JSTトッププレス一覧科学技術振興機構報 第754号別紙2 > 研究領域:「アレルギー疾患・自己免疫疾患などの発症機構と治療技術」
別紙2

平成22年度(第1期) 新規採択研究代表者・研究者および研究課題の概要

CREST

戦略目標:「花粉症をはじめとするアレルギー性疾患・自己免疫疾患等を克服する免疫制御療法の開発」
研究領域:「アレルギー疾患・自己免疫疾患などの発症機構と治療技術」
研究総括:菅村 和夫(宮城県立がんセンター 総長)

氏名 所属機関 役職 研究課題名 研究課題概要
渋谷 彰 筑波大学 大学院人間総合科学研究科 教授 ヒト肥満細胞活性化制御技術の開発によるアレルギー疾患の克服  アレルギーの多くは肥満細胞から放出される化学物質によって引き起こされます。我々はこれまでに、これらの化学物質の放出を抑制する免疫系受容体、アラジン-1およびメア-Iを同定しました。本研究ではヒト肥満細胞に発現する新たな抑制性免疫系受容体を探索し、アレルギー疾患発症機構におけるこれら受容体の役割を解明します。さらに、抑制性免疫系受容体を分子標的とした、花粉症や喘息などに対する革新的医薬品の開発を目指します。
竹田 潔 大阪大学 大学院医学系研究科 教授 自然免疫系を標的とした腸管免疫疾患の制御技術の開発  炎症性腸疾患をはじめとした免疫疾患の多くが、自然免疫系の異常により発症することが明らかになってきています。腸管の免疫系は、他の組織にはない特有のシステムを構築しており、自然免疫担当細胞も特有の細胞サブセットが存在し、腸管粘膜免疫系を制御しています。本研究では、自然免疫系による腸管粘膜免疫制御機構を明らかにして、その異常により発症する腸管免疫疾患の治療技術の開発を目指します。

(五十音順に掲載)

<総評> 研究総括:菅村 和夫(宮城県立がんセンター 総長)

本研究領域は、アレルギー疾患や自己免疫疾患を中心とするヒトの免疫疾患を予防・診断・治療することを目的に、免疫システムを適正に機能させる基盤技術の構築を目指す研究を対象としています。

アレルギー疾患や自己免疫疾患には国民のQOLを低下させ、日常生活に多大な影響を与えるものから重篤な場合には死に至るものまであり、これら疾患の克服には、これまでの分子、細胞、組織レベルにおける免疫制御機構に関する理解を個体レベルの高次調節免疫ネットワークシステムの理解へと発展させなければなりません。このような戦略目標の下に平成20年度から本研究領域が公募されました。

本年度は3回目、最後の公募となり、申請件数は種別ⅠとⅡを合わせて29件でした。申請課題を見ると、これまでと同様に免疫疾患制御の基礎的研究から治療法開発までを視野に入れた極めてレベルの高い内容が多くみられました。また、本年度は感染防御や炎症制御など比較的広い視野から免疫疾患制御を捉えた申請課題もみられました。

これらの申請課題から、領域アドバイザーの協力を得て先ず始めに書類選考を行い、種別Ⅰ、Ⅱからそれぞれ3課題を選び、面接選考を行いました。なお、本領域は「免疫制御療法の開発」を謳っていることから、昨年度までと同様に領域アドバイザーには基礎から臨床までの幅広い研究者に参加していただきました。利害関係にも十分配慮して選考を行った結果、種別Ⅰ、種別Ⅱからそれぞれ1課題を最終的に採択するに至りました。採択課題は、いずれも独創的且つ優れた研究実績を基盤として、革新的な治療法の開発に結びつくような内容となっています。具体的には、自然免疫系を標的とした腸管免疫疾患の制御技術やヒト肥満細胞の活性化を抑制する受容体を分子標的としたアレルギー疾患制御技術の開発です。いずれの課題でも研究代表者が世界をリードしてきた研究成果を基に計画されおり、今後の本領域の発展に大きく寄与するものと考えます。

本年度不採択であった課題の中にも独創的で、優れた提案が多数見受けられました。今後はそのような研究者の方々と公開シンポジウム等を通じて当該分野の発展に向けた議論を行って参りたいと思います。