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別紙

戦略的国際科学技術協力推進事業「日本-デンマーク研究交流」
平成21年度採択課題一覧

研究交流課題 日本側
研究代表者
所属・役職 研究交流課題概要
デンマーク側
研究代表者
神経筋疾患におけるスプライシング異常 大野 欽司 名古屋大学 大学院医学系研究科 教授  本研究交流は、筋強直性ジストロフィー・脊髄小脳失調症10型・脊髄性筋萎縮症におけるスプライシング異常をきたす遺伝子の同定、スプライシングトランス因子がスプライシングを制御する遺伝子とスプライシングシス因子の同定、FDA既認可薬のスクリーニングによるスプライシング異常を補正する臨床応用が可能な薬剤の同定を行うことを目指すものである。
 具体的には、日本側はFDA既認可薬による薬剤スクリーニング、巨大遺伝子データのハンドリング、CLIP法を用いた研究を分担し、デンマーク側はSolexaシークエンシングシステム、RNAアフィニティー精製産物のnano LC-MS/MSによる同定を分担する。
 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、分子病態の解明を行うとともに、迅速かつ安価に臨床応用が可能な薬剤の同定につながることが期待される。
Brage Storstein Andresen
(ブラーゲ・ストルステイン・アンダーセン)
南デンマーク大学 生化学・分子生物学専攻 教授
がん間質細胞の生物学的理解と治療標的としての検討 落合 淳志 国立がんセンター 東病院臨床開発センター 臨床腫瘍病理部 部長  本研究交流は、がん間質組織を構成する線維芽細胞の生物学的性質を明らかにし、がん間質相互作用の分子基盤の解明と、がん間質細胞を用いた治療法開発を目指すものである。
 具体的には、日本側は主に肺がん症例を用いて間葉系幹細胞の培養条件の検討や細胞表面マーカーの探索、分子機構の基盤を明らかにする研究を分担し、デンマーク側は乳がん組織を中心に採取された間葉系幹細胞を用いて乳がん細胞の増殖やアポトーシスに関わる分子基盤の研究を分担する。
 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、がん細胞の維持機構が明らかになるとともに、がん間質および間質細胞を標的とした新しい治療の開発につながることが期待される。
Lone Ronnov-Jessen Petersen
(ノーネ・ロノーフ-イエンセン・ペーターセン)
コペンハーゲン大学 生物学専攻 准教授
前立腺、泌尿器、結腸直腸がんにおけるバイオマーカーの同定ならびに、マウスがんモデルにおける標的mRNA・miRNA遺伝子の機能解析 落谷 孝広 国立がんセンター がん転移研究室 室長  本研究交流は、がん診断用バイオマーカーや治療標的の候補となるmRNAおよびmiRNAを同定するとともに、機能解析することを目指す。
 具体的には、日本側がすでに同定しているヒト前立腺がんと前立腺肥大とを区別できる可能性の高い複数のmiRNAの有効性を、デンマーク側が蓄積している臨床献体の血液を用いて検証する。さらに、日本側の有する核酸医薬デリバリー技術およびin vivoイメージング技術を用いて、デンマーク側はがん動物モデルマウスの系を使い、膀胱がんや大腸がんの治療標的分子に対する核酸医薬の考案を分担する。
 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、がんに対する新しい診断マーカーや治療核酸医薬としてのmiRNAの開発につながることが期待される。
Torben Orntoft
(トーベン・オルントフト)
オーフス大学 分子医学専攻 教授
心臓収縮機能の制御 豊島 近 東京大学分子細胞生物学研究所 教授  本研究交流は、強心性ステロイドによるナトリウムポンプの活性阻害機構の結晶学的・生化学的研究を行うとともに、FXYDたんぱく質によるナトリウムポンプの構造的、機能的な調節機構の解明を目指す。
 具体的には、日本側は、デンマーク側が調製するナトリウムポンプ・FXYDたんぱく質複合体を結晶化し、構造解析を行うとともに、変異体の作製と解析を分担する。デンマーク側は、結晶化に役立つ条件の探索や、調節機能の解析を分担する。
 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、心不全に対する新たな特効薬の開発につながることが期待される。
Flemming Cornelius
(フレミング・コルネリウス)
オーフス大学 生理・生物物理学教室 准教授
定量的プロテオミクスを用いたDNA損傷応答シグナル伝達経路の包括的解析 ~副作用を最小限に抑えた新しいがん化学療法の開発に向けて~ 正井 久雄 東京都臨床医学総合研究所 ゲノム動態プロジェクト 参事研究員  本研究交流は、2種類(Cdc7キナーゼとRad18ユビキチンリガーゼ)のたんぱく質に着目して、これらを標的とした新しい化学療法の開発を目指す。
 具体的には定量的プロテオミクスによりこれらのたんぱく質が担う細胞内情報伝達経路の網羅的、包括的な動態解析を行う。さらに、Cdc7とRad18および新たに同定された基質たんぱく質の機能阻害と低容量の抗がん剤投与を組み合わせ、副作用の少ない効果的ながん治療法の開発を目指す。日本側は遺伝子欠損マウスあるいは変異細胞を用いて新規制がん戦略の開発を行ない、デンマーク側は、プロテオーム解析によりCdc7とRad18たんぱく質の関与するDNA損傷応答シグナル経路の包括的解析を分担する。
 両国の研究チームが相互補完的に取り組むことで、新しい抗がん剤治療の開発につながることが期待される。
Jiri Bartek
(ジリ・バルテック)
がん生物学研究所 細胞周期・がん専攻 教授