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別紙1

平成22年度新規採択 研究開発プロジェクトおよびプロジェクト企画調査の概要一覧

概要: 研究開発プログラム「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」≪平成22年度発足≫
概要: 「問題解決型サービス科学研究開発プログラム」≪平成22年度発足≫
概要: 研究開発プログラム「地域に根ざした脱温暖化・環境共生社会」≪平成20年度発足≫

研究開発プログラム「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」≪平成22年度発足≫

<研究開発プロジェクト>

カテ
ゴリ
※1
題名 研究代表者名 所属・役職 概要 研究開発に協力する関与者
在宅医療を推進する地域診断標準ツールの開発 太田 秀樹 医療法人 アスムス
理事長
 本課題では、在宅医療に19年間携わる開業医が、住民、行政、大学などと連携し在宅医療を推進する地域診断標準ツールの開発と、その普及運動の提唱を行い、全国への在宅医療の普及を図る。具体的には在宅医療の普及度合いの異なる標準的な2つの自治体を比較し、普及しない要因分析と普及方策の在り方を客観・科学的に明らかにする。またその過程を評価・整理し、地域を総合的に見ることのできる拠点などで利用可能な地域診断標準ツールを作成する。
  • 株式会社 メディカルグリーン
  • 有限会社 バイアート オリーブ訪問看護ステーション
  • 自治医科大学
  • 佐野短期大学
  • 栃木市保健福祉部福祉トータルサポートセンター
  • 医療法人 アスムス 街かどクリニック・世田谷
  • 一般社団法人 コープ福祉事業所 他
新たな高齢者の健康特性に配慮した生活指標の開発 鈴木 隆雄 独立行政法人 国立長寿医療研究センター
研究所長
 本課題では、健康度の高くなっている現代日本の高齢者に関する、高度な生活機能の維持のための最適な評価指標の確立を目的とする。特に現在の我が国での標準である(また国際的にも評価されてはいるものの)、老研式活動能力指標では測定できない、新たな社会生活への対応能力、ボランティアらの社会参加など、今後の団塊の世代を中心とした活力ある高齢社会に向けての新たな「活動能力指標」の開発と普及を目指す。
  • 東京都健康長寿医療センター
  • 特定非営利活動法人 生活・福祉環境づくり21
ICTを活用した生活支援型コミュニティづくり 小川 晃子 岩手県立大学
社会福祉学部・地域連携本部
教授/副本部長
 岩手県においては、高齢者の安否と見守り情報を家庭用電話機から発信するシステムを開発し、社会福祉協議会を見守りセンターとして社会実験を行ってきた。本課題ではこれを基盤として、認知レベルに応じた安否発信方策を検討するとともに、地域特性を生かした多様な見守りサブセンターや休日・夜間センターを設置し、地域の互助機能を組織化することにより、高齢者の異変への対応や生活支援をコミュニティで行う方策を開発し検証する。
  • 岩手県保健福祉部
  • 岩手県社会福祉協議会
  • 盛岡市
  • 滝沢村
  • 宮古市社会福祉協議会 川井支所
  • 社会福祉法人 育心会
  • ヤマト運輸 株式会社
  • 株式会社 イワテシガ 他
セカンドライフの就労モデル開発研究 辻 哲夫 東京大学
高齢社会総合研究機構
教授
 本課題では、今後特に高齢化が急速に進む都市近郊地域において、高齢者に相応しい就労の場・スタイルを創造することを通じて、地域が抱える諸課題の解決をはかるとともに、人生90年時代に相応しい新しいセカンドライフモデルづくりを目指す。具体的には、千葉県柏市を舞台に、東京大学、柏市、UR都市機構、および地域住民が協働する形で「農」「食」「支援」の3つの側面から生きがい就労ビジネスモデルを創造し、就労高齢者本人および地域にもたらす複線的な効果を検証する。
  • 柏市保健福祉部 福祉政策室
  • 独立行政法人 都市再生機構 千葉地域支社
  • 千葉大学 環境健康フィールド科学センター
  • 柏市豊四季台団地自治会
  • 特定非営利活動法人 植物工場研究会
  • 株式会社 アグリプラス 他

<プロジェクト企画調査>

題名 研究代表者名 所属・役職
自立高齢者の健康維持・増進と社会参加・社会貢献を包括するプログラム指針の検討 佐藤 眞一 大阪大学 大学院人間科学研究科
教授
生涯現役高齢者が支える縮退都市の再活性化に関する企画調査 佐藤 俊郎 株式会社 環境デザイン機構
代表取締役

※1 Ⅰ:社会の問題を解決するための選択肢を提示しようとするもの(研究開発のあり方や科学的評価のための指標などの体系化など)。

Ⅱ:社会の問題の解決に資する具体的な技術や手法などについてその実証まで行おうとするもの。

<総評>領域総括 秋山 弘子(東京大学 高齢社会総合研究機構 特任教授)

日本は世界の最長寿国であり、2030年には65歳以上の人口が総人口の3分の1になる。世界のどの国も経験したことのない超高齢社会が日本に到来する。私たちは、この高齢社会の課題に挑戦し、世界に先駆けてモデルを創っていくことが急務となっている。本研究開発領域「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」は今年度から活動を開始した。

本研究開発領域では初年度の研究開発プロジェクトを公募するに当たり、東京で説明会を実施した。そこでは(1)高齢社会の具体的課題の解決を目指すこと、(2)コミュニティにおける多様な関与者の協働による実践的研究であること、を特に強調した。研究開発で創出される成果によって、研究開発のあり方や科学的評価のための指標などの体系化を提示しようとする提案をカテゴリーⅠ、社会の問題解決に資する具体的な技術や手法などについて実証まで行う提案をカテゴリーⅡとして、公募を行った。

これに対して、北海道から沖縄まで、大学や研究機関のみならず、NPO、企業、自治体、公益法人から110件という多数の応募があった。そのうちカテゴリーⅠの応募は16件であった。研究開発を実施するコミュニティも北海道から沖縄まで分布していたが、西日本のコミュニティが若干少なかった。内容については、就労、医療、介護、認知症、メンタルヘルス、孤独・孤立、ICT、多世代共生、住環境、健康づくり、移動手段、評価尺度など幅広い分野から提案が集まった。

審査は、募集要項に示した選考基準(募集要項p.16−17)に基づいて行ったが、特に以下の点を重視した:(1) コミュニティの現状と将来起こりうる問題を客観的根拠に基づいて把握し、課題の重要性を説得的に示しているか、(2)提案するプロジェクトについて国内外の類似の取り組みの動向や先行研究を十分に整理し、提案の新規性・独創性を客観的根拠に基づいて示しているか、(3)最長3年間の研究開発実施期間で達成しようとする目標が明確か、(4)コミュニティでの研究開発には多様な関与者の間の協働体制の構築など難関も多々あるが、研究計画は研究開発実施期間内に実行可能か、(5)(カテゴリーⅡの場合)プロジェクト終了後の成果を持続するための方策が明確に示されているか。

書類選考ではカテゴリーⅠの提案は選出されず、カテゴリーⅡの提案10件が選出され、領域アドバイザーのコメントを伝えた上で面接選考を行った。10件中3件の提案に対しては、カテゴリーⅠへ変更し、面接に臨むことを検討するように求めた。結果的に、カテゴリーⅠに2件、カテゴリーⅡに2件、企画調査に2件を採択した。採択された提案は、就労、ICT、医療、介護、孤独・孤立、住環境、健康づくりの分野に分かれ、また研究開発を実施する地域も分散した。

公募初年度の提案については、着想は優れているが研究開発実施期間での実行可能性が乏しいもの、高齢社会に対する「思い」が先行し「研究」開発という客観的・科学的視点が欠けたもの、「研究」にとどまり具体的な課題解決の道筋が示されていないもの、コミュニティの構成員である高齢者のニーズを踏まえて「コミュニティで創る」という視点が欠けたもの、研究開発を実施するコミュニティの選択や研究開発実施者の構成において論理的必然性に欠ける提案、が数多く見られた。来年度以降も、安心と活力と夢のある高齢社会を目指して、全国のコミュニティから斬新な提案を期待している。今年度採択されなかった提案の再チャレンジもおおいに歓迎する。

「問題解決型サービス科学研究開発プログラム」≪平成22年度発足≫

<研究開発プロジェクト>

研究
タイ
※2
題名 研究代表者名 所属・役職 概要 研究開発に協力する関与者
音声つぶやきによる医療・介護サービス空間のコミュニケーション革新 内平 直志 株式会社 東芝
研究開発センター
技監
 本課題では、「音声つぶやき」による看護師や介護士の新しいコミュニケーション技術を開発し、医療や介護の間接業務の効率向上を図る。「音声つぶやき」とは、ツイッターに代表されるリアルタイム性の高い情報共有の音声版。医療や介護などの行動型サービスでは、従来型の情報システムは利用時の負担感が課題であったが、行動推定により、適切な範囲で「音声つぶやき」を共有する技術により、負担を感じさせずに看護師や介護士の職員間連携、記録、業務確認などの間接業務を支援できる。負担感の評価手法を開発し、医療・介護現場での試行実験を通じて、行動型サービス空間(情報と建物)におけるコミュニケーション技術を確立する。
  • 清水建設 株式会社
  • 北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科、知識科学研究科
  • 産業技術大学院大学 産業技術研究科
  • 九州工業大学 大学院工学研究院
サービスシステムモデリングによる産業集積における価値共創の可視化と支援 木嶋 恭一 東京工業大学
大学院社会理工学研究科
教授
 本課題では、産業集積での多様なステークホルダーによる新たな価値創出のための相互作用をサービスシステムとして捉え、そのプロセスを可視化し、合意形成を支援する手法を開発する。これを基礎に、サービスシステムでの価値共創のプロセスとメカニズムを記述し、設計・マネジメントする分野融合型の新たな学問領域「サービスシステム科学」を創出して、サービス科学の研究基盤を産官学国際連携を通じて構築することを目指す。
  • 東京工業大学 大学院総合理工学研究科、ソリューション研究機構
  • 諏訪産業集積研究センター
  • NPO匠の町しもすわ
顧客経験と設計生産活動の解明による顧客参加型のサービス構成支援法〜観光サービスにおけるツアー設計プロセスの高度化を例として〜 原 辰徳 東京大学
大学院工学系研究科
助教
 訪日外国人の誘致が課題である観光産業を題材に、その観光行動データを収集・解析し、魅力的かつ多彩な観光ツアーを短期間で企画できるよう商品開発プロセスを高度化する。さらに、これらを用いた旅行者主体の旅行計画支援により観光需要を喚起する。以上により、(a)サービスシステムの表現、(b)顧客経験の解析、(c)サービスの部品化と再構成、(d)顧客参加型のサービス計画支援に関する科学的知見を積み上げ、顧客の異質性・多様性への柔軟な対応を実現する。
  • 株式会社 ジェイティービー
  • 首都大学東京 大学院都市環境科学研究科 観光科学域
  • 東京大学 大学院工学系研究科
文脈視点によるサービス価値共創モデルの研究 藤川 佳則 一橋大学
大学院国際企業戦略研究科
准教授
 本課題では、世界各地で分野横断的な議論が進行する「サービス・ドミナント・ロジック(S−Dロジック)」に焦点をあてる。S−Dロジックは、モノとサービスを区別せず、企業と顧客が共に価値を創造する「価値共創」を前提として経営論理を読み解こうとする取り組みである。その中核概念の構造化や操作化、計測化を通じて、サービスの「学問と現場」「社会科学と自然科学」「日本の知見と世界の知見」の橋渡しを目指す。
  • 明治学院大学 経済学部
  • 株式会社 公文教育研究会
  • 株式会社 良品計画

<プロジェクト企画調査>

題名 研究代表者名 所属・役職
国別適応型サービス設計のためのサービス価値導出プロセスの観測と同定のための企画調査 淺間 一 東京大学
大学院工学系研究科
教授
製販一体型の情報循環実現に向けた顧客サービスの計測・解析に関する企画調査 貝原 俊也 神戸大学
大学院システム情報学研究科
教授
地方都市活性化のための社会シミュレーションモデル企画調査 寺野 隆雄 特定非営利活動法人 横断型基幹科学技術研究団体連合調査研究委員会
調査員
医療・介護サービスにおける場づくりと共創的イノベーションに関する企画調査 三宅 美博 東京工業大学
大学院総合理工学研究科
准教授

※2 A:「問題解決型研究」:具体的なサービスを対象に、当該サービスに係る問題解決のための技術・方法論などを開発して問題を解決するとともに、得られた技術・方法論が「サービス科学」の研究基盤の構築に貢献することを目的とする研究。

B:「横断型研究」:研究エレメントに焦点を当て、新たな知見を創出し積み上げることで体系化し、「サービス科学」の研究基盤を構築する。それにより将来的に現場のさまざまな問題解決に応用され、サービスの質・効率を高め、新しい価値の創出に貢献することを目的とする研究。

<総評>プログラム総括 土居 範久(中央大学 研究開発機構 教授)

平成22年度から開始された研究開発プログラム「問題解決型サービス科学」は、「サービス科学」の研究基盤を構築すること、および研究成果を様々なサービスに活用し社会貢献をするために有効な技術・方法論などを開発し、「サービス科学」の研究者・実践者のコミュニティの形成に貢献することを目指している。まだ日本ではなじみの薄い「サービス科学」の研究開発プログラムを構築するために、昨年よりワークショップを開催し、対象とする問題解決プロジェクトのイメージ、基礎となる研究エレメントなどの議論を行ってきた。初年度の公募では、研究者の「サービス科学」に対する考えを考慮し、対象領域を特定せず、幅広く社会におけるサービスの提供者・被提供者を含むサービスシステムに対し、質・効率の向上、新しい価値の拡大および「サービス科学」の基盤研究を目指す科学的アプローチによる研究を提案して頂くこととした。

これに対し、北は北海道から、南は沖縄まで、大学・研究所のみならず企業・NPO法人から、166件(A.問題解決型研究 139件、B.横断型研究 27件)の応募を頂いた。従来の科学研究と異なり「サービス科学」は、既存のサービスに科学的アプローチを導入してサービスの効率化・最適化を図るだけではなく、自然科学分野とマネジメント・マーケティング・文化人類学等の人文・社会科学分野を融合し、サービスの現場と協業することにより、サービスに関する科学的な概念・理論・技術・方法論の構築を目指すものであり、選考会ではこれらの観点を注視した。

書類審査、面接審査の際、学術的な先行研究については調査をしているがサービス領域の先進事例については調査が不十分であったもの、サービス科学の研究開発が目的であるのに対して研究計画が基盤の開発のみに止まっているもの、あるいは、サービス科学の新規性やビジネスへの応用が不明確であるものが見受けられた。また、対象領域は教育から都市開発と幅広いものの、ヘルスケア領域の提案が最も多く、この領域への関心の高さがうかがえた。

採択された提案は、サービスの基礎理論、サービスマネージメント、サービス工学に関わるものであり、以下のA.問題解決型研究2件、B.横断型研究2件、および企画調査4件の計8件となった。これらが「問題解決型サービス科学」研究開発プログラムのモデルケースとなるように、アドバイザリボードのメンバーと研究推進担当者とが一体となって本プログラムを実施していくつもりである。また、次年度以降の公募に向けて、本プログラムの情報発信に努めるとともに関係各位との議論を通じ「サービス科学」構築のために努力する所存である。

研究開発プログラム「地域に根ざした脱温暖化・環境共生社会」≪平成20年度発足≫

<研究開発プロジェクト>

カテ
ゴリ
※3
題名 研究代表者名 所属・役職 概要 研究開発に協力する関与者
環境に優しい移動手段による持続可能な中山間地域活性化 大日方 聰夫 特定非営利活動法人 まめってぇ鬼無里
理事長
 長野市鬼無里地区の地元NPOと住民が中心となり、平成の大合併後の中山間地域の生存を目指し、地域資源と再生可能エネルギーに基づく持続型低炭素地域社会システムの構想を構築する。なかでも、民生・農林・交通・観光部門への自然エネルギー活用を促し、地域環境と交通弱者らに配慮した地域振興とEV系移動システムなどの方法論を開発する。 (産)ながの森林組合鬼無里事業所、ながの農協鬼無里支店、鬼無里観光振興会
(学)信州大学教育学部、国際応用システム分析研究所(IIASA:オーストリア)
(官)鬼無里住民自治協議会、長野市
(市民)特定非営利活動法人 まめってぇ鬼無里、鬼無里地域振興研究会  他
都市部と連携した地域に根ざしたエコサービスビジネスモデルの調査研究 亀山 秀雄 東京農工大学
専門職大学院技術経営研究科
研究科長/教授
 本研究開発プロジェクトでは、ICT技術と小水力発電、蓄電技術、EV利用技術などにより、箱根・小田原地区を舞台にして、次世代の観光開発を設計するとともに、首都圏の住民と地域を、「ボランティア・ツーリズム」を通じた交流で結ぶことにより、居住地以外での環境活動を含むボランティア活動で、首都圏住民のライフスタイルの低炭素化を促すとともに、観光地とその周辺地域の活性化を実現するため、そのビジネスモデルの理論化と実現にむけた合意形成手法の確立を検討する。 (産)株式会社 小田原鈴廣、小田急電鉄 株式会社、箱根旅館組合
(学)東京農工大学 大学院技術経営研究科、北海道大学 観光学高等研究センター、早稲田大学 大学院商学研究科
(官)神奈川県、箱根町、小田原市
(市民)小田原足柄異業種勉強会、特定非営利活動法人 新宿環境活動ネット  他
環境モデル都市における既存市街地の低炭素化モデル研究 湯淺 墾道 九州国際大学
法学部
副学長/教授
 斜面地居住、中心市街地の衰退、高齢化による都市限界集落化など、さまざまな問題点を抱えている北九州市の既存市街地において、産・学・官・市民で構成する「次世代システム研究会」でのこれまでの検討実績を生かし、低炭素化を図りつつ諸問題を解決する仕組みの開発を行う。具体的には2050年の様子を推計した結果をもとに、循環・環境共生・長寿命ストック型の地域設計を行い、それに基づいて市民自身による低炭素化とまちづくりの実践の仕組みとして「エリアマネジメント公益法人」設立を試行し、衰退気味の市街地の低炭素化と活性化を同時に実現する本格的な街づくり構想を構築する。 (産)北九州商工会議所、株式会社 新日鉄都市開発、株式会社 光タクシー
(学)九州国際大学 社会文化研究所、北九州市立大学 国際環境工学部、九州職業能力開発大学校
(官)北九州市建築都市局、北九州市環境局環境モデル都市推進室
(市民)特定非営利活動法人 夢追いバンク、特定非営利活動法人 タウンモービルネットワーク  他
I/Uターンの促進と産業創生のための地域の全員参加による仕組みの開発 島谷 幸宏 九州大学
大学院工学研究院
教授
 自然エネルギーによるエネルギー自立と食料の自給が可能な農山村地域への人口還流は、我が国の温暖化対策における重要な要素の1つであるとともに、国土保全、森林利用のためにも必要不可欠である。本研究開発プロジェクトでは、市町村合併などにより体力が低下している地域自治体の現状をふまえ、I/Uターン者受け入れを促進し、「地域資源を活用した地域産業」創出を進めるため、地域内部の摩擦を克服し、全員参加で構築する地域経営体(社会的企業)の組織原則や仕組みの開発を行い、複数の地域で実証を行う。 (産)パシフィックコンサルタンツ 株式会社
(学)九州大学 大学院工学研究院、九州産業大学 工学部
(官)宮崎県五ヶ瀬町、静岡県西伊豆町、福島県飯館村
(市民)五ヶ瀬町夕日の里地区、特定非営利活動法人 南畑ダム貯水する会  他
Bスタイル:地域資源で循環型生活をする定住社会づくり 田内 裕之 独立行政法人 森林総合研究所 四国支所
産学官連携推進調整監
 森林やバイオマスエネルギーの高度利用を含む地域の自然資源活用により、脱石油型の地域産業や、小規模ながらも多くの生業(百業)の組み合わせで生活する、派手ではないが豊かな精神性をもつ低炭素型の地域のスタイル(Bスタイル)を定式化し、その要件と実現方法を開発するとともに、その普及の有効性を検証する。 (産)カワサキプラントシステムズ 株式会社
(学)高知大学 教育研究部、高知工科大学 地域連携機構
(官)独立行政法人 森林総合研究所 四国支所、高知県森林技術センター、仁淀川町
(市民)によど自然素材等活用研究会、特定非営利活動法人 土佐の森救援隊  他
地域再生型環境エネルギーシステム実装のための広域公共人材育成・活用システムの形成 富野 暉一郎 龍谷大学
法学部
教授
 化石資源に依存した社会から脱石油社会への構造改革を進めるには、それを全国で担う専門的かつ横断的な力量をもった大量の人材形成と活用方法の開発が必要である。すなわち、地方自治体などで再生可能エネルギー利用技術を地域社会に実装するのに必要な工学的および法・社会学的専門性と地域主体形成のファシリテーション能力をもった人材育成と、その人材を全国で共有し、効率的に活用するシステムの形成が必要である。本研究開発プロジェクトでは、CO削減に結びつく具体的実務作業を担うことができる地域公共人材の育成システムの開発・実証を行う。さらに、国レベルでの制度設計への提案を行う。 (産)新宿エコ事業者連絡会
(学)龍谷大学 地域人材・公共政策開発システム研究オープンリサーチセンター、早稲田大学 政治経済学術院
(官)東京都環境局 都市環境部、京都府府民力推進課、亀岡市市民協働推進課
(市民)特定非営利活動法人 環境市民、自然エネルギー政策プラットフォーム  他
主体的行動の誘発による文の京の脱温暖化 花木 啓祐 東京大学
大学院工学系研究科
教授
 家庭・学校・職場を通した主体的な脱温暖化行動を広めるための社会実験を東京大学などと東京都文京区の住民およびNPOが協力して実施する。すなわち、幼稚園・保育園、小・中学校を中心にして脱温暖化の学習と実践を試行し、さらに家庭・地域への拡大を促し、それに基づいた本手法の方法論化を進める。本地区の多数の大学の学生や区民を学習リーダーとして育てる活動を拡大することを通して、主体的行動の誘発による脱温暖化推進の有効性の検証を行う。加えて、中小企業と大規模事業所・大学などの場でも主体的な行動誘発による脱温暖化推進の試みを進め、その有効性を実証していく。 (産)株式会社 東京ドーム、共同印刷 株式会社
(学)東京大学 大学院工学系研究科、東洋大学 経済学部、東洋大学 国際地域学部
(官)文京区役所 資源環境部、文京区教育委員会
(市民)特定非営利活動法人 環境ネットワーク・文京  他

※3 Ⅰ:社会の問題を解決するための選択肢を提示しようとするもの(研究開発のあり方や科学的評価のための指標などの体系化など)。

Ⅱ:社会の問題の解決に資する具体的な技術や手法などについてその実証まで行おうとするもの。

<総評>領域総括 堀尾 正靱(東京農工大学 名誉教授)

研究開発領域「地域に根ざした脱温暖化・環境共生社会」は、平成20年4月に始まったユニークな領域である。その特徴は、(1)国内の研究開発公募としては最も早く、2050年までに、我が国の温室効果ガス(GHG)の発生を現状から60−80%削減するという課題を提示するとともに、(2)石油漬けの現代社会の総合的作り直し(「石油漬け近代」の作り直し)という大目標を掲げて小手先の温暖化対策を排し、(3)地域再生や生物多様性保全など関連課題を横断的に統合した解決策の創出を求めるとともに、(4)工学的技術シナリオと社会技術的シナリオとの構造的な結合を求めて、気分だけのエコではない定量的な脱温暖化戦略の設計を促し、さらに、(5)単なる上からの啓発にとどまらない、地域に根ざした研究開発計画を持つことを求めてきたことにある。

これに対し、第1年度の平成20年度公募では84件、平成21年度は57件の応募をいただいた。最後の公募となる今年度は、募集要項で研究開発領域の基本的な視点を、「中長期的課題としての「近代の作り直し」、「GHG対策の視点」、「技術と人的・社会的要素の結合」、「ロードマップ作成と削減の概算」、「地域の主体形成と担い手育成の重視」にわけて改めて詳細に解説した。さらに、第2回領域シンポジウム「地域のヒト・モノ・カネ・エネルギーを脱温暖化につなぐ」を公募開始直後の4月23日に開催し、メッセージの発信に努めた。

最終年度にも関わらず、また、必ずしも容易ではない課題設定を要求したにも関わらず、北は北海道から南は沖縄まで、大学や研究機関のみならずNPOや企業をふくみ、全49件という多数の応募があった。このことは、本研究開発領域から発信してきたメッセージが広く受け止められてきたことを示唆するものと思われる。しかし、脱温暖化・環境共生に向けた内外の展開も極めて迅速であり、そのような時代をリードするための研究開発構想の新規性や、技術シナリオと人的・社会的シナリオを結合して実質削減効果を生み出す「全体シナリオ」の具体性という点では、書類審査で上位の提案でも、なお評価が分かれるなど、今年度も新規な領域構想に伴う困難を経験した。書類審査会(7月12日)は、慎重な討議の後、15件(うち2件がカテゴリーⅠ、2件がカテゴリーⅡからⅠへの変更を条件とした)を選出し、審査コメントを添えて面接選考に付託した。ついで、8月25日に開かれた面接選考会は、今後研究開発領域の目標を実現していくうえで重要と考えられるプロジェクト提案として、カテゴリーIの提案を3件(うち2件がカテゴリーⅡからⅠへの変更を条件とする)とカテゴリーⅡの提案を4件採択することとした。以上より、本研究開発領域は、地方への人口還流、脱温暖化に向けた自治体の体力増強のための横断的専門人材の育成と活用体制、都市再開発、地域と子どもたちを巻き込んだ脱温暖化作戦などの分野を強化し、また地域的には、北海道、東北、関東、中部、関西、中国、四国、九州と、ほぼ全国に研究開発フィールドを持ち、多角的に「地域に根ざした脱温暖化・環境共生社会」づくりを目指す体制を実現した。

いま、脱温暖化・環境共生をめぐり、世界では目まぐるしい早さで各種の試みが進められている。本研究開発領域では、開始以来、激動する時代の中でのフロントランナーたるべく、各プロジェクトを的確に支援するためのマネジメントを、研究開発領域全体として組織的に行ってきた(プロジェクト横断型のワーキンググループやタスクフォース、関係省庁や企業・自治体などとの連携、国内外への最先端のコンセプトの発信やアウトプットづくりなど)。今年度採択した新たな切り口のプロジェクトの参画を得て、さらに研究開発活動を活発化し、脱温暖化・環境共生社会づくりにおける全国的なリーデイングモデルとなるよう、アドバイザリーグループ、プロジェクト担当者、関連地域の皆様、その他ご関心をお持ちの方々らと手をたずさえ、鋭意努力して参りたい。