課題名 | 日本側 研究代表者 |
所属・役職 | 課題概要 | |
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ドイツ側 研究代表者 |
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1 | 先端スピントロニクス材料と伝導現象 | 安藤 康夫 | 東北大学 大学院工学研究科 教授 | 本課題は、超低消費電力デバイスの創成を可能とするスピントロニクス技術開発を目的とする。 スピン伝導、スピン注入、スピン操作、スピン流の検出のための新機能性材料、素子、計測技術を開発する。また、新材料および素子界面構造に関する理論解析を行い、実験をサポートする。日本側は材料および素子の作製に、ドイツ側はそれらの設計および解析においてそれぞれリーダーシップをとり、お互いの研究を相補的に進める。 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、将来のスピントロニクスのための基盤技術として貢献することが期待される。 |
Claudia Felser (クラウディア・フェルサー) |
マインツ大学 無機化学研究所 教授 | |||
2 | ダイヤモンドの同位体エンジニアリングによる量子コンピューティング | 磯谷 順一 | 筑波大学 大学院図書館情報メディア研究科 教授 | 本課題は、ダイヤモンドのカラーセンターの単一スピンを用いて室温で動作する数キュービットの量子論理回路の実用化を目的とする。 日本側では、同位体濃縮を利用し固体・室温で特異的に長いNVセンターのコヒーレンス時間をさらに2桁長くするとともに、高収率にNVセンターを作製する欠陥制御技術を確立する。これをドイツ側の量子情報処理の先端技術と組み合わせ、双極子相互作用を用いた制御NOTゲートの応用による多量子ビット化などの、新たな展開を可能とする。 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、ビット数拡張の基盤技術の確立が量子シミュレータや量子コンピュータの実現に貢献することが期待される。 |
Fedor Jelezko (フェドー・イェレツコ) |
シュツットガルト大学物理学教室 講師 | |||
3 | トポロジカルエレクトロニクス | 樽茶 清悟 | 東京大学 大学院工学系研究科 教授 | 本課題は、新しい量子力学的自由度を利用するエネルギー散逸のないエレクトロニクスの構築を目的とする。 “トポロジカルエレクトロニクス”とは「幾何学的に量子性が保証される現象の電気的制御を原理とするエレクトロニクス」という意味で、具体的には、(A)スピン軌道相互作用、(B)トポロジカル絶縁体、(C)非局所的なエンタングルメント生成、という典型的な現象に注目して研究を行う。日本側チームは主に(A)と(C)、ドイツ側は主に(A)と(B)の研究を担当する。 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、将来の低消費電力エレクトロニクスと高度情報処理に貢献することが期待される。 |
Laurens W.Molenkamp (ローレンス・W・モーレンカンプ) |
ヴュルツブルク大学 実験物理学部 EP3 教授 |
<総評> 研究主幹 宮野 健次郎(東京大学 先端科学技術研究センター 所長)
本プログラムでは、現在日本とドイツでそれぞれに先端的な研究が展開されている「ナノエレクトロニクス」において、両国の協力を緊密にすることによって、世界的な研究成果や革新的な技術を創出しうる課題を選定することを目的として、審査を行いました。
日独合同評価委員会は、応募のあった19件を対象として両国合同書類選考会を実施し、その中から4件をヒアリング対象として選び、合同面接選考会を開催しました。
合同選考会では、研究内容の吟味のほかに、(1)現在世界的に競われている分野であって、より緊急性が高いと思われるテーマであること、(2)双方の研究手法が補完的な関係にあり、日独協力によって研究の進展が飛躍的に加速すると期待されるチーム構成であるもの――の2点を加味して検討を行いました。採択に至らなかった申請にも優れたものが多数ありましたが、以上のような過程を経て日独審査委員の双方から高い評価が得られた、上表に掲載されている3件を最終的に採択するに至りました。