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資料2

平成21年度 戦略的創造研究推進事業(CREST)
新規採択研究代表者および研究課題概要

戦略目標:「花粉症をはじめとするアレルギー性疾患・自己免疫疾患等を克服する免疫制御療法の開発」
研究領域:「アレルギー疾患・自己免疫疾患などの発症機構と治療技術」
研究総括:菅村 和夫(宮城県立がんセンター 総長)

氏名 所属機関 役職 研究課題名 研究課題概要
荒瀬 尚 大阪大学 微生物病研究所 教授 ペア型レセプターを標的とした免疫・感染制御技術の開発 抑制化と活性化レセプターから成る一連のペア型レセプター群は、免疫細胞の自己応答性を制御する一方、病原体などに対する生体防御を担っており、免疫制御において重要な機能を担っています。本研究では、一連のペア型レセプター群の認識機構および免疫病や感染症などにおける機能を解明すると共に、ペア型レセプターを制御することによる自己免疫疾患やアレルギー疾患の新たな治療法および病原体や腫瘍に対する免疫誘導法の開発を目指します。
岡崎 拓 徳島大学 疾患ゲノム研究センター 教授 自己免疫疾患制御分子の同定による新規治療法の開発 自己免疫疾患の効果的な診断法、および根治療法の開発には、疾患の成立機序を詳細に解明することが不可欠ですが、自己免疫疾患は多遺伝子疾患であるため原因遺伝子を解明することは極めて困難であり、思うように進んでいませんでした。そこで本研究では、病態成立の遺伝要因がより単純であるモデル動物を利用することにより、その原因遺伝子を全て同定して病態成立機序の全貌を解明し、新規治療法の開発につなげることを目的としています。
烏山 一 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 教授 新たなアレルギー発症機構の解明とその制御 近年、日本を含む先進諸国においてアレルギー疾患に苦しむ患者数が増加し、大きな社会問題となっています。本研究では、私たちが独自に道を開いた「好塩基球」ならびに「高IgE症候群」に関するアレルギー研究の成果を基盤として、従来とは異なるアプローチで、新たなアレルギー発症機構ならびにその制御機構を分子レベル、細胞レベル、個体レベルで解明し、新規アレルギー治療法開発の基盤技術の確立を目指します。
木梨 達雄 関西医科大学 附属生命医学研究所 教授 接着制御シグナルの破綻と自己免疫疾患 免疫細胞の全身性の移動制御は、異物侵入を監視する免疫機能に重要な働きをしています。私たちは、免疫細胞の動態を制御するRap1シグナル伝達機構を発見し、そのメカニズムを明らかにしてきましたが、その破綻が、多臓器の自己免疫病につながることを見出しました。本研究は、自己寛容における免疫動態制御シグナルが果たす機能と制御を明らかにして、新たな自己免疫発症機構を提示し、難治性自己免疫疾患との関連を明らかにします。
黒崎 知博 大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 特任
教授
液性免疫制御による新しい治療法の開発 慢性関節リウマチを始めとする自己免疫疾患においては、プラズマ細胞から自己抗体が産生され、この自己抗体が、疾患の引き金・増悪に関与している重要な要因と考えられています。本研究では、自己抗体産生プラズマ細胞、およびその前駆細胞であるメモリーB細胞を標的にし、これらの細胞に特異的な活性化・抑制化・生存必須ファクターを同定します。さらに、それを用いて末梢自己寛容力を亢進させる新しい治療法の開発を目指します。
谷口 維紹 東京大学 大学院医学系研究科 教授 核酸を主体とした免疫応答制御機構の解明とその制御法の開発 核酸に対する自然免疫応答は感染防御や自己免疫疾患に深く関与します。各種核酸に特異的な受容体が同定される一方、全ての核酸に対する普遍的な認識機構は全く知られていません。本研究では最近我々が同定した、あらゆる核酸が免疫原性を獲得するために必須である結合たんぱく質を中心に、その下流で機能する新規分子群や適応免疫との連携機構を解析します。さらに、当該結合たんぱく質に対する拮抗物質などを用いて免疫応答の制御法の確立を目指します。

(五十音順に掲載)

<総評> 研究総括:菅村 和夫(宮城県立がんセンター 総長)

本研究領域は、アレルギー疾患や自己免疫疾患を中心とするヒトの免疫疾患を予防・診断・治療することを目的に、免疫システムを適正に機能させる基盤技術の構築を目指す研究を対象としています。

アレルギー疾患や自己免疫疾患には国民のQOLを低下させ、日常生活に多大な影響を与えるものから重篤な場合には死に至るものまであり、これら疾患の克服には、これまでの分子、細胞、組織レベルにおける免疫制御機構に関する理解を個体レベルの高次調節免疫ネットワークシステムの理解へと発展させなければなりません。このような戦略目標の下に昨年度から本研究領域が公募されました。

本年度は2回目の公募になりましたが、申請件数は種別TとUを合わせて43件で、昨年度より若干減少しました。申請課題を見ると、昨年度と同様に免疫疾患制御の基礎的研究から治療法開発までを視野に入れた極めてレベルの高い内容が多くみられました。また、本年度は感染防御や炎症制御など比較的広い視野から免疫疾患制御を捉えた申請課題もみられました。

これらの中から領域アドバイザーの協力を得て先ず始めに書面審査を行い、種別Tを6課題および種別Uを7課題選び、面接選考を行いました。なお、昨年度と同様に本領域は「免疫制御療法の開発」を謳っていることから、領域アドバイザーには基礎から臨床までの幅広い研究者に参加していただきました。利害関係にも十分配慮して選考を行った結果、種別T、種別Uからそれぞれ3課題を最終的に採択するに至りました。採択課題は、いずれも独創的かつ優れた研究実績を基盤として、革新的な治療法の開発に結びつくような内容となっています。具体的には、核酸を主体とした免疫制御と免疫疾患、新たなアレルギー発症機構、細胞接着制御と自己免疫疾患、自己免疫疾患の新たな制御分子、ペア型受容体による免疫・感染制御、B細胞における自己抗体産生制御などです。いずれの課題でも研究代表者が世界をリードしてきた研究成果を基に計画されおり、今後の本領域の発展に大きく寄与するものと考えます。

本年度不採択であった課題の中にも本領域の発展に大きく貢献することが期待されるものが見受けられました。来年度も継続して公募いたしますので、革新的発展につながる課題提案を期待いたします。