなわち、ライブイメージング、1分子イメージング、光・工学操作、オミクスを束ね、集団の中にある個々の細胞の生きた状態での機能(ライブセル機能)を観察する基盤を構築し、動的で複雑な細胞間コミュニケーションとそれを触媒するシグナリング因子の作用機構を明らかにするものである。具体的には、特徴的な細胞間コミュニケーションを示す動的な過程である、高等植物の生殖と胚発生過程を主な対象として、(1)シグナリング因子を直接可視化し、細胞外シグナリング因子の創出、移動、受容のメカニズムを明らかにすること、(2)光技術および工学技術により、直接あるいは間接的にシグナリング分子を操作する技術を獲得すること、(3)1細胞でのオミクスに挑み、細胞間コミュニケーションに必須な新規のシグナリング分子を同定すること、を行なう。これらにより、「細胞が位置情報をいかにして認識するか」という生物学上の古くからの命題についての本質的な理解が深まると共に、ライブセル解析に基づいた新たな生命システムの発見が期待される。また、本研究で開発が進むライブセル解析技術は、単に植物科学とナノ・マイクロデバイス工学の学際的協働に留まらず、医療における診断技術分野、生殖医療分野、農業における育種技術分野の発展に大きく貢献するものと考えられる。

本研究領域は、積極的に研究手法や機器の開発に取り組み、多細胞からなる生物が機能する基本的な機構の解明を目的とするもので、その研究成果は、戦略目標「生命システムの動作原理の解明と活用のための基盤技術の創出」」に資するものと期待される。

東山 哲也 氏は、これまで独自に開発したイメージング技術や1細胞レベルの操作技術を駆使して、植物生殖における細胞間シグナリングの研究に取り組み、顕著な業績を上げていることから、研究総括として相応しいと認められる。

研究総括:

村田 道雄(大阪大学 大学院理学研究科 教授)

研究領域:

脂質活性構造

戦略目標:

生命システムの動作原理の解明と活用のための基盤技術の創出

選考パネル:

パネルオフィサー楠本 正一(サントリー生物有機科学研究所 所長)
パネルメンバー北原 武(帝京平成大学 薬学部 教授)
杉浦 幸雄(同志社女子大学 薬学部 特任教授)
高橋 孝志(東京工業大学 大学院理工学研究科 教授)
Richard R. Schmidt (Professor, Synthetic Organic Chemistry University of Konstanz)

評価結果:

分子生物学、構造生物学の発展によってタンパク質の構造と機能面の理解は大きく進んだが、多くの生命現象の場である生体膜を構成し、また重要なシグナル分子としても機能している脂質分子に関しては、まだ理解が十分に進んでいるとはいえない。研究領域「脂質活性構造」はこの点に着目し、固体NMRを主な手法として、リガンドとしてはたらく脂質分子、集合体として膜を構成する脂質を対象に、フレキシブルな脂質が機能を発揮する活性構造を解析し、その情報から脂質と相互作用する膜タンパク質の機能構造についても明らかにしようとするものである。同位体標識脂質の合成や計算科学的手法の活用によって原子間距離などのNMRの構造情報を有効に得るとともに、リガンドとなる脂質の構造から相互作用する膜タンパク質の三次元構造を正確に予測することを目指している。脂質を活性発現に必須とするタンパク質の機能構造を突き止めることも可能になるだろう。

極低温におけるX線結晶解析の静止画像とは異なる、生理条件下の分子認識の実際の様相の解明を図る本研究の成果によって、製薬ターゲットとして注目されている脂質分子の活性構造や、GPCR(Gタンパク質結合型受容体)の詳細な構造が明らかになれば、インシリコ創薬の効率を飛躍的に上げ、新規創薬、製薬コスト削減にもつながると期待される。

村田 道雄 氏は、本研究領域の基盤となる生体膜中の生理活性物質の分子認識と作用メカニズムの解明において先導的な研究を推進しており、本研究の研究総括として相応しいと認められる。