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別紙2

「光機能性プローブによるin vivo微小がん検出プロジェクト」総合評価結果

提案者は戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)において、論理的設計法に基づき環境に応答してON/OFFする蛍光プローブの開発に成功し、その技術を応用してモデルマウスにおいて1mm以下の微小がんの検出にも成功した。

提案者はその成果を元に、効果的な蛍光プローブを開発し、がんの内視鏡下での診断や術中支援の光イメージングとしての臨床応用を目指すことを提案している。

分子・細胞レベルの情報を生きたまま画像化する分子イメージング技術が世界的に注目されているが、本研究プロジェクトは新規蛍光プローブを活用し、分子イメージング技術によるがん診断の臨床応用を進めるものであり、今後医療技術の発展に大きなインパクトを与えるものと期待される。

本研究により、がん部位の持つ生物学的特徴を認識して、プローブ投与から数分以内に微小がん部位を検出する機能性蛍光プローブが開発され、さらには治験申請に必要な前臨床試験データの蓄積が期待される。提案者はすでにがん細胞特異的な酵素反応を発見し、その反応に応答する蛍光プローブを作製し、微小がん組織を検出することに成功している。今後、臨床研究チームと共同で、実際のヒトのがん組織を用いて蛍光プローブの実効性が検証され、また、内視鏡メーカーと共同で蛍光プローブによるS/N比の高いがん部位検出用カラー蛍光内視鏡の開発も進められる。

分子イメージング技術は国際競争の極めて激しい領域である。米国のベンチャー企業と対抗する上で、研究予算の集中投資と開発期間の短縮が最重要である。その意味で提案された研究計画と研究体制は具体的であり、極めて妥当である。

なお、臨床研究に関しては国内にせよ米国にせよ実情の調査を十分に行い、適切な前臨床データ蓄積を行うべきである。また、内外での特許制度の違いを踏まえて本技術の知的財産戦略を構築し特許出願をして欲しい。

以上から、本評価委員会としては、JSTが本提案を元に切れ目なくサポートすることで、当該研究を加速強化する必要があると判断するものである。

平成21年11月10日
「光機能性プローブによるin vivo微小がん検出プロジェクト」評価委員長
京都大学 大学院医学研究科 教授
鍋島 陽一