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別紙3

北澤 宏一 科学技術振興機構 理事長 メッセージ

科学技術振興機構(以下、JST)は、低炭素社会づくりに向けた活動をさらに強化するため、本日、「低炭素社会戦略センター」を設置しました。

低炭素社会づくりに向けた取り組みは、私たち現世代と子供たちの世代との価値観の共有・共感につながるものであり、今後数十年にわたって人類が大きな努力を払っていかねばならない長期的課題です。現在、温室効果ガス排出削減の2020年における中期目標の達成に向けて、関係府省や産業界においてさまざまな企画がなされていますが、その解決には、個人の生活から経済、社会などさまざまな人間活動において大きな努力が必要であるとされています。しかし、温室効果ガス排出を大幅に削減する科学技術の画期的なブレークスルーが起きれば、人類の未来により明るい展望を描くことができます。科学技術は低炭素社会実現において非常に大きな役割を果たしうるものであり、またそのような期待に応えていかねばなりません。

JSTはこれまで発光ダイオードや高温超伝導線材、iPS細胞など個別の新技術についてその技術シーズの創出から実用化までを支援し、新しい価値の創造に貢献してきました。今後は、低炭素社会実現に対する社会の期待に応えるための戦略的な研究開発の推進への取り組みを強化し、2020年の中期目標を期待よりも容易に達成するためのブレークスルーの創出、さらに2050年における長期目標の達成に向けて、2020年以降に実現を期待できる新たな有望な技術シーズの創成に貢献します。

このような低炭素社会づくりに向けた研究開発の戦略立案の司令塔の役割を果たすのが「低炭素社会戦略センター」です。本センターは、直接に中期目標の実行責任を有する府省とは独立・中立の観点に立った独自の調査・予測を行うことによって、2020年あるいは2050年に達成すべき低炭素社会の姿を積極的に描き、それに至る道筋を生活様式、社会構造、産業構造、技術体系などの要素によって示したシナリオを策定します。特に、明るく豊かな社会の実現に向けて、革新技術によるブレークスルーの可能性をさまざまな角度から検討します。また、それらの研究開発を推進し、成果を社会に根付かせるための具体的な方策を提案します。そして、未来を担う若者たちや学校、家庭、社会に向けた情報の発信を継続的に行っていきます。

JSTは、「低炭素社会戦略センター」が策定したシナリオを活用して、新たなブレークスルーとなる革新技術の創出や既存技術を飛躍的に改善するなどの研究開発の推進に取り組み、低炭素社会実現に向けたイノベーション創出に貢献する機関として社会の負託に応えていく所存です。