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研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)

平成14年度実施課題 事後評価報告書



平成16年4月
研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)評価委員会


5. 評価結果
(2)研究開発課題の個別評価
 49 中性子物質レンズの超精密加工装置の開発と実用化(H14-0206)

企業名 :新世代加工システム株式会社
研究者(研究機関名) :清水 裕彦(理化学研究所 情報基盤研究部 イメージ情報技術開発室 室長(副主任研究員))

1 ) モデル化の概要および成果
 本装置は、中性子屈折型光学素子の超精密加工装置である。低エネルギー中性子ビームは、水素等の軽元素に敏感な解析手段として物質研究に使用され、特に生体物質の研究では、X線では検出できない水素の情報を直接引き出す手段として注目されていることから、バイオ分野の構造解析手段として画期的な線源となる。これら中性子ビームを用いた解析に必要な硬質・脆性材料からなる積層型フレネルレンズ、及び積層型プリズムアレイなどの加工を行う事ができる超精密加工装置の開発を行った。本開発は、総型砥石による加工ユニット、積層型プリズムアレイ加工用斜軸研削加工ユニット、チャッキングユニット、表面計測ユニット、制御ユニットの開発および統合化、そして、モデル機の動作確認・調整・評価などについて行った。その結果、モデル化により開発したツルーイング装置を加工装置に設置することにより、ワーク素材を外さずにツルーイングを行うことができ、高精度な加工を実現した。また、R55mmの凸形状ガラスレンズの加工をもとにNC制御の追従性の確認を行い、形状精度P-V値3μm以下の加工を達成した。今後の開発としては、加工条件の見極め検証を実施し、実用化に向けての修正、調整、新規開発を行っていきたいと考えている。波及効果としては、中性子物質レンズを使用し、デオキシリボ核酸(DNA)等の構造解析を効率的に行いたいというニーズが、増加傾向にあることからもその拡大が予測できる。また近年では、プラスチック爆弾などの検出装置として中性子物質レンズを使用する装置の開発も検討されている。

2 ) 事後評価
モデル化目標の達成度
 目標の加工装置をほぼ完成させた努力は評価できる。要素技術毎にモデル化の達成度はバラつきがあるが、達成度の低いものでも今後の方針が明らかにされている。
知的財産権等の発生
 今後の「加工性能」などの実験によって新権利の発生も期待できる。工作法特許は申請が困難と思われるが、是非出願をトライすべきである。
企業化開発の可能性
 残る問題点のクリアーは可能であり、かなり短期間に製品化出来ると考えられる。特殊な分野の技術課題であるが、科学技術の進展を促す基盤機器としての可能性に期待する。
新産業、新事業創出の期待度
 実用化の可能性は高いが、市場は小さいだろう。本加工装置により精密に加工される物質レンズによる科学技術分野への波及効果を期待したい。
3 ) 評価のまとめ
 加工装置の試作完成の努力を評価する。多くの問題点があるが課題解決の方針が要素技術毎に明らかにされており、かなり短期間に製品化出来ると考えられる。特殊な分野の技術課題であるため市場は小さいだろうが、基盤機器として、科学技術分野への波及効果が期待される。この装置の加工性能のデータ蓄積を望む。


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This page updated on May 19, 2004

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