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別紙

戦略的国際科学技術協力推進事業「日本-スイス(ETHZ)研究交流(医学研究)」
平成21年度採択課題 一覧

研究交流課題 日本側
研究代表者
所属・役職 研究交流課題概要
スイス側
研究代表者
着床前胚およびiPS細胞誘導過程におけるポリコーム群を介した多能性獲得メカニズムの解明 古関 明彦 独立行政法人 理化学研究所
免疫・アレルギー科学総合研究センター

グループディレクター
 本研究交流は、初期胚あるいはiPS細胞が誘導される過程における多能性獲得の分子メカニズムの解明を目指す。特に、ポリコーム群と呼ばれるエピジェネティック因子の機能発現機序の解明に焦点を絞る。
 具体的には、日本側は主に、iPS細胞をモデルにして体細胞がリプログラムされていく過程の研究を行い、スイス側は受精前の配偶子から着床前胚にいたる過程をモデルとした研究を行い、そこで共通するメカニズムを明らかにする。2ヵ国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、細胞のリプログラミングに普遍的なメカニズムが明らかにされ、より安全な細胞治療の基盤を作製することにつながることが期待される。
アントアン・ピーターズ フリードリッヒ・ミーシャ医科学研究所

グループリーダー
概日時計と気分障害-動物モデルからヒト疾患まで 内匠 透 広島大学
医歯薬学総合研究科

教授
 本研究交流は、哺乳類における時計遺伝子の発見以来、急速に進んだ概日リズムの実験手法を用いて、気分障害と概日時計の関係に注目して研究を進め、うつ状態での概日リズムの分子病態解明とともに、うつをはじめとする気分障害の新規診断法開発の基盤作りを目指す。
 具体的には、日本側は時計遺伝子のリン酸化とヒト疾患との関連を分担し、スイス側は時計遺伝子の細胞内局在とマウスモデルとの関連を分担する。両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、リズムとうつという社会的にも大きな問題である現象に客観的な科学的根拠を与えるだけでなく、気分障害の新規診断法開発の基盤につながることが期待される。
アルブレヒト・ウルス フリブール大学

准教授
DNA損傷応答機構の遺伝子破壊株を使った、プロテオソーム解析による抗がん治療の為の標的分子の同定 武田 俊一 京都大学
医学研究科

教授
 本研究交流はがん治療の標的分子を新たに見つけることを目指す。従来のがん治療は放射線治療に代表されるように、染色体DNAを損傷して正常細胞と共にがん細胞を殺す方法であった。最近のがん治療では、DNA修復の機能ががん細胞では正常細胞よりも低下していることに着目し、がん細胞の修復機能をさらに阻害することによって、正常細胞を傷めることなくがん細胞を選択的に殺す手法が模索されている。この考え方を基盤に、DNA損傷を修復するさまざまな酵素を阻害する薬剤が抗がん剤として開発されつつある。
 具体的には、DNA修復の機能を持つ今まで未知であった酵素を同定し、その酵素を阻害する抗がん剤の開発につなげて行くことを目的とする。酵素を同定するために、日本側は遺伝学的解析を分担し、スイス側はプロテオノミックスを分担する。
 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、新しいがん治療手法の開発につながることが期待される。
ジリクニー・ ヨーゼフ チューリッヒ大学

教授
胞子虫類原虫における宿主内作動性エフェクター因子の機能的解析 山本 雅裕 大阪大学
医学系研究科

助教
 本件研究交流は、熱帯地域で猛威を振るっているマラリアや後天性免疫不全症候群(AIDS)患者において重大な問題となっているトキソプラズマ症の原因病原体である胞子虫類原虫がどのようにして宿主細胞からの排除機構を逃れているかを特に原虫が宿主細胞に打ち込むエフェクター分子に注目して明らかにすることを目指す。
 具体的には、日本側は胞子虫類原虫エフェクター分子と相互作用する宿主因子の同定とその遺伝子改変マウスの作出を通じて哺乳動物の抗原虫応答を生体レベルで解明することを分担し、スイス側はエフェクター分子を欠損する原虫の網羅的な作製により病原性に関与するエフェクター分子のスクリーニングを分担する。2ヵ国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、宿主-病原性原虫の相互作用の包括的な解明と新規エフェクター分子と宿主因子の同定によるマラリア症/トキソプラズマ症の新規治療戦略の作出につながることが大いに期待される。
ドミニク ソルダーティ・ファーブル ジュネーブ大学
医学部

准教授