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研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)

平成14年度実施課題 事後評価報告書



平成16年4月
研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)評価委員会


5. 評価結果
(2)研究開発課題の個別評価
 13 クレーズフィルムを利用した生物成長促進装置の開発(H14-0065)

企業名 :株式会社 ナック
研究者(研究機関名) :三輪 實(岐阜大学 工学部 教授)

1 ) モデル化の概要および成果
 先に、岐阜大学において、高分子フィルムにクレーズ(規則正しく微細なひび割れ)を入れることに成功しており、このフィルム(以下、クレーズフィルムと呼ぶ)は、クレーズの大きさを制御することにより気体を透過させるが液体を透過させないことが可能であることが確認されている。
 本課題は、上記クレーズフィルムを組み込んだエアータンク内に酸素、二酸化炭素等の気体を充てんし、微少な圧力を負荷することにより、フィルムを透過した気体が水中を微細泡として浮遊する気体補給装置を試作し、浮遊した微細泡により、生物(魚類、水生植物など)の成長速度を速めるとともに、成長に要するコストの低減や周辺環境の改善を図ることを目的とする。本装置は無電源および省エネ型動力により微細泡を発生させるという画期的な特徴を有するため、電源による騒音・振動が無く、また、魚類等へのストレスや酸素痩せを起こさせない、水質保全への寄与、維持費が安いなど優れた装置として期待される。
 今回のモデル化では、河川から流入する淡水と干満による流れのある汽水湖において微細泡のサイズをある程度までコントロールすることに成功し、またクレーズフィルムを透過する微細泡の量を従来の10~15倍まで増加させることが可能となり気体透過率の向上に成功した。さらに、自然環境下(海洋、湖等)でも本装置としての機能を長時間維持できる材質の選定と構造の設計・開発、魚貝類の養殖やプランクトンの増殖に適した微細泡吹出し口の設計、製作も行った。
 次年度以降、自然環境下での微細泡による生物の成長への影響、水質への影響等のデータを蓄積するために実証試験を重ね、生物成長促進装置としての実用化を目指す。さらに、海水中の養殖魚やのり等に対する効率的な微細泡発生装置の開発、池等の淡水魚用、野菜等の水耕栽培用などへの応用が期待できる。

2 ) 事後評価
モデル化目標の達成度
 実験データが十分に蓄積されていない。さらに引き続き実験を行う必要がある。
知的財産権等の発生
 現在まで発生なし。今後の取得の可能性あり。
企業化開発の可能性
 現状では、データが不足しているが、実験を重ねてデータをとり、装置、方法を改良すれば企業化の可能性はある。
新産業、新事業創出の期待度
 この研究が魚介類の運搬、流通システムに応用されれば、当業界にとっては有益である。
3 ) 評価のまとめ
 現段階では、実験データが不十分であり、実験の進展度等、今後の推進計画を見直す必要があるが、実験を重ねてデータをとり、装置や方法を改良すれば企業化の可能性はある。


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This page updated on May 19, 2004

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