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研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)

平成14年度実施課題 事後評価報告書



平成16年4月
研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)評価委員会


5. 評価結果
(2)研究開発課題の個別評価
 38 ハイスループット対応血管壁モデル培養システムの構築(H14-0160)

企業名 :ヤマト科学株式会社
研究者(研究機関名) :児玉 龍彦(東京大学先端科学技術研究センター動的システム生物学に関する研究プロジェクト 科学技術振興特任教授)

1 ) モデル化の概要および成果
 アテローム性動脈硬化は世界各国とも最大の死亡原因となっており、世界的な規模でメカニズムの解明と医薬品の開発が進められている。受容体欠損動物を用いたin vivo系では新規LDL抗酸化剤による動脈硬化阻害の薬理活性において、時に反対の結果を示すことが報告されており、動物モデルだけの薬理スクリーニングでは、ヒトの治療薬開発においては再現性に乏しいことが判明している。また、in vivo系ではデータ取得まで時間を要するため、有用な治療薬の開発にとっては開発プロセスの短縮化を阻害する一因ともなっている。
 本モデル化では、これら課題の解決手段としてin vitro系でアテローム性動脈硬化初期病変(マクロファージの潜り込み)を誘発する平滑筋細胞と内皮細胞をメンブレンフィルター上に植え付けて調製する血管壁モデルのプロトコールを確立し、併せてこれらの細胞を生体と似た環境下で失活することなく血管壁モデルとして長期培養できるシミュレーションシステムを開発した。さらに複数台のヒト血管壁モデルの培養状態(培養中の培地溶存酸素濃度、CO2濃度等の挙動、エラー情報)をモニタリングするシステムも開発し、新薬開発において求められるバリデーションへの対応を考慮したハイスループット対応血管壁モデル培養システムを構築した。
 将来的には、本システムによるヒト細胞in vitro系と実験動物によるin vivo系とを組み合わせた相補的なスクリーニング技術を用いることにより、医薬品開発で最も重要視される副作用、毒性評価に対し、非常に有用な知見を提供できる。

2 ) 事後評価
モデル化目標の達成度
 動脈硬化病変の分子レベルでのin vitro解析を可能にする「ヒト血管壁モデル培養装置」を完成させた。ウサギの細胞を用いたバラック・キットのシステムは一応完成したが、ヒト細胞を用いた実績までについては言及していない。
知的財産権等の発生
 現在まで発生なし。今後の取得の可能性あり。
企業化開発の可能性
 コストダウン、標準化、量産化、小型化及び顕微観察組込みを推進すれば、動脈硬化初期病変と新規薬理の評価が可能な新装置の企業化が可能と考える。
新産業、新事業創出の期待度
 動脈硬化初期病変を初めて分子レベルでin vitro解析できる新商品として、各種展覧会への出品を予定しており、本体とソフトの販売が期待される。ヒト疾病に応用されるためにはまだ多くの検討が必要である。
3 ) 評価のまとめ
 動脈硬化初期病変を初めて分子レベルでin vitro解析できる新商品として、本体とソフトの商品化が期待される。まだ基礎実験の段階であり、ヒト疾病に応用されるためにはまだ多くの検討が必要であるが、モデル化の成果としては高い。


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This page updated on May 19, 2004

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