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別紙

戦略的国際科学技術協力推進事業「日本-オーストラリア研究交流」
平成21年度採択課題 一覧

研究交流課題 日本側
研究代表者
所属・役職 研究交流課題概要
豪州側
研究代表者
石灰化大型海藻類の遺伝的多様性と地球規模環境変動に対する脆弱性に関する研究 川井 浩史 神戸大学内海域環境教育研究センター 教授  本研究交流は主として熱帯・亜熱帯域に分布し、サンゴ礁の形成・保持に大きな役割を果たしている石灰化海藻類を対象に、その生物多様性と、異なる海水環境下での光合成・生長特性の解析を行い、その生存性に関する生態系モデル構築を行うことを目的とする。
 具体的には日本側の遺伝的多様性解析・室内培養に関する技術と、オーストラリア側の光合成測定・生態系モデル構築に関する技術を組み合わせ、海水のpH低下・昇温などの変化が石灰化海藻類に及ぼす影響について考察する。
 日本とオーストラリアが交流を通じて相互的に取り組むことで、地球規模気候変動がサンゴ礁生態系に及ぼす影響に関する基礎的な知見が蓄積されることが期待される。
カルロス・フレデリコ・グルゲル アデレード大学 地球環境科学部 研究員
東南極海システムにおける気候変動の影響評価に向けた基盤整備 福地 光男 国立極地研究所 生物圏研究グループ 教授  本研究交流は、地球規模気候変動を理解するため、これまでの日豪両国の海洋生態系および海洋物理環境、すなわち「南極海システム」の現状把握、南極域気候変動予測に資する研究基盤整備、そして共同観測計画の推進を図ることを目的とする。
 具体的には、両国の観測域が部分的重複するインド洋区全体をカバーする利点を活かし、両国による動物プランクトン・ナンキョクオキアミや海洋観測研究成果を集積する。海洋物理モデルシミュレーションを通した海洋-海氷-大気間の相互作用、および、海洋生態系ハビタットモデルによるオキアミを鍵種とする海氷生態系の解析を進展させる。
 両国の蓄積データの共同解析により、これまで見逃されてきた経年的変化や空間的特異性の発見、さらに多様かつ複雑な南極海システムが果たす地球環境変動への役割を明かにできるものと期待される。
アンソニー・プレス 南極気候生態系研究協力センター 最高責任者
西オーストラリア州沿岸におけるミナミマグロ幼魚の回遊機構の解明:資源加入推定値の高度化に資する回遊行動情報の取得 河邊 玲 長崎大学 環東シナ海海洋環境資源研究センター 准教授  本研究交流は、両国が漁業資源として利用するミナミマグロの幼魚(Thunnus maccoyii)の回遊機構に注目し、特にオーストラリア西岸から南岸への移動率を解析して、移動率の変動に影響する海洋学的な要因を解明することを目的とする。
 具体的には、日本側、オーストラリア側が連携して、1)西岸にて幼魚を捕獲して個体識別型超音波発信器を取り付けて放流、2)南岸に音響受信機を係留して標識個体のトラッキングを行い、3)移動率と回遊経路の解析、さらに、4)移動率と連動して変化する環境因子を精査して、幼魚期の回遊機構を解明する。
 両国の研究チームが本研究交流を通じて相互補完的に取り組むことで、得られる回遊生態情報は資源加入調査の設計指針となり、資源加入指数の高精度化に貢献することが期待される。
アリスター・ホブデイ オーストラリア連邦科学産業研究機構 海洋大気研究所 首席研究員