本新技術の背景、内容、効果の詳細は次のとおりです。

(背景) 短期間で高品質のコンポストができる装置への要求

 現在、我が国で排出されている産業廃棄物のうち下水処理汚泥を中心とする汚泥の処理・処分は、脱水後の埋め立て、若しくは、脱水→乾燥→焼却後の埋め立てが主流ですが、処分場の不足や環境汚染等の問題から、汚泥の有効利用が強く求められています。下水汚泥などの有機系廃棄物の再資源化技術としては、微生物によるコンポスト(堆肥)化が、環境的にもエネルギー的にも有効であると考えられており、既に様々なコンポスト化装置が開発されています。しかしながら、これらの装置を用いた場合でも、コンポスト化には通常数ヶ月程度の期間が必要となるため、敷地面積や装置容量が大きくなり、建設費の増大を招いています。このため短期間でコンポストができる装置が求められている。

(内容) 汚泥から短期間でコンポストを製造するシステム

 本新技術は、下水汚泥などの有機系廃棄物を短期間でコンポスト化する高速コンポスト化システムに関するものです(図1図2)。
 本システムでは、処理する汚泥と製造したコンポストを特殊ミキサーで高圧混練し、水分調整や通気性の改善、発酵の促進を図るとともに、コンポスト中におがくずなどが残ることによる品質の低下を避けることができます。また、汚泥とコンポストの混合時に、団粒構造を形成させることで、非常に通気性の良い状況とした上で、発酵槽下部からの通気と、上部からの吸引を同時に行うことにより、極めて好気的な条件で発酵を行うことができます。これにより、コンポスト化の期間を短縮できるとともに、最高90℃程度の高温発酵により、病原菌や寄生虫、雑草種子を死滅させることができます。また、発酵槽から吸引した空気を、通気用の空気として発酵槽に還流することで、コンポストによる吸着と微生物による分解で脱臭が行われ、発酵槽以外に脱臭設備を必要としません。このように、本システムは、ごく短期間に、衛生的なコンポストを汚泥から作ることができます(図3)。

(効果) 下水汚泥等のコンポスト化と、コンポストの有機栽培農業等への利用

 本新技術による高速汚泥コンポスト化システムは、
  1 好気性高温代謝型の発酵により、必要滞留日数を短縮でき、原料受け入れ部分以外は脱臭設備が不必要。
  2 病原菌や寄生虫卵、雑草種子を死滅させるのに十分な高温発酵と、新たな水分調整材などを必要としないことにより、衛生的なコンポストの製造が可能。
などの特徴を持つため、
  1 下水汚泥をはじめとする有機系廃棄物のコンポスト化。
  2 コンポストの緑化事業・有機栽培農業等への幅広い有効利用。
などが期待されています。

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This page updated on May 24, 2004

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