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別紙1

A−STEP「本格研究開発ステージ 実用化挑戦タイプ(中小・ベンチャー開発/創薬開発)」
平成21年度第1回採択課題 一覧

中小・ベンチャー開発(採択課題10件) 【研究開発期間:5年まで、研究開発費の総額:3億円まで】

大学などのシーズについて、研究開発型中小・ベンチャー企業での実用化開発を支援

【情報通信分野(2件)】

課題名 新技術の
代表研究者
開発実施企業 新技術の内容
オンデマンド交通サービス支援システム 東京大学 大学院新領域創成科学研究科
教授

大和 裕幸
順風路 株式会社  本新技術は、利用者が好きな時間にバスを予約でき、約束した時間を守って運行するオンデマンド交通を支援する、独自の運行計画生成アルゴリズムを核としたシステムに関するものである。従来、オンデマンド交通の運行には人の経験に頼ることが多分にあった。
 本新技術では、オンデマンド交通の利用ログをマイニングして個人の次の利用を推測する予約提案アルゴリズムや、社会における人の移動パターンや需要の発生具合を考慮して地域に最適な運行状態を決定する人の移動分析ツールなどにより、乗合を増加させ運行の効率を高めることが可能となる。オンデマンド交通の普及に資することが期待される。
フルデジタルスピーカー信号処理用LSI 法政大学 理工学部
教授

安田 彰
株式会社
Trigence
Semiconductor
 本新技術は、デジタル信号で複数のスピーカーユニットを直接駆動し、スピーカー本体でD/A変換を行う、フルデジタルスピーカー用の信号処理に関するものである。音声の記録・配信がアナログからデジタル化される中、音声再生は依然としてアナログスピーカーを鳴らしている。
 本新技術では、独自のデジタル信号処理により変調したデジタル信号により、音圧に応じてスピーカーユニット数を動的に制御することで音声を再生しているので、音声再生に必要な消費電力の大幅な削減が期待される。また、新技術はデジタル信号処理のみで実現可能なために、実装には微細プロセス技術を活用することができるので、音声再生機器の半導体コストの削減も期待される。

【装置・デバイス分野(1件)】

課題名 新技術の
代表研究者
開発実施企業 新技術の内容
超高感度高速度イメージセンサ 静岡大学 電子工学研究所
教授

川人 祥二
株式会社 ブルックマン テクノロジ  本新技術は、超高感度撮像と高速度撮像の両立を可能にするイメージセンサに関するものである。従来のイメージセンサの電子シャッタ構造とA/D変換技術ではノイズが大きく十分な感度が得られない。また、高速度撮像時には強い照射光を当てて被写体を明るい照明下に置く必要があった。
 本新技術では、センサ画素部に低ノイズ化が可能な一括電子シャッタ技術を新しく導入するとともに、高速度、低ノイズ性能に優れた新規なカラム並列巡回型A/D変換技術を用いることで、イメージセンサのノイズを電子数個レベルまで抑え、超高感度かつ高速度の撮像を可能にする。これにより人の眼ではとらえられない超高速現象を、普通照明下で容易に撮像できるようになることが期待される。

【無機化学分野(3件)】

課題名 新技術の
代表研究者
開発実施企業 新技術の内容
環境中のヨウ素129モニタリング法 独立行政法人 農業環境技術研究所 土壌環境研究領域
主任研究員

藤原 英司
株式会社 イアス  本新技術は、反応セルを装備した誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)を用いて環境中のヨウ素129を分析する手法に関するものである。従来、人工放射性核種の一種であるヨウ素129の環境モニタリングは、中性子放射化分析法(NAA)によって行われてきたが、試料前処理が複雑であること、分析結果を得るまでに数日を要すること、および特殊な放射化施設を用いる必要があることから、代替となる分析法の確立が求められていた。
 本新技術ではICP−MSに改良を加えることでNAAの性能レベルを上回る検出下限0.1mBq水準の高感度測定を可能とし、これにより高感度でかつ利便性・分析作業効率に優れたヨウ素129モニタリング法の実現が期待される。
プラズマ誘起電解法によるタンタルナノ粒子連続製造システム 同志社大学 理工学部
教授

伊藤 靖彦
アイ’エムセップ 株式会社  本新技術は、微細で均一なタンタルナノ粒子の製造に関するものである。タンタルコンデンサの小型化・高容量化のため、タンタル粒子の微細化が求められているが、従来の製法では微細化の限界に近づきつつある。また、タンタルは希少金属であり、廃材からのリサイクルが可能なナノ粒子量産技術が求められている。
 本新技術では、陽極より供給する金属イオンを、陰極放電現象を利用した電解により還元し、電解質塩中に金属ナノ粒子を形成させるプラズマ誘起電解法を用いることにより、微細なタンタルナノ粒子の製造が可能となり、またタンタルのリサイクルや製造速度の調節も容易となる。本新技術により、タンタルコンデンサのさらなる小型化・高容量化が期待される。
放射性診断薬99mTc国産設備 千葉大学 大学院薬学研究院
教授

荒野 泰
株式会社 化研  本新技術は、がんや臓器疾患の核医学診断に使われている放射性テクネチウム(99mTc)の製造に関するものである。従来、99mTcの原料であるモリブデン99(99Mo)の全量を海外に依存しているが、ウランを原料とする99Mo 製造(Fission法)を担ってきた海外の原子炉のトラブルで99Mo の製造供給が停止する事態が頻発しており、99mTcの安定供給が求められている。我が国ではFission法による99Mo 製造は困難で、天然モリブデン化合物を原料とする中性子放射化法((n,γ)法)が、99Mo 国産化の最も現実的な方法となる。
 本新技術では、新たな99mTcの吸着・精製方式により、(n,γ)法で作製した99MoからFission法と同等の99mTcを製造することが可能である。国産の99mTc放射性診断薬が期待される。

【アグリ・バイオ分野(1件)】

課題名 新技術の
代表研究者
開発実施企業 新技術の内容
オーガニックトラフグ雄の養殖技術 東京農業大学 生物産業学部
講師

松原 創
西南自動車工業 株式会社  本新技術は、トラフグ養殖における寄生虫駆除および雄化誘導を、安心・安全・安価な食品により実現することを特徴とするオーガニック養殖に関するものである。これまで、トラフグ養殖では死亡率の高い寄生虫による被害をなくすこと、また雌より10〜20%程度成長率が高く、身より高値で取引される精巣を有する雄のみの生産が望まれていた。
 本新技術では、薬品ではなく食品による寄生虫の駆除、および食品由来のストレス刺激により雄の大量生産が可能となり、これまで魚類の養殖では困難であったオーガニック養殖が実現され、オーガニックトラフグ雄の大量生産が期待される。

【医療技術分野(2件)】

課題名 新技術の
代表研究者
開発実施企業 新技術の内容
ハイドロキシアパタイト膜形成による革新的歯科治療法 東北大学 大学院工学研究科
教授

厨川 常元
株式会社 サンギ  本新技術は、粉状のハイドロキシアパタイトを用いた齲歯(虫歯)の治療に関するものである。歯科における虫歯治療の現状は、齲蝕部を機械的に削り取り、歯質とは組成や機械的特性の異なる金属やレジンなどを埋め込むものが主流であるが、使用材料の経年劣化により脱落し、再治療を要することも多く、また複数回の再治療を繰り返すうち、歯質の崩壊が進み、抜歯に至る場合もある。
 本新技術では、粉体の高速衝突現象を利用した材料付着現象を応用し、室温、大気圧環境下でハイドロキシアパタイト厚膜をヒトの歯面(エナメル質、象牙質)に成膜させることが可能である。虫歯治療、予防歯科、さらに審美歯科での利用が期待される。
未来型運動器インプラントの3次元手術支援部材およびシステム 大阪大学 大学院医学系研究科
講師

村瀬 剛
ナカシマメディカル 株式会社  本新技術は、3次元画像を用いた手術のシミュレーションに関するものである。近年、CTなどの3次元画像診断が急速に発達して、運動器医療の分野でも重要な診断や手術計画のツールとなっている。
 本新技術では、CTやMRIなどの医用画像から手術対象骨の3次元モデルを再構築し、それに基づく手術シミュレーション、シミュレーション結果を正確に遂行する方法として、骨表面形状を転写した嵌合面を有するカスタム手術支援部材およびシステムを開発することで、高精度の骨・関節手術を可能とする。患者別に形状が最適化されたカスタムインプラントである未来型運動器に対応し、高度手術の支援法として患者のQOLの向上が期待される。

【創薬分野(1件)】

課題名 新技術の
代表研究者
開発実施企業 新技術の内容
ダウン症患者で早期に発症するアルツハイマー病治療薬 東京医科歯科大学 大学院疾患生命科学研究部
教授

萩原 正敏
株式会社 キノファーマ  本新技術は、ダウン症患者に好発するアルツハイマー病の治療薬に関するものである。ダウン症はヒト21番染色体の一部が3本になる異常(トリソミー)により知的障害、心房中隔欠損などを伴う先天性疾患で、40代以降からアルツハイマー病を高率で発症するとの報告が最近相次いでいる。ヒト21番染色体のトリソミーになっている一部の重要領域に位置するリン酸化酵素遺伝子がダウン症患者で発現亢進していることが、アルツハイマー病が好発する原因であると予想される。
 本新技術では、このリン酸化酵素を特異的に阻害する低分子化合物を開発することにより、ダウン症患者におけるアルツハイマー病の予防および治療が可能になると期待される。

創薬開発(採択課題1件) 【研究開発期間:5年まで、研究開発費の総額:10億円まで】

大学などのシーズについて、革新的な医薬品などの実用化開発を支援

【創薬分野(1件)】

課題名 新技術の
代表研究者
開発実施企業 新技術の内容
RNA干渉によるクローン病腸狭窄症治療薬 新潟大学 医歯学総合病院
講師

鈴木 健司
株式会社 ステリック再生医科学研究所  本新技術は、全世界で100万人以上が罹患している胃腸病であるクローン病を対象疾患とした治療薬に関するものである。従来、炎症・免疫制御医薬による抗炎症治療が行われてきたが、腸狭窄に対する外科手術症例は減少しておらず、患者は再狭窄・入退院の繰り返しを余儀なくされており、腸狭窄の原因である線維化を如何に非侵襲的に抑制するかが課題である。
 本新技術では、腸線維化狭窄の原因になっている糖鎖遺伝子を明らかにし、それを選択的に阻害するRNA干渉医薬品と臨床実現性の高い腸用ドラッグデリバリーシステムにより、クローン病腸狭窄症の治療が可能となり、患者のQOL改善が期待される。