本新技術の背景、内容、効果は次のとおりです。

(背景) 下水汚泥を高速に減量・資源化する方策が求められている

 従来、下水汚泥の有効利用には、脱水処理した後にコンポスト・肥料などへの転換、焼却灰の建設資材への利用、濃縮汚泥をメタン発酵でバイオガスに転換し、熱・電気エネルギーに利用するなどの方法がありました。本新技術は、濃縮汚泥を酸発酵させ、また有機酸を回収するという新しい汚泥有効利用の方法を提供するもので、高速処理性能と、高い減量率を確認しました。また、下水処理場内部で汚泥から有機酸を抽出し、資源リサイクルを図ることが可能となりました。

(内容) シンプルな処理装置により、高速で汚泥を可溶化できる

 超音波照射器、アルカリ添加装置、酸発酵槽、温水装置を主要素とする、シンプルなシステムを、既存の下水処理施設に付加することで、50%以上の汚泥可溶化(浮遊物質SSの分解・低分子化)を実現できるシステムとしました(図1)。実証試験装置は、酸発酵プロセスと超音波・アルカリ(水酸化ナトリウム)処理プロセスを一部並列・循環処理させて良好な性能を得ました。なお、下水処理場の汚泥の成分の違いに応じ、酸発酵菌活性化のためのビタミン添加を行う選択肢も提案しました。

(効果) 下水汚泥を有機酸に変換する資源化システムが提供できる

 濃度4%の汚泥処理能力2.5m3/日(人口2000人の自治体の処理場規模に相当)の実証試験装置を製作し、実際の汚泥処理施設において処理実験を行い、次の結果を得ました。
汚泥滞留日数2日間の条件で、汚泥中SSの平均可溶化率約51%が実現できました。
処理後の汚泥を分析し、原汚泥有機物の約1/4が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸などの有機酸に変換されたことを確認しました。この有機酸は、下水処理場の脱窒高度処理用還元剤として用いられてきたメタノールの代替薬剤として、場内でリサイクル利用することにより運転費の節減も期待されています。
 本技術を既存の下水処理場に組み込むことにより、高速可溶化と汚泥有機物の有効利用が可能な、システム改良の見通しが得られました。
 本システムは今後、下水処理設備の高度化において広く採用されることが期待されます。

【用語解説】
SS suspended solids(浮遊物質)の意。下水汚泥中の有機性固形物の量をあらわす尺度として用いられている。
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