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別紙

戦略的国際科学技術協力推進事業「日本-スペイン研究交流」
平成21年度採択課題 一覧

研究交流課題 日本側
研究代表者
所属・役職 研究交流課題概要
スペイン側
研究代表者
色素増感太陽電池の近赤外/赤外領域の高効率化のための色素/酸化物半導体ナノ構造のデザイン、解析、および作製による実証 早瀬 修二 九州工業大学 大学院生命体工学研究科 教授  本研究交流は、有機系太陽電池の高効率化のために必須となる色素構造と電荷注入や電子拡散挙動との相関を調べ、光励起-電子注入-電子拡散過程の機構解明を目指す。
 具体的には、日本側は近赤外、赤外色素の分子設計、合成、酸化物半導体中での電子挙動解明、太陽電池特性評価を分担し、スペイン側は色素から酸化物半導体への電荷注入や電荷再結合挙動の解明、電荷注入障壁の起因の解明を分担する。
 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、有機系太陽電池の高効率化が期待される。
ドゥハール・アブデラザック カスティリヤ大学 ラマンチャ校 ナノテクノロジー・ナノサイエンス・分子研究所 教授
メタンの貯蔵と転換のためのナノ構造性カーボンモノリス 金子 克美 千葉大学 大学院理学研究科 教授  本研究交流は、実用性レベルのメタン貯蔵用の熱伝導性に優れるナノ構造性カーボンモノリスおよびメタンからの単層カーボンナノチューブと水素創製用のナノ構造性カーボンモノリス触媒の開発を目指す。
 具体的には、日本側はメタン吸着およびナノ構造の解明を分担し、スペイン側は天然物資源からのナノ構造製カーボンモノリスの開発を分担する。メタン転換触媒開発は相互が取り組む。
 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、メタンの有効利用の促進と天然ガスからの水素および先端材料の単層カーボンナノチューブ創製法の開発により、二酸化炭素削減を担う画期的技術につながることが期待される。
フランシスコ・ロドリゲス・レイノソ アリカンテ大学 無機化学学科 教授
熱電応用のためのナノワイヤアレイ技術の集積
<実用エネルギー素子への第一歩>
篠原 嘉一 物質・材料研究機構 環境・エネルギー材料萌芽ラボ グループリーダー  本研究交流は、ナノワイヤおよびアレイの実用熱電技術を開発するとともに、熱電変換のブレークスルーを見出すことを目指す。
 具体的には、日本側はナノワイヤの熱電特性の定量測定技術開発を分担し、スペイン側は実用組成のナノワイヤアレイの合成技術開発を分担する。両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、ナノ効果を検証するためのモデル実験の域を出ていなかった従来のナノワイヤ研究から脱却して材料プロセス研究へと発展させる。
 これにより、ナノワイヤアレイのプロセス技術および測定技術の発展、ナノワイヤの物理の解明につながることが期待される。
マーティン・ゴンザレス・マリソル マドリッド マイクロエレクトロニクス研究所 終身研究員
中間バンド型太陽電池に向けた高密度量子ドットアレイの研究(DenQuIband) 岡田 至崇 東京大学先端科学技術研究センター 准教授  本研究交流は、量子ドット中間バンド型太陽電池の高効率化を目指した基礎研究に取り組む。3次元量子ドットアレイを用いて作製した中間バンド型太陽電池では、出力電流の増大により従来型の太陽電池と比べて変換効率の大幅な向上が見込めるからである。
 具体的には、日本側は高密度の量子ドットアレイを用いて太陽電池を実現するための結晶成長・プロセス技術の研究を分担し、スペイン側は太陽電池特性のナノレベルの評価解析の研究とデバイスモデルの構築を分担する。
 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、集光型太陽光発電システムの基礎技術開発および産業化に向けて貢献できることが期待される。
アントニオ・ルケ マドリード工科大学 太陽光エネルギー研究所 教授
ナノスケールで設計された低価格半導体ナノ結晶増感太陽電池の研究 豊田 太郎 電気通信大学 電気通信学部 教授  本研究交流は、ナノスケール設計太陽電池の各種物理現象の評価とモデル化を行いつつ各々の要素技術での最適化を図り、半導体ナノ結晶増感太陽電池の高効率化と長期安定性を目指す。
 具体的には、日本側は各種表面形態の異なる光電極と半導体ナノ結晶増感剤の作製と評価を分担し、スペイン側は半導体ナノ結晶増感剤の新奇吸着・評価と太陽電池デバイス化の検討を分担する。
 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、代替エネルギー創出分野における両国の国際的優位性につながることが期待される。さらに、実行可能性のある低価格太陽電池の製造に貢献できる
ジュアン・ビスカート ジャウメ1世大学 物理学科 教授
溶液法による全固体型薄膜リチウム電池用電解質および電極材料の開発 辰巳砂 昌弘 大阪府立大学 大学院工学研究科 教授  本研究交流では、クリーンで高効率なエネルギー変換および貯蔵が可能なデバイスの1つとして、全固体型薄膜リチウム二次電池に着目している。電池に適した固体電解質および電極材料の薄膜を、溶液法を用いて作製することにより、安全性に優れた薄膜リチウム二次電池を作製することを目的としている。
 具体的には、日本側は無機系の電池材料の開発を分担する。スペイン側は無機‐有機複合系のイオン伝導体の開発を分担する。
 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、新しい革新的な全固体型薄膜リチウム電池用電解質および電極材料の開発につながることが期待される。
マリオ・アパリシオ スペイン国家研究評議会(CSIC) セラミックス・ガラス研究所 シニアサイエンティスト
グリーンケミストリーと効率的なエネルギー変換のための新しい金触媒 春田 正毅 首都大学東京 大学院都市環境科学研究科 教授  本研究交流は、日本で生まれた金ナノ粒子触媒を用いて、環境負荷の少ないシンプルな化学反応の開拓および水素の効率的な製造法や利用法の開発を目指す。
 具体的には、日本側は金を直径10nm以下のナノ粒子として種々の担体物質(卑金属酸化物、ナノカーボン、金属配位高分子など)上に分散・固定化するとともに、高分解能電子顕微鏡で金ナノ粒子のサイズ分布や接合構造を詳しく調べる。また、主として気相でのオレフィンやアルコールの選択酸化や低温ガスシフト反応による水素製造について取り組む。スペイン側は、種々の金ナノ粒子触媒を用いて、シンプルで省資源的な精密化成品の合成ルートを開拓する。
 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、革新的な化学プロセスの発見につながることが期待される。
アヴェリーノ・コルマ バレンシア工科大学 工業化学研究所 教授
ガス分離プロセスおよびクリーンなファインケミカルズ製造のための新規ゼオライトの創製 辰巳 敬 東京工業大学資源化学研究所 教授  本研究交流は、炭化水素ガス混合物の吸着分離プロセスならびにファインケミカルズ製造の高効率化を実現させるための新規多孔体材料の開発を目指す。
 具体的には、日本側は、層間距離制御および触媒活性サイトの位置制御を行った新規層状ゼオライトの合成と触媒的酸化反応に関する研究を分担し、スペイン側は、有機シランを構造規定剤に用いた新規ミクロポーラス材料の合成と炭化水素ガスの吸着分離に関する研究を分担する。
 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、生産効率ならびにエネルギー使用効率の向上および廃棄物低減を可能にする環境低負荷型高品質化学品製造プロセスの実現につながることが期待される。
フェルナンド・レイ スペイン国家研究評議会(CSIC) 化学技術研究所 教授